高齢者の入浴する時の注意点や介助のポイントを解説します。

監修:森田 進
2024年06月18日
高齢者の入浴する時の注意点や介助のポイントを解説します。
目 次

高齢者が入浴する時の注意点

高齢者がお風呂に入るときには、いくつかの注意点があり、しっかりと守らないと、怪我や体力への影響などの結果を招く恐れがあります。詳しくお話ししていきます。

ヒートショックを予防する

ヒートショックとは、体が急激な温度変化にさらされたときに生じる現象です。高齢者が温かい浴室から冷えた部屋に移動する際など、体温の急激な変化が血圧の異常上昇や低下を引き起こし、心臓に大きな負担をかけることがあります。これが原因で、最悪の場合は心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性もあります。

高齢者が入浴する際にヒートショックを予防するには、浴室の温度調整が重要です。入浴前に浴室を適度に暖めておくことで、体への急な温度変化を防ぎます。また、浴槽に入る際は足からゆっくりと身体を慣らしながら浸かり、急激に全身を浸すのを避けることが推奨されます。

入浴時間は長くても15分程度にとどめ、体が過度に熱くなりすぎないよう注意しましょう。入浴後は、冷えた部屋へすぐに出るのではなく、浴室で少し体を温めた状態を保ってからゆっくりと移動することが大切です。これらの対策を取ることで、高齢者でも安全に入浴を楽しむことが可能となり、ヒートショックのリスクを効果的に低減できます。

脱水症状

脱水症状は体内の水分が不足している状態を指します。この状態は、体内の水分量が正常な水準を維持できず、生命維持に必要な体液が減少することによって生じます。特に高齢者は体の水分保持能力が低下しているため、脱水症状になりやすいです。入浴時に熱いお湯で長時間過ごすと発汗を促進し、これが脱水症状を引き起こす一因となります。

高齢者が入浴する際の脱水症状を防ぐためには、以下のような対策が効果的です。まず、入浴前には適量の水分を摂取することが重要です。水やカフェインの入っていない麦茶などの飲料を適量飲むことで、体内の水分レベルを保つことができます。

また、入浴時間は短めに設定し、入浴後も水分補給を行い、入浴による発汗で失われた水分を補うことが大切です。これにより、脱水症状のリスクを減らしながら安全に入浴を楽しむことが可能となります。

入浴介助のポイント

ここからは、高齢者の入浴介助について、具体的なポイントをお伝えします。

まずは安全第一を心がける

入浴介助においる最も大切なことは、「安全第一」を心掛けることです。滑りやすい浴室内での転倒を防ぐためには、バスマットや手すりを設置し、高齢者が安心して入浴できる環境を整える必要があります。

また、入浴前の体調チェックは欠かせません。体温、血圧、全身の痛みなど細かく観察するのが重要です。

体調が悪い時は無理をしない

高齢者が体調不良を感じている際には、無理な入浴をは避けるべきです。特に、発熱や血圧の異常、胸の痛みなどの症状が見られる場合、体に大きな負担が掛かり、場合によっては生命に関わるリスクも考えられます。その日の体調に応じてシャワー介助に切り替えるなど柔軟な対応が求められます。

体の状態に変化がないか観察する

高齢者の体は非常にデリケートであり、様々な変化が見られることがあります。たとえば、皮膚の赤み、発疹などの異常は、入浴によって早期に発見しやすいものです。介助者は常に高齢者の体の変化を注視し、異変に気づいた際には適切な対応をすることが求められます。

転倒等には十分に気をつける

入浴介助の際に最も危険なのが、転倒事故です。高齢者が転倒すると骨折などの大怪我につながりやすいため、介助者はその防止に細心の注意を払う必要があります。手すりの使い方を指導したり、防滑加工の施された床材を使用するなど、転倒リスクを最小限に抑える工夫をすることが大切です。

高齢者が立ったり座ったりするときには、動作のサポートをしっかりと行います。

高齢者が入浴しないとどうなる

高齢者が入浴をしない場合に生じる可能性のある影響についてお話しします。定期的に入浴をしないと、どのような健康上の問題や生活上の困難が生じるか、その具体的な点を掘り下げていきたいと思います。

皮膚疾患のリスクが高まる

高齢者が入浴をおろそかにすると、皮膚が不衛生な状態になり、細菌や菌の増殖を招いてしまいます。それにより、皮膚疾患のリスクが非常に高まるのです。例えば、水虫やたむしといった皮膚の感染症や、湿疹、化膿などの皮膚トラブルが起こりやすくなります。

また、長時間汚れが皮膚に残ると痒みが生じ、掻き壊して傷が治りにくい状態になることもあります。

感染症のリスクが高まる

入浴を怠ることで、皮膚に限らず感染症のリスクが全体的に上昇します。特に、高齢者の場合、体力や免疫力が落ちているために、影響を受けやすいのです。

さらに、不衛生な状態が続くことで尿路感染症などの泌尿器系の疾患にも悩まされることがありえます。定期的な入浴は、健康を守り、感染症から身を守るためにも必須です。

要介護リスクが上がる

入浴は、、入浴は血行を良くし、筋肉の緊張を緩和する効果があります。これにより、高齢者はより活動的で自立した生活を維持しやすくなります。しかし、これらの健康効果が得られない場合、体力の低下や運動機能の衰えが加速し、結果的に日常生活の自立性が低下し、介護が必要な状態に陥りやすくなります。

新陳代謝が促進されず免疫低下につながる

入浴は体温の上昇を促し、血行を良くすることで新陳代謝を活性化させます。定期的に入浴を行わない場合、新陳代謝が促進されないことにより、体内の老廃物がうまく排出されなくなります。これは免疫機能の低下を招くことがあり、感染症などの疾患にかかりやすくなるリスクが高まります。

入浴したがらないケースが多い

高齢者の中には、体力的な問題、安全に対する不安、皮膚感覚の低下による不快感などの理由で入浴を渋る方がいます。そのような場合には、高齢者の気持ちを理解した上での、適切なサポートが必要です。また、入浴をしたがらないことの背景には、認知症やうつ病などの精神的な問題が隠されている場合も考えられます。

対応策としては、まずは入浴に対する恐怖感を取り除くことが大切です。具体的には、ゆっくりと話を聞き、不安を共有することから始めます。その上で、滑り止めマットの使用や、手すりの設置、入浴補助具の利用など、物理的な安全対策をとることも重要です。

さらに、入浴の頻度や時間帯を調整し、高齢者が心理的にも身体的にもリラックスできる環境を整えることが求められるでしょう。また、入浴時以外にも、高齢者とのコミュニケーションをしっかり取り、信頼関係を築くことも、入浴の抵抗感を和らげるためには不可欠です。

さくらリバースの紹介

まとめ

高齢者の入浴は、健康や生活の質を維持する上で非常に重要な役割を果たしますが、多くの注意点や介助のポイントがあります。ヒートショックや脱水症状の予防、安全第一を最優先に考える介助の方法、体調が悪い時は無理をせず、常に体の変化に気を配ることが大切です。

また、入浴しないことによる皮膚疾患のリスク増加や免疫力低下など、高齢者が入浴を行わないことで様々な弊害がでてきてしまいます。入浴はただ身体を清潔にするだけでなく、心身のリラックスや健康維持にも大切なのです。

この記事が、ご家族や介護者様、被介護者様にとって、日々の入浴活動がより良いものになるための一助となれば幸いです。

監修:森田 進
株式会社 さくらリバース 人材開発部 兼 事業開発部 部長
   

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