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認知症の進行度合いについて。進行段階や原因まで解説します

監修:市姫 久春
2025年01月29日
認知症の進行度合いについて。進行段階や原因まで解説します
認知症の進行は誰にとっても心配なテーマです。「物忘れが増えたけど、これって認知症の前兆?」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

認知症は進行度によって前兆、初期、中期、末期の段階に分かれ、それぞれ異なる症状が現れます。進行の原因や対策を理解することで、早期のケアや対応が可能になります。

本記事では、認知症の進行段階や進行を早める要因、進行を防ぐ方法について詳しく解説します。
目 次

認知症の進行段階

認知症は「前兆(軽度認知障害)」から「初期(軽度)」「中期(中度)」「末期(重度)」へと段階的に進行します。進行に伴い、記憶や判断力の低下が顕著になり、日常生活における支援の必要性が増します。

各進行段階の特徴を詳しく見ていきましょう。

前兆(軽度認知障害) 

軽度認知障害(MCI)は、認知症の前兆として位置づけられますが、物忘れや集中力の低下といった症状があるものの、日常生活に支障をきたすほどではありません。そのため、加齢によるもの忘れと見なされ、見過ごされることが少なくありません。

MCIの段階で適切に対処することができれば、進行を遅らせたり、場合によっては正常な状態に戻る可能性も指摘されています。脳内にアミロイドβなどの異常なたんぱく質が蓄積することが主な原因であり、この蓄積は発症の何十年も前から始まるとされています。このような背景から、早期発見と予防が非常に重要とされています。

長年慣れた作業などはこなせるため、初期段階では周囲が気付かない場合も多いのが実情です。これにより、診断が遅れるケースも少なくありません。

また、できないことが増えることへの不安や混乱、さらには自信の喪失により、うつ病と誤診されることもあります。この段階では、症状に気づいた家族や周囲の人が医師に状況を正確に伝えることが、適切な治療につながる重要なポイントとなります。

初期(軽度)

認知症初期の段階は、物忘れや記憶障害が目立ち始める一方で、まだ日常生活の多くの部分では自立が可能であるため、見過ごされがちな時期でもあります。

特にアルツハイマー型認知症の場合、直前の出来事を忘れる、同じ質問を繰り返すなどの特徴が現れますが、これは単なる加齢による物忘れとは異なり、記憶障害の深刻化が示唆される症状です。この段階での認知機能の変化は、軽度認知障害(MCI)との区別が難しいことがありますが、認知症初期では仕事や家事などの複雑な作業に困難が生じることが特徴です。

さらに、この段階では、記憶障害以外にも判断力の低下が顕著に現れることがあります。例えば、物を紛失したり、不適切な場所に置いてしまうことが頻発するほか、普段の作業に時間がかかるようになり、以前は簡単にできていたことができなくなるケースも見られます。これにより、本人にとっては混乱やストレスが増大し、周囲との会話がかみ合わなくなるなどの問題も発生します。このような状況は、本人が強い不安や恐怖を感じ、怒りを覚える原因となることも少なくありません。

また、できなくなることが増えることで自信を失い、感情表現が乏しくなったり、意欲の減退が目立つようになります。このため、認知症ではなく、うつ病などの精神的な問題と誤診されることもあります。このような症状の出現時には、家族や周囲が注意深く観察し、医師に詳細を伝えることが重要です。

中期(中度)

認知症が中期(中度)に進行すると、記憶障害が一層顕著になり、新しい出来事を記憶にとどめることがほとんど不可能になります。このため、初期段階で有効だったメモや記録も、その存在自体を忘れてしまうため、日常生活に大きな支障をきたします。これに伴い、自立した生活が難しくなり、多くの場面で家族や介護者によるサポートが必要となります。

例えば、食事を済ませたにもかかわらず、「食べていない」と主張したり、食事を提供されていないと思い込んで近所に訴えるような行動が見られることがあります。このような状況では、「食べたでしょう」と正そうとするのではなく、本人の感情に寄り添いながら対処することが大切です。食事の際には、旬の食材を使って印象的な経験を演出したり、食後にすぐ片付けずに会話を楽しむ時間を設けることで、記憶への定着を助けることができます。

