高齢者のマッサージの禁忌と注意点は?安全に取り入れるためのポイントを解説します
骨がもろくなっていたり、持病がある場合、思わぬ事故につながる可能性も。安全に取り入れるためには、どんな点に気をつければよいのでしょうか。
この記事では、高齢者特有のリスクと、安心してマッサージを楽しむための具体的な注意点を詳しく解説します。
高齢者のマッサージで注意したい禁忌
高齢者へのマッサージには、体の巡りを整えたり心を落ち着かせたりする良さがあります。
一方で、年齢に伴う体の変化によって、避けたい場面がいくつかあります。安全に取り入れるためには、体調や生活背景に合わせて負担の少ない刺激を選ぶことが大切です。
体調が悪いとき
発熱や感染症の症状があるときは、刺激によって巡りが強まり、不調が広がるおそれがあります。倦怠感や吐き気がある場合も同じで、マッサージが負担となり症状が強まることがあります。
高齢者は免疫の働きが弱まりやすく、体調不良が長引きやすいためです。体が整ってから再開したほうが安心です。
持病がある場合
心臓や腎臓の病気がある方、悪性腫瘍の治療を続けている方では、刺激が内臓や血管の負担につながることがあります。動脈が弱くなる病気では圧力が影響しやすく、症状を悪化させることがあるためです。
脊椎の病気がある場合も同様で、刺激が神経の痛みを強めることがあります。持病がある方がマッサージを受けるときは、体の状態に合うかどうかを主治医に確かめることが大切です。
骨が弱っている場合
骨粗しょう症などで骨がもろくなっている高齢者では、わずかな圧力でも骨折することがあります。家庭用電気マッサージ器を使った際、圧迫骨折が起きた事例が多く見られています。
被害の約6割は60歳以上の高齢者で、加齢により骨密度が下がることで刺激に耐えにくくなることが理由です。
参考:国民生活センター
肋骨や腰の骨は特に折れやすく、弱い刺激でも損傷につながることがあります。軽い触れ方から始めて様子を見ることが大切です。
皮膚が弱い場合
高齢者の皮膚は薄く乾燥しやすく、わずかな摩擦でも傷つきやすい場合があります。皮膚の弾力が減って外からの力に耐えにくくなるためです。
強い摩擦によって皮膚が裂けたり、内出血が起きることがあります。乾燥が強い場合はさらに傷つきやすくなるため、保湿を行い、負担の少ない触れ方を選ぶことで肌への負担を減らせます。
急な変化があるとき
急性の炎症やけががある場合、刺激によって状態が悪くなることがあります。出血を伴う病気や深部に血栓が疑われるときも、刺激が影響を与えることがあります。
体に急な痛みや異常を感じるときは、自己判断で続けないほうが安心です。まず医師に診てもらい、状態に合った対応を取ることが重要です。
薬の影響で起こりやすい反応
高齢者は複数の薬を飲んでいることが多く、薬の作用とマッサージの刺激が重なると、内出血やふらつきが起きやすくなります。血液をさらさらにする薬では出血が増えやすく、ステロイド薬では皮膚が薄くなり傷つきやすくなるためです。
降圧薬を飲んでいる方では、刺激の後に血圧が変動することがあります。安全に受けるためには、服薬状況を施術者へ伝え、負担を少なく整えることが大切です。
高齢者へのマッサージのコツ
高齢者へのマッサージは、年齢に伴う体の変化を理解しながら進めることが大切です。骨や皮膚が弱くなり、巡りが低下しやすい体では、一般的な手技よりも負担の少ない触れ方が安全につながります。
適切な手法で行われたマッサージは、冷えの緩和や血流の改善に役立つことが確認されています。そのため、効果と安全性を両立させるためのポイントを押さえて進めることが重要です。
強い刺激を避けたい部位
首周りには血管や神経が多く集まっており、薄い筋肉を通して刺激が直接伝わりやすいため、特に慎重なケアが必要です。強い圧を加えると痛みやしびれが起きることがあり、急激な動きを伴う施術は危険性が高い行為として扱われています。
また、骨が弱くなりやすい腰や肋骨も、過度な圧力で骨折することがあります。これらの理由から、高齢者にはやさしい刺激を基本とした手技が適しています。
むくみや冷えへのケア
高齢者に多いむくみや冷えには、軽いマッサージが役立つことがあります。足からふくらはぎに向かって優しくなでるように触れると、皮膚温が上がり、血の巡りが整いやすくなるためです。
ふくらはぎは血流が集まりやすい部位で、下から上への流れを助けることで、むくみの軽減に結びつきます。一方で、深部に血栓が疑われるときは、刺激によって血栓が移動する心配があるため、施術を行わないようにしましょう。
痛みが出やすい場所
