訪問マッサージで介護保険は使える? 医療保険との併用は可能?
訪問マッサージは、主に医療保険の適用を前提とした制度です。介護保険で直接利用することは出来ませんが、他の介護サービスとの重複を避ける為に、ケアプランに記載し利用状況を共有しておくことが望ましいとされています。
また、医療保険で訪問マッサージを利用しながら、別枠で介護保険によるサービスを併用することは可能です。但し、同一内容のサービスを重複して受けることはできず、目的や内容が明確に区別されている必要があります。
参考:厚生労働省
訪問マッサージとは?
訪問マッサージは、歩行が困難な方や寝たきりの方のもとへ、国家資格を持つ施術者が訪問し、治療を目的としてマッサージを行う制度です。
筋麻痺、関節拘縮、筋力低下にともなう運動機能障害の緩和などを目的としており、医師の「同意書」が必要です。医療保険が適用されるケースが多く、リラクゼーション目的のマッサージとは異なります。施術者は、あん摩マッサージ指圧師の資格保有者に限られています。
介護保険とは?
介護保険は、高齢者の暮らしを支援するために国が整えた公的保険制度です。
40歳以上のすべての人が加入し、要支援・要介護と認定された方は、訪問介護や福祉用具貸与などの支援を受けられます。ただし、訪問マッサージは介護保険の対象外です。
医療保険とは?
医療保険は、病気やけがにかかった際の治療費を一部負担する仕組みで、日本では全ての住民が加入しています。
訪問マッサージは、医師の判断により治療の必要性が認められた場合、医療保険の対象となります。施術内容や回数には制限がありますが、制度のもとで1〜3割の自己負担で受けられます。これは介護保険とは別の制度です。
訪問マッサージのサービス内容
訪問マッサージは、外出が難しい方のご自宅などに施術者がうかがい、医療的な目的でマッサージを行う在宅支援の一つです。
利用される方の体調や生活の状況、そして主治医の判断に基づいて実施され、筋麻痺、関節拘縮、筋力低下にともなう運動機能障害の緩和などを目的としています。
日常生活を無理なく続けるための体力の維持や、褥瘡(じょくそう)の予防にもつながることから、長く自宅で療養を続けていく上での大切な支援手段とされています。
訪問マッサージで受けられる主なサービス
訪問マッサージでは、あん摩マッサージ指圧師が患者の状態に応じて、医療的なマッサージを実施します。
内容としては、関節の拘縮(こうしゅく)予防や筋緊張の緩和、血液やリンパの流れの促進などが中心です。必要に応じて関節運動やストレッチなども行われます。
リラクゼーションのみでは無く、治療上の効果が期待されることが前提です。施術の可否や内容は、医師の同意書をもとに判断されます。
参考:厚生労働省
訪問マッサージの料金・費用
訪問マッサージの料金は全国で統一されており、医療保険を利用できる場合と自費で利用する場合では負担額が大きく異なります。
医療保険を使うためには医師の同意書が必要ですが、自己負担は1〜3割に抑えられるため、継続して利用しやすい仕組みです。
一方、リラクゼーション目的など医療保険の対象外となるケースでは自費扱いとなり、事業所によって料金が異なります。制度を理解しておくことで、自分に合った利用方法を選びやすくなります。
医療保険適用時の自己負担額
医療保険が適用される場合、自己負担割合は1割・2割・3割に分かれます。
負担の目安は次のとおりです。
1割負担:265〜643円ほど
3割負担:825〜1,929円ほど
医療保険を使うため、介護保険の限度額には影響せず、回数制限もありません。
参考:厚生労働省
料金の内訳
訪問マッサージの料金は次の2つで構成されています。
施術料
・1部位あたり約450円
・複数部位の場合は約920円ずつ加算
往療料
・1回あたり2,300円
・一部地域では特別地域加算が適用される場合あり
これらを合算した金額に、利用者の保険負担割合が適用されます。
参考:厚生労働省
自費利用の料金
自費利用の料金は事業所によって異なりますが、一般的な目安は次のとおりです。
施術料:20〜30分で3,000〜5,000円程度
出張費:500〜2,000円程度
同意書が不要で気軽に利用できますが、医療保険利用時より費用は高くなります。
ケアプランへの組み込み
訪問マッサージは介護保険の対象ではありませんが、要介護認定を受けている方が利用する場合、その内容をケアプランに記載することがあります。
これは、介護サービスとの重複を避け、全体の支援内容が適切に整理されるよう配慮するためのものです。記載されていても、訪問マッサージの費用は医療保険の枠内で扱われるため、介護保険の支給限度額には影響しません。
参考:厚生労働省
利用条件
訪問マッサージを受けるには、まず医師の診察を受け、施術の必要性について「同意書」を作成してもらうことが前提となります。また、歩行困難などにより通院ができない状態であることも条件とされています。
対象となる主な症状には、以下のようなものがあります。
・脳血管障害の後遺症
・筋萎縮
・パーキンソン病
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・関節拘縮
・四肢麻痺
など
これらは、慢性かつ継続的な機能障害がある状態とみなされ、医療的なマッサージが必要と判断された場合に対象となります。施術の回数や内容については、主治医と連携しながら、個々の状態に応じて決定されます。
参考:厚生労働省
介護保険と医療保険の併用について
訪問マッサージは医療保険の制度に基づいて提供されますが、介護保険を利用している方でも、併用することは可能です。両制度は対象や目的が異なっており、それぞれの役割を補い合うかたちで組み合わせて使われることがあります。
