孤独死とは
孤独死とは、一人暮らしの高齢者などが亡くなった事実が長期間にわたって誰にも気付かれず、孤独に亡くなることを指します。日本では、高齢化の進行と社会的孤立の増加により、孤独死が社会問題となっています。特に、都市部での孤独死が増加傾向にあり、その多くが高齢の一人暮らしや無縁社会の影響を受けています。孤独死のリスクは、特定の社会的、環境的要因によって高まります。これには、高齢で一人暮らしをしていること、近隣との交流が少ないこと、高齢者だけの世帯などが含まれます。これらの要因は、個人が社会から孤立し、日常生活における支援が得られにくい状況を生み出します。
日本の孤独死の現状
日本では、高齢者の孤独死が年々増加しています。2022年のデータによると、日本で孤独死した人数は6727人で、そのうちの83.2%が男性となっています。これは、高齢化社会における孤立化の問題や、都市部での一人暮らしの高齢者の増加に起因しており、社会的なサポートの欠如や、コミュニティとの繋がりの希薄化を示しています。孤独死は近隣住民や家族に長期間気づかれず、発見されるのは数日から数週間後というケースが多く、原状回復費用や残置物処理費用など、周囲への経済的損害も大きな問題となっています。厚生労働省は孤独死問題に対する様々な対策を行っていますが、その効果はまだ限定的です。このような孤独死の現状は、日本の社会的な課題として深刻なものとなっています。
孤独死しやすい人の特徴は?
高齢一人暮らし
高齢者の一人暮らしは、年々増加傾向にありますが、孤独死のリスクが高いとされています。一人暮らしの高齢者は、社会的なサポートネットワークから孤立しやすく、日常生活の中での困難や健康問題に直面した際に、十分な支援や介護を受けにくい状況にあり、健康状態の急激な変化や、事故などの緊急事態に対処するためのリソースが限られているためです。特に、社会的なつながりが希薄で、家族や友人との定期的なコミュニケーションがない場合、リスクはさらに高まると言えます。
日本の65歳以上の単身世帯は年々増加しており、厚生労働省の2021年の調査によると、65歳以上の単身世帯数は2010年と比較して約1.5倍に増加しています。また、生涯未婚率の増加も一人暮らしの高齢者の増加に影響を与えています。国立社会保障・人口問題研究所の2017年の調査では、2000年以降の生涯未婚率が顕著に上昇していることが示されています。未婚率の上昇に伴い、高齢になっても家族や配偶者のいない状況にある人が増えています。これらの社会的変化は、孤独死のリスクを高める要因となっており、社会的なサポートの不足が孤立化を加速させていると言えます。
近所付き合いが希薄
近隣住民とのコミュニケーションが不足も、孤独死しやすい人の特徴の一つです。近年の日本社会では、社会構造の変化、生活スタイルの多様化などにより、近所付き合いが希薄な人が増加しています。少子高齢化や共働き世帯、単身者世帯の増加などにより、家族や親族とのつながりが希薄になり、仕事や趣味、インターネットなどにより、人とのつながりの場や方法が多様化し、近所との関わりが必要でなくなっている傾向にあり、特に都市部では、匿名性が高く、近隣との関係が表面的なままであることが多いです。
また、新型コロナウイルスの感染拡大によって生活が変化し、2020年〜自粛期間やリモート作業の増加により、人との関わりが少なくなってしまった人も少なくありません。
自分の生活圏内の人付き合いが希薄だと、自分の安全や生活を守るために必要な人とのつながりが失われ、コミュニティ内部での挨拶や会話が少なくなると、孤立感や孤独感が強くなり、精神的な問題や健康問題につながる可能性があります。近所の人と交流がないと、体調不良や急変などの異変に気づいてもらえなかったり、災害や事故などの非常時に助けを呼べなかったり、支援を受けにくかったりする恐れもあります。
高齢者のみの世帯