また、この時期には住所や電話番号を思い出せなくなったり、場所や日付を正確に認識できないといった見当識障害が現れます。さらに、簡単な計算ができなくなるなどの認知機能の低下も進行し、日常的な場面での困難が増していきます。

一方で、記憶障害が進んでも感情は比較的長く保持されるとされています。たとえば、美味しい食事をしたり、家族と旅行に出かけたりする体験そのものは忘れてしまっても、その時に感じた「楽しかった」「幸せだった」という感情は残ります。そのため、過去の出来事を思い出してもらおうとするよりも、現在の瞬間を一緒に楽しむことを重視することで、介護する側の心の負担も軽減されるでしょう。

末期(重度)

認知症が末期(重度)に進行すると、これまでの記憶障害が一見目立たなくなることがあります。これは、自発性や意欲の低下によって物事への関心が極端に薄れ、過去のように忘れたことを繰り返し確認するような行動が減るためです。ですが、家族の顔がわからなくなったり、基本的なコミュニケーションが難しくなるといった深刻な症状が現れます。

末期の段階では、生活のすべてにおいて介助が欠かせません。失禁や筋固縮が進行し、嚥下障害によって食事を飲み込むことが難しくなる場合もあります。また、歩行や運動の障害が顕著になり、多くの時間をベッドの上で過ごし、最終的には寝たきりの状態に移行することが一般的です。これらの身体的な制約に加え、免疫力が著しく低下するため、感染症のリスクが高まり、それが生命を脅かす要因となることもあります。

この段階に至ると、本人のケアだけでなく、家族や介護者にとっても大きな負担が伴います。適切な医療や介護サービスの活用が不可欠となるため、地域の支援を積極的に利用することが推奨されます。

認知症が進行する原因

認知症の進行は自然な老化によるだけでなく、外的要因や生活環境の影響を受けて進行が早まることがあります。認知症が進行しやすくなる主な原因を理解することで、進行を遅らせるための対策が可能になります。

以下に、認知症の進行に影響を与える要因を詳しく解説します。

急激な環境変化

住環境や生活の大きな変化は、認知症の進行を加速させる原因となります。たとえば、自宅から施設に移る、引っ越しをする、または長年一緒に暮らしてきた配偶者を失うなど、慣れ親しんだ環境から離れることがストレスとなり、脳の混乱を引き起こします。

このような変化により、認知機能が低下し、日常生活での混乱が増えることがあります。環境の変化に対する不安や恐怖が続くと、適応力が低下し、認知症が進むリスクが高まります。

脳への刺激が不足している

外出や人との交流が減少すると、脳に対する刺激が極端に減ります。特に、高齢になると体力が低下し、家の中で過ごす時間が長くなるため、日常的な活動が減少します。これにより、脳が使われる機会が減り、認知機能が低下しやすくなります。

また、耳が遠くなることで会話が減少したり、趣味や興味のある活動を失うことも、脳への刺激が不足する原因となります。さらに、家族が介護を優先して身の回りの世話を全て行うようになると、本人が自分で考えたり行動したりする機会が失われ、脳の働きがさらに鈍化することがあります。

ストレス過剰

認知症を持つ人が大きなストレスにさらされると、症状が急速に進むことがあります。たとえば、配偶者との死別、家族間のトラブル、社会的な孤立感など、精神的な負担が重なることで、脳内のストレスホルモン「コルチゾール」の分泌が過剰になります。

そうなってしまうと、記憶を司る海馬に悪影響を与え、記憶力や判断力の低下を引き起こします。ストレスが長期間続くことで脳へのダメージが蓄積され、認知症の進行が加速する場合があります。