ただし、同じ目的で似たようなサービスを重複して受けることはできません。制度の仕組みを理解しながら、それぞれの特性に合わせた使い分けを行うことが大切です。
参考:厚生労働省
併用メリットとデメリット
医療保険と介護保険を併用することで、在宅での療養生活を幅広く支えることが可能になります。例えば、訪問マッサージで身体機能の維持を図りつつ、介護保険を通じて日常生活の支援を受けるといった使い方が想定されます。
一方で、利用範囲や負担額の管理が複雑になることもあり、制度ごとの適用条件を正しく把握しておくことが必要です。
併用する際の注意点
医療保険と介護保険を併用する際には、それぞれの制度が目的とする内容を明確に区別しておくことが大切です。例えば、訪問リハビリと訪問マッサージは似た支援に見えるものの、制度上の取り扱いが異なります。
その為、同日に両方を利用する場合には、目的の違いや必要性を説明できるようにしておく必要があります。ケアマネジャーや主治医との連携を図りながら、サービスが重ならないよう計画的に調整することが求められます。
訪問マッサージの利用方法
訪問マッサージを医療保険で利用するには、医師の同意書の取得や事業所選びなど、いくつかの手続きが必要です。ここでは、利用開始までの流れと確認しておきたいポイントをご説明します。
利用開始までの流れ
訪問マッサージを利用する一般的な流れは、次のとおりです。
① かかりつけ医へ相談
筋麻痺や関節拘縮などの症状がある場合、治療として必要かどうかを医師に相談します。必要と判断されると次の段階へ進みます。
② 事業所へ問い合わせ
地域で対応している事業所へ連絡します。ケアマネジャーがいる場合は、紹介を受けることもできます。
③ 医師の同意書を取得
事業所を決めたら、医師に同意書(または診断書)の作成を依頼します。同意書は定められた様式に沿って作成されます。
④ 保険者へ申請
事業所が同意書など必要書類を保険者へ提出します。
⑤ 施術の開始
手続きが認められ次第、医療保険を使った訪問マッサージが始まります。
医師の同意書の取得
医療保険を利用するためには、医師の同意書が欠かせません。
同意書には次の内容が記載されます。
・氏名
・病名(筋麻痺、関節拘縮 など)
・施術の必要性
・同意期間(最長6か月)
継続して利用する場合は、期間満了後に再度同意を得る必要があります。また、オンライン診療では同意書を発行できない場合が多く、対面診察が求められることがあります。
訪問マッサージ事業所の選び方
事業所を選ぶ際に確認しておきたい点は次のとおりです。
● 国家資格の有無
施術者が「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を持っているかを確認します。無資格者による施術は法律で認められていません。
● 事業所ごとの比較
サービス内容、料金、施術者の経歴などを複数比較すると、自分に合った事業所を選びやすくなります。
● 医師・家族・ケアマネとの連携体制
定期的な情報共有や報告が行われる事業所は、安全性の面でも安心です。
訪問マッサージのメリット
訪問マッサージには、身体の疲れやこわばりをやわらげるだけでなく、心の落ち着きや介護予防にも役立つ効果があります。これまでにまとめられた公的資料や研究では、マッサージが体と心の両面に良い影響をもたらすことが示されており、在宅で過ごす高齢者にとって支えとなる場面が多く見られています。
身体的な効果
訪問マッサージは、血流を促し、筋肉の緊張をゆるめ、関節の動きをスムーズにする働きがあります。腰や首の痛み、膝の違和感といった症状に対して、短期的に改善がみられたという報告もあります。
筋肉のこわばりがゆるむことで体内の巡りがよくなり、疲労物質が排出されやすくなります。関節の動きが広がることで、立つ・歩くなどの日常動作が行いやすくなる点も重要です。高齢者では、こうした身体への刺激が筋力の維持にもつながり、転倒の予防にも役立ちます。
ただし、深い組織に触れる施術には注意が必要で、まれに痛みや内出血が起こる場合があります。安全に受けるためには、体調の変化に気を配りながら進めることが大切です。
精神的な効果
マッサージで体の力が抜けると、心の緊張もやわらぎやすくなります。ゆっくりとした刺激はリラックスを促し、ストレスの軽減や落ち着きの回復に役立つとされています。
夜間の眠りが深まりやすくなる、気持ちが前向きになるなど、心の状態が安定する変化も見られます。また、施術者が定期的に訪問することで会話が生まれ、孤独感がやわらぐこともあります。自宅にいながら人とのつながりを感じられる点は、訪問マッサージならではの効果といえます。
介護予防効果
訪問マッサージは、筋力や関節の動きを保つことで、日常生活の動作をより安全に行えるよう支えます。立つ・歩くといった基本的な動作の安定は、要介護状態をできるだけ遅らせるために欠かせない要素です。
また、継続して体を動かす機会が増えることで、活動量が高まり、生活のリズムが整いやすくなります。身体機能の維持にくわえ、生活の質を保ち続けることにもつながり、介護が必要になるリスクの軽減が期待できます。
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まとめ
訪問マッサージは、医療保険の対象として提供される制度であり、介護保険とは異なる仕組みで運用されています。医師の同意がある場合に限り、医療保険を使って在宅で施術を受けることが可能です。
介護保険との併用も制度上は認められていますが、重複利用を避けるための適切な調整が必要となります。各制度の役割や条件を理解することで、在宅療養における選択肢がより明確になります。本記事が制度の理解に一助となれば幸いです。