高齢者だけで構成される世帯も、孤独死のリスクが高まる傾向にあります。互いの健康状態に対するケアが十分でない場合や、緊急時に迅速な対応ができないことが要因です。高齢夫婦のみの世帯の場合では、自分や配偶者の健康健康状態が悪くなったり、病気になってしまったり、介護が必要な状況になった時、もう一方にそれらの対応が求められます。高齢者にとって、病気のケアや介護は体力的にも精神的にも負担が大きく、疲労やストレスで体調を崩したり、事故や急病で倒れたりする恐れがあります。また、病気のケアや介護に専念するあまり、社会的な交流や趣味などを疎かにしてしまう可能性があります。配偶者が亡くなったり、入院したりする場合では、残された方の孤独感が増加し、精神的な孤立状態に陥ってしまうケースも少なくありません。
高齢者のみの世帯は増加傾向にあり、「国勢調査」によると、65歳以上の者がいる世帯の中で、「夫婦のみの世帯」の割合は、昭和55年では約2割でしたが、令和元年では約3割になっています。また、「国民生活基礎調査」によると、65歳以上の者がいる世帯の中で、「夫婦のみの世帯」の割合は、平成27年では約5割でしたが、令和2年では約6割になっています。高齢夫婦のみの世帯が増えている理由は、少子化や晩婚化、離婚の増加などにより、子供や親族との同居が減っていることや、高齢者の寿命が延びていることなどが考えられます。また、高齢者世帯は地方に集中する傾向にあり、親族が遠方にいることが原因で、緊急時の対応が遅れてしまう場合もあります。
さらに、高齢者のみの世帯では、貧困問題も孤独死につながる大きな原因となっています。高齢世帯の貧困率は、先進国の中で日本が最下位に位置しており、特に女性単身世帯の貧困率が高い傾向にあります。経済的な貧困により、医療や介護などのサービスを受けられなかったり、社会活動や趣味に参加できず、社会的に孤立してしまう場合があります。貧困の高齢者は、孤立や孤独感が強くなり、精神的な問題や健康問題につながる可能性があり、孤独死の原因ともなります。
孤独死の原因は?
孤独死してしまった人の原因は状況により様々ですが、一般的に以下のような原因が考えられます。
社会的孤立:
高齢者が社会や地域コミュニティから孤立し、日常の支援や助けが得られない状況にある。
経済的困窮:
貧困や生活困難により、適切な医療や介護サービスを受けられない状況にある。
健康問題:
高齢者が健康上の問題を抱え、それが適切に管理されていない。
住居環境:
安全でない、または不適切な住居環境で生活している。
家族関係の変化:
核家族化や離婚率の上昇、子どもとの距離など、家族関係の変化により、社会的な支援が不足している。
心理的要因:
孤独感や絶望感など、心理的な問題が孤立を深めている。
これらの要因は相互に関連し合い、孤独死のリスクを高めます。これらの原因を理解し、適切な対策を講じることが、孤独死の予防につながります。
孤独死を発見した際の対処
孤独死の発見は、心に大きな衝撃を与えることがあります。もし孤独死の発見者となった場合には、トラブル防止のためにも、適切な対処が求められます。自分の心のケアをしつつ、必要なら支援を求めましょう。
警察に通報
孤独死が疑われる場合、最初に行うべきことは警察への通報です。不審死としてトラブルに巻き込まれないためにも、発見したら取り乱さず、迅速に通報を行うようにしましょう。死亡しているかどうか見た目で判断できないときは、救急車を呼ぶことが優先されます。ただし、確認のために無闇に現場に踏み入ったり、体に触れすぎると、後の現場検証などで不備が生じたり、あらぬ疑いをかけられてしまう可能性があるため注意が必要です。
警察の現場検証
通報後、警察は現場に到着し、必要な調査を開始します。事件性の有無を判断するため、遺体の状態の確認、現場の環境調査のほか、近隣住民への聞き取りなどが行われ、特に発見者へは、発見時の状況や前後の様子など、詳細な情報を求められる場合があります。発見者は精神的なショックも大きいですが、警察への取り調べは死因が自然死か他殺かを判断するために重要な材料になるため、落ち着いて当時の状況を伝えることが大切です。
身元を確認し遺族へ連絡がいく
現場検証により身元が判明したら、近しい遺族に対して警察から通知され、遺体の引き取りや死亡手続きなどを行います。
遺族が遺体を引き取る場合
警察による身元確認後、遺族と連絡が取れ、状況が通知されると、遺族は遺体の引き取りと葬儀の手配を行い、故人の最後の手続きが行われます。
遺族が遺体の引き取りをしなかった場合