行動制限

認知症の方が日常的に受ける行動制限は、進行を早める原因の一つとされています。特に安全を重視するあまり、本人の自由な行動や判断を制限してしまうケースが多く見られます。これには家族や介護者の善意が背景にありますが、結果的に本人の脳への刺激が減少し、認知機能が低下するリスクを高めることがあります。

例えば、転倒や事故を防ぐために外出を控えさせたり、料理や掃除といった日常の家事を完全に代行してしまう場合が挙げられます。一見するとこれらの行為は本人を守るための適切な対応に思えますが、実際には自主的な活動が減ることで脳の働きが低下し、意欲や自信の喪失につながる可能性があります。

また、本人の行動を「危ない」や「時間がかかる」といった理由で制限することで、自分で行動しようとする気持ちが失われ、「自分には何もできない」という無力感を抱かせてしまうことも少なくありません。これが積み重なると、精神的な活力が低下し、さらに認知症が進行する悪循環を生む可能性があります。

失敗を過度に責められた

認知症の方が日常の中で失敗をすることは珍しくありません。予定を忘れたり、物の置き場所を間違えたりすることがあっても、周囲がその失敗を過度に責めることで、本人は大きな心理的負担を感じます。これにより、自尊心が傷つき、自己否定感や意欲の低下を招く場合があります。

例えば、「どうしてこれができないの?」と責めるような言葉は、本人にとって強いプレッシャーとなり、ストレスの増加につながります。このような状況では、認知機能の低下がさらに進みやすくなります。また、本人が失敗を恐れて挑戦する意欲を失い、活動範囲が狭まることで脳への刺激も減少します。

適切な対応としては、失敗を責めるのではなく、「大丈夫だよ」「一緒にやってみよう」といった肯定的な言葉をかけることが重要です。本人が安心感を持てる環境を整えることで、進行を抑える助けとなる場合があります。

認知症の進行を防ぐには

認知症は完全に予防することが難しい病気ですが、生活習慣の改善や適切なサポートを取り入れることで進行を遅らせることが可能です。

以下では、日常生活に取り入れることで認知症の進行を緩やかにする方法を詳しく解説します。

運動習慣を作る

運動は認知症の進行を防ぐ上で非常に重要です。有酸素運動や軽い筋力トレーニングは、脳への血流を促進し、神経細胞の働きを活性化させる効果があります。特に、ウォーキングやヨガ、水泳といった負担の少ない運動は継続しやすくおすすめです。

また、運動はストレスを軽減し、体力を維持する効果もあるため、日常生活の質の向上にも繋がります。一人で運動するのが難しい場合は、家族や友人と一緒に取り組むことでモチベーションを高められるでしょう。無理のない範囲で定期的に身体を動かすことが、認知症の進行を防ぐ鍵となります。

生活習慣を見直す

規則正しい生活習慣を整えることも、認知症の進行を防ぐために重要なポイントです。特に、良質な睡眠を確保することは、脳が十分に休息し、老廃物を除去するために不可欠です。昼夜逆転を防ぎ、朝起きたら日光を浴びることで体内時計を整えましょう。

さらに、食事にも注意を払い、脳の健康をサポートする栄養素を意識的に摂取することが大切です。野菜や果物、魚、ナッツ類を積極的に摂り、バランスの取れた食事を心がけることで、脳の働きを保つ助けとなります。

他者との交流

社会的なつながりを持つことは、認知症の進行を遅らせる効果があるとされています。人と会話をしたり、趣味や活動を通じて他者と交流することで、脳への刺激が増え、認知機能の維持に繋がります。

特に、デイサービスや地域のイベントに参加することで、同年代の人々と交流する機会を作ることができます。また、家族とのコミュニケーションを積極的に図ることで、孤独感を和らげ、精神的な健康を保つことができます。

進行を遅らせる薬の服用

認知症の進行を抑えるためには、医師による適切な薬物療法も重要です。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の場合、特定の抗認知症薬が使用されることがあります。これらの薬は、神経細胞の働きをサポートし、記憶や思考力の低下を緩やかにする効果が期待されます。