高齢者では、肩・腰・膝などの関節周りに痛みが出やすく、加齢による関節の変形や筋力の低下が影響していることがあります。炎症がある部位に強い刺激を加えると、痛みが増したり組織を傷めたりすることがあります。
また、脊椎に関連する病気では、手技によって症状が悪化するケースが多いとされています。痛みが続く場所があるときは、まず医療機関で状態を確認し、施術が適しているか判断してもらうことが大切です。
心地よい強度
高齢者のマッサージでは、本人が「心地よい」と感じる強さを基準にすることが大切です。軽くなでるような手技は皮膚への負担が少なく、安全に取り入れやすい方法です。
研究では、90〜130mmHgほどの圧で行う優しい刺激が、冷えの改善に役立つことが確認されています。これは、「皮膚が軽く沈む程度のやわらかい強さ」に相当します。
高齢者は骨や皮膚が弱くなりやすいため、家庭用マッサージ器の強い刺激によって骨折や内出血が起きた例が多く見られています。施術は弱い刺激から様子を見て進め、表情や反応を確かめながら行うことが大切です。
安心してマッサージを受けるポイント
高齢者がマッサージを安全に受けるためには、施術前に体の状態を丁寧に確かめることが欠かせません。体調の把握は、刺激による負担を避けるためです。施術にあたる人が心身の状態を共有し、必要に応じて医師の判断を受けておくと安心です。
医療マッサージでは、施術前に医師の同意書や診断内容を確認して進めることが安全対策として求められています。日常的なリラクゼーション目的であっても、体調や持病を共有することが、思わぬ負担を避ける大切になります。
体調の変化を見極める
施術前後の体調を観察することは、安全にマッサージを受けるために重要です。施術前に血圧や脈の状態、体温、食事量、疲れ具合を確認すると、体に負担がかかりやすい状況を把握できます。
施術後には、だるさや眠気が出ることがあり、これは巡りが整うことで一時的に起きる変化です。ただし、発熱や強い痛み、しびれが続く場合は、刺激が体に合わなかった可能性があるため、早めに医療機関で確認することが大切です。
食後や入浴後を避ける
食後すぐのマッサージは避けるほうが望ましいとされています。食後は消化のために胃腸へ血液が集まりやすく、マッサージで血流が筋肉へ向かうことで消化が妨げられるためです。
一般的には、食後1〜2時間ほど空けると体への負担が少なくなります。入浴直後も体温や血圧が変動しやすい状態であるため、施術のタイミングを慎重に判断する必要があります。施術前に飲食や入浴の状況を確認し、その日の体調に合わせて判断することが、安心して続けるためのポイントです。
持病と薬を共有する
慢性疾患の有無や服薬状況を施術者へ伝えることは、安全にマッサージを受けるために欠かせません。傷病名やアレルギー、薬の禁忌情報などの「6情報」を共有しておくと、体の状態を正しく把握でき、安全性を確保した医療提供につながります。
共有される「6情報」には次の項目が含まれます。
・傷病名
・アレルギー情報
・薬剤禁忌情報
・持病の有無
・服薬内容
・検査や治療に関する基本情報
参恋:厚生労働省
日常的なマッサージや訪問マッサージでも同様で、医師から受け取った情報を施術者に渡すことは負担を避ける判断に役立ちます。特に、血液をさらさらにする薬やステロイド薬を服用している場合は、内出血や皮膚の損傷が起きやすいため、事前申告が重要です。
医療保険を利用する訪問マッサージでは、施術前に医師の同意書が必要となり、医療機関との連携が求められています。
困ったときの対処
マッサージのあとに体調の変化を感じたときは、早めに対処することで悪化を防げます。高齢者では、まれに血栓や神経の損傷、骨折といった深刻な副作用が報告されており、年齢に伴う体の弱まりが影響しやすいためです。
健康被害が疑われるときは、早めに医療機関で確認することが大切です。施術後の痛みや内出血には、好転反応と揉み返しがあり、見極めが必要になります。症状が長く続くときや悪化するときは、専門家へ相談することが安心につながります。
痛みが出た場合
施術後に痛みが出たときは、「好転反応」か「揉み返し」かを見極めることが大切です。好転反応は巡りが整うことで一時的にだるさや軽い痛みが出るものです。
通常は1〜3日ほどで落ち着きます。一方、揉み返しは筋肉が傷んだことで炎症が起きる状態で、3日以上続く痛みや悪化する痛みは揉み返しと考えられます。
初期対応として、痛みがある場所を10〜15分ほど冷やすと落ち着きやすくなります。ただし、急激な強い痛みや腫れ、炎症が拡大していく場合は、深い損傷の疑いがあるため医療機関での確認が必要です。
赤みや内出血
施術後に赤みや内出血が出るのは、強めの刺激で毛細血管が傷つき、血液が皮下に広がるためです。家庭用の強い刺激を与えるマッサージ器では、内出血や痣だけでなく、神経や骨の損傷が起きた例も報告されています。