しかし、孤独死の場合では、故人の生前のコミュニティが極端に狭く、遺族が遺体の引き取りを拒否するケースもあります。この場合、地域の自治体が遺体の処理を引き受け、遺体は自治体の責任で火葬され、埋葬または納骨されます。遺族による遺体の引き取りがなかった場合、故人の財産や遺品の処理も自治体や関連する機関が行うことになります。
遺体に遺族がいなかった場合
また、孤独死の場合、身内がすでに他界している、または天涯孤独で身寄りがないケースも少なくありません。この場合も、遺体の処理や手続きは各自治体が行います。
孤独死しないための対策について
孤独死は、社会的孤立がもたらす現代の課題です。孤独死は決して他人事ではなく、私たちの身の回りでも起こりうる身近な問題として捉えることが大切です。孤独死を防ぐためには、個人、地域社会、そして政策面での取り組みが重要となります。
地域の活動に参加する
地域の活動への参加は、周囲からの孤独感を減少させるのに非常に有効な手段です。例えば、地域のお祭りや集会へ参加し、近所との絆を深めたり、趣味やスポーツのクラブ活動に参加し、新しい交友関係を築くことで、互いの安全を見守るきっかけになり、日々の生活に活力をもたらします。これらの活動は、高齢者が社会的に孤立することを防ぎ、心の健康を維持するためにも非常に重要な要素となります。
また、自治体では、高齢者や障害者などの一人暮らしの方を対象に、電話や訪問による安否確認サービスを提供しているところが多くあります。また、民間では、警備会社や保険会社などが、有料で安否確認サービスを行っています。これらのサービスを利用することで、万が一のときに早期に発見してもらえる可能性が高まります。
老人ホームを利用する
孤独死を防ぐためには、一人暮らしをやめて、老人ホームや高齢者用住宅に入居することも一つの方法です。老人ホームや介護施設の利用は、日常生活のサポートと安全な環境を提供してくれます。これらの施設では、専門のスタッフが24時間体制でサポートし、高齢者の健康管理と安全を保証します。また、施設内の共有スペースでのスタッフや他の入居者との交流は、孤独感を和らげ、日々の生活に豊かさをもたらしてくれます。
老人ホームや高齢者用住宅に入居するには、費用や条件などを考慮する必要があります。しかし、自分の希望やニーズに合った施設を探すことで、快適で充実した生活を送ることができます。老人ホームは、家族と離れて暮らす高齢者にとって、健康面、精神面、両方の視点から安心して暮らせる場所と言えるでしょう。
訪問サービスを利用する
訪問サービスの活用も、孤独死を防ぐために有効なサービスの一つです。訪問介護とは、ホームヘルパーが自宅に訪問して、身体介護や生活援助を行う介護保険サービスです。訪問看護師やヘルパーは、健康状態のチェックや日常生活のサポートを行い、安定した生活を支えます。高齢者の緊急連絡先や医療機関との連携も行い、訪問時に異常が見つかった場合には迅速な対応が可能となります。また、定期的な訪問は、高齢者が抱える孤独感や不安を軽減し、健康状態の早期発見にも繋がります。ホームヘルパーは、高齢者の話を聞いたり、相談に乗ったり、励ましたりすることで、心の支えになってくれます。また、ホームヘルパーは、高齢者の趣味や関心に合わせて、楽しい話題や情報を提供したり、一緒に活動したりすることもあります。訪問介護によって、人とのつながりを感じることができ、孤独死の原因となりうる社会的な孤立、孤独感を排除することもできるでしょう。こうしたサービスは、高齢者が自宅で安心して生活できるよう支援するため、適切に判断しながら有効に活用しましょう。
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まとめ
本記事では、孤独死とその防止策について解説しました。孤独死は、社会的孤立や高齢者の増加により、現代社会で増えている非常に重大な問題です。地域の活動への参加、老人ホームの利用、訪問サービスの活用など、孤独死を防ぐためには多角的なアプローチが必要です。これらの対策は、自分や身の回りの大切な人が、社会的に孤立することなく、健康かつ安全な生活を送るために重要な要素となります。最終的に、私たち一人ひとりが高齢者の孤独を理解し、支援することが、孤独死の問題を解決する鍵となります。今回の情報が、孤独死を減らし、高齢者がより良い生活を送る一助となれば幸いです。