また、薬物療法はあくまで進行を抑える目的であり、根本的な治療法ではありません。そのため、医師の指導のもと、適切な薬を正しく服用することが大切です。

進行段階に合ったケアを

認知症の進行には個人差があり、それぞれの段階に応じたケアが重要です。症状に合わせた対応を行うことで、認知症の進行を遅らせ、本人がより安心して生活できる環境を整えることが可能です。

以下では、各進行段階ごとのケアのポイントを詳しく解説します。

前兆(軽度認知障害)のケア
この段階では、日常生活に大きな支障はなく、物忘れや注意力の低下が見られる程度ですが、認知症の予兆である可能性があります。早期発見が症状の進行を抑える鍵となるため、家族や周囲が注意深く見守り、早めに専門医の診断を受けることを推奨します。

例えば、日常の中で忘れやすい事柄を補うために、スケジュール帳やカレンダーを活用したり、ルーティンを整えるなどの工夫を行うことで、安心感を与えることができます。本人が自立を維持できるよう、適度なサポートを心がけましょう。

初期(軽度)のケア
初期段階では、記憶障害や判断力の低下が目立ち始めますが、まだ自立した生活が可能な場合が多いです。この時期には、本人の意思を尊重しながら、サポート体制を整えることが大切です。

例えば、忘れやすい場面ではさりげなくフォローを入れ、本人が感じる不安を軽減しましょう。また、趣味や軽い運動などの活動を取り入れることで、脳への刺激を増やし、生活の質を高めることが期待されます。周囲とのコミュニケーションも維持し、孤立を防ぐことが重要です。

中期(中度)のケア
中期になると記憶障害や見当識障害が進み、自立が難しくなってくる段階です。食事や着替え、移動など、日常生活の多くの場面でサポートが必要になることが増えます。また、徘徊や不安感などの行動・心理症状(BPSD)が現れることもあります。

この段階では、環境を整えることが重要です。例えば、分かりやすい案内を用意する、必要最低限の家具だけを配置するなど、安全性を確保しつつ本人が安心して過ごせる空間を作りましょう。また、感情の動きが大きくなることも多いため、共感的な態度で接し、本人の気持ちを尊重することが大切です。状況に応じて専門施設や訪問看護を利用し、適切な支援を受けることを検討しましょう。

末期(重度)のケア
末期では、記憶や認識力が著しく低下し、ほぼすべての生活面で介助が必要になります。言葉でのコミュニケーションが難しくなる場合もありますが、スキンシップや表情を通じた交流を心がけることで、安心感を与えることができます。

また、嚥下障害や運動機能の低下が見られる場合には、食事の形状を工夫したり、定期的な体位変換を行うなど、身体的なケアが重要です。この段階では、介護者の負担も大きくなるため、積極的に専門施設や訪問看護を活用し、適切なサポートを受けることを検討しましょう。

さくらリバースの紹介

さくらリバースは、ご自宅やご在宅の場所で安心して施術を受けられるサービスをご提供しております。専門のスタッフがお伺いし、施術を行うことで、お身体の不調や痛みを緩和し、生活の質を向上させるお手伝いをさせていただきます。

個々の状態に合わせた施術を丁寧にご提供し、皆さまの健康をサポートいたします。ごうぞお気軽にお問い合わせください。

まとめ

認知症は、前兆から末期まで進行段階に応じてさまざまな症状が現れますが、適切なケアや環境整備、早期診断・治療によって進行を遅らせることが可能です。それぞれの段階で本人に寄り添い、残存機能を活かしたサポートを行うことが、本人の生活の質を保ち、安心感を与える鍵となります。家族や介護者は、一人で抱え込まず、専門家や施設の支援を活用しながら無理のない介護を心がけましょう。

認知症の理解を深め、適切な対応を取ることで、本人や家族にとってより良い日々を送るための大きな助けとなります。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し、対策を始めることが大切です。

監修:市姫 久春
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師 株式会社さくらリバース 訪問鍼灸リハビリマッサージ事業部
   

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