軽い内出血であれば、1〜2週間ほどで自然に吸収され、色も徐々に薄くなっていきます。しかし、内出血が広がり続ける、強い腫れや熱を伴う、打撲していない場所にも痣が出るといった場合は、血液や血管の病気が関係している可能性があります。
特に、血液をさらさらにする薬を飲んでいる高齢者では、内出血が起きやすく重くなりやすいため、注意が必要です。
専門家への相談が必要なとき
次のような症状がみられるときは、早めに医療機関へ相談することが安心につながります。まず、痛みやしびれが3日以上続く場合、または悪化していく場合です。さらに、発熱や強い頭痛、吐き気、めまいが出るときは、神経や体の深い部分に負担がかかっている可能性があります。
広い範囲の腫れや熱感、内出血が広がり続けるときも同様です。症状が改善しないときは施術を中止し、専門の診察を受けることが勧められます。相談先としては、整形外科や内科、皮膚科が適しています。施術に関する相談や苦情は、各自治体の保健所や消費生活窓口でも受け付けています。
プロの施術者を選ぶポイント
高齢者が安心してマッサージを受けるためには、信頼できる施術者や施術所を選ぶことが欠かせません。安全性を守るには、施術に関わる正しい情報をもとに判断することが大切です。
国家資格の有無
マッサージを業として行う場合は、「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格が必要です。無資格で施術を行うことは法律で禁止されており、利用者を守るための仕組みです。
資格の有無は、施術所の看板を確認するとわかりやすく、「治療院」「マッサージ」「指圧」「あん摩」といった表記は国家資格を持つ施術者が使用できます。
一方、「整体」「カイロプラクティック」「リラクゼーション」などの名称は資格制度がない場合が多く、施術内容によっては危害につながるおそれがあります。
施術所は保健所への届出が必要とされているため、届出の有無も信頼性を見極める材料になります。
施術所の評判や口コミ
施術所を選ぶときは、実際の利用者の声を確認することが参考になります。口コミでは、技術力や接客の丁寧さ、施術後の体の変化、料金のわかりやすさなどを知ることができます。
写真付きの口コミや具体的な体験談は、信頼性を判断する手がかりになります。反対に、極端に評価が偏っている場合や、情報があいまいな口コミが多い施設は注意が必要です。
また、公式サイトで施術者の経歴や資格、施術の方針が明確に示されているかも重要な判断材料です。
情報が不十分な施術所は、利用者への配慮が行き届いていない可能性があるため、避けるほうが安心です。複数の施術所を比較し、自分の体調や目的に合ったサービスを提供しているか確認すると、より安全に利用できます。
訪問マッサージを利用する場合
訪問マッサージは医療保険が使えるサービスで、利用するには医師の同意書や診断内容の確認が必要です。医師と施術者が連携し、利用者の状態を共有しながら進めることで、安全に施術を受けられます。
医療保険を使っても介護保険の限度額には影響しませんが、介護保険サービスを利用している時間帯には訪問マッサージを受けられないため、スケジュールの調整が必要です。優良な事業所を選ぶ際は、国家資格保有者が施術を担当しているかどうかが基本になります。
また、施術時間に法的な制限はないため、40〜60分ほどの十分な機能訓練やマッサージを提供している事業所が望ましいとされています。料金が明確で、過度な頻度をすすめない事業所を選ぶことで、安心して利用できる環境が整います。
さくらリバースの紹介

さくらリバースでは、マッサージ・整体・鍼灸を組み合わせた総合的なケアを、ご自宅やご滞在先で受けていただけるよう工夫しております。
お体のご負担を和らげながら、心の落ち着きにもつながる時間をお届けできればと願っております。
ご家族のサポートが続く日々に、少しでも心と体のゆとりを持っていただけるよう努めておりますので、「訪問でどんなケアが受けられるの?」という疑問や不安があれば、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
まとめ
高齢者へのマッサージには、体調や持病、骨や皮膚の状態など、加齢に伴う特徴を考慮することが欠かせません。適切な刺激量や避けたい部位を理解し、体調の変化や服薬状況を把握することで、負担を少なく取り入れることができます。
施術後の痛みや内出血には、経過を観察しながら状況を整理する視点が役立ちます。また、施術者の資格や施術環境を確認することは、安全面の確保につながります。
