
自律神経は私たちの意思とは関係なく体の様々な機能を自動的にコントロールする神経系です。
この自律神経が何らかの原因で乱れることで、様々な症状が現れます。広義の意味で自律神経失調症と呼ばれる状態は、器質的な疾患がないにも関わらず様々な身体的症状を訴える『不定愁訴』が見られます。
【不定愁訴の症状】
⚫︎全身的
全身倦怠感、易疲労感、ふらつき感、めまい感
⚫︎神経筋骨格系
頭痛、頭重感、肩こり、腰背部痛、しびれ感、振戦
⚫︎循環器系
息切れ、息苦しさ、動悸、冷え性
⚫︎消化器系
食欲不振、口渇、悪心・嘔吐、腹痛、胃部不快感、腹部膨満感、便秘、下痢
⚫︎眼科・耳鼻科系
眼精疲労、耳鳴り、喉の閉塞感・異物感、咳
⚫︎皮膚科系
発汗、寝汗、かゆみ、乾燥
⚫︎泌尿生殖器系
頻尿、排尿困難、月経障害、勃起障害
⚫︎精神症状系
睡眠障害、不安、緊張、イライラ、焦燥感、抑うつ、集中力低下
【不定愁訴になりやすい人】
・まじめで責任感が強い、完璧主義
・几帳面、潔癖症、神経質
・人の目を気にし過ぎる
・周囲の人に合わせてしまう
・昔から人前で緊張しやすい
・人付き合いが苦手
・イライラしやすい、怒りっぽい
・感情を表現するのが苦手
【自律神経が乱れる主な原因】
自律神経が乱れる原因も生活習慣の乱れやストレス、環境要因、身体的要因など多岐に渡ります。
1.生活習慣の乱れ
・不規則な睡眠パターン
・食事時間の不規則性
・運動不足
・過度な飲酒や喫煙 など
2.ストレス要因
・仕事や学業のプレッシャー
・人間関係の緊張
・将来への不安 など
3.環境要因
・気温や気圧の急激な変化
・過度な騒音
・強い光や電磁波
・室内の温度変化 など
4.身体的要因
・慢性的な疲労
・ホルモンバランスの乱れ
・加齢による自律神経機能の低下 など
自律神経は内分泌系と協働してホメオスタシス(生体恒常性)の維持に働いており、循環・呼吸・消化・体温調節などを24時間休みなく調整しています。
自律神経には交感神経(活動モード)と副交感神経(休息モード)の2系統があり、お互いがバランスを取り合うことで体の機能を調節しています。
活動時には交感神経が優位になり、心拍数・血圧を上昇させ、エネルギー消費を促進することで活発に行動できる状態に調節します。睡眠時などの休息時には副交感神経優位に切り替わり心拍数・血圧を低下させ、体の回復を促しリラックスモードに調節します。
自律神経は脳の視床下部という場所によってコントロールされており、『視床下部は自律神経系の最高中枢』と呼ばれているほど。脳の中ではとても小さな部分ですが、とても重要な役割を果たしています。
治療期間は症状の程度や生活習慣などによって様々です。改善まで数週間から数ヶ月かかるケースもあれば、半年から1年以上かかる場合もあります。一過性の症状であれば数回の施術で効果を感じる方もいらっしゃいます。しかし、一度でも自律神経の乱れからくる不調を経験した方は生涯再発しないかというと残念ながらそうではなく、ストレスなど精神的な影響を受けた際に再び不定愁訴が現れることが想定されます。その時に大切なのは、自分の体の声(不定愁訴)を放置せず、早め早めに心身のコンディションを整える習慣を身につけることです。
自律神経の乱れからくる不調は、「自分の体を大事にしてね」という私たちの体が発するサインだと考えてみましょう。
症状改善までの目安は次のとおりです。
症状が軽い場合:数週間~数ヶ月程度
症状が中等度の場合:3~6ヶ月程度
症状が重い場合:6ヶ月以上
東洋医学的では五臓六腑の『肝』を中心としたトラブルであることが多く見られます。「肝は疎泄を主る」と言われ、体の気の流れを整え、身体各部位で生理機能が順調に働くことができるようにしていると考えられています。
肝鬱気滞と呼ばれる状態では気の滞りを解消し、気の作用を円滑にすることを目的とした鍼灸治療がおすすめです。
また鍼灸だけでなく、マッサージやカイロプラクティックの理論を駆使して、自律神経系の調子を整えるようにツボへの刺激と併用します。自律神経は脳や脊髄など、体の中枢から各臓器へ分布しており、治療を進めるうえで脊柱(背骨)周囲へのアプローチは有効であると当院では考えています。
自律神経の乱れを整えるには基本的な生活習慣を見直すことが大切です。
・睡眠時間の確保
・バランスの良い食事を取る
・適度な運動をする
自律神経の乱れに効くツボ
・内関:手のひら側の手首のシワからひじに向かって指の腹三本分で真ん中あたり、細い県が二本並んでいるところの間にあります。
・労宮:手を握ったときにちょうど中指と薬指の間にあります。
・神門:手首のシワの線上で、小指側にある少ししっかりしたすじを見つけます。そのすじの親指側のくぼみにあります。