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アルツハイマー型認知症とは?なぜ起こる?症状,治療法など

監修:市姫 久春
2025年02月28日
アルツハイマー型認知症とは?なぜ起こる?症状,治療法など
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いタイプで、進行すると日常生活に支障をきたします。

この記事では、アルツハイマー型認知症がなぜ起こるのか、どのような症状が現れるのか、治療法や進行を遅らせる方法まで詳しく解説します。
目 次

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いタイプであり、進行性の脳の病気です。

脳内に蓄積するアミロイドβというたんぱく質が神経細胞を傷つけ、記憶や思考能力を徐々に低下させていきます。特に、最初に影響を受けるのが「海馬」と呼ばれる記憶を司る部分で、新しいことを覚えにくくなる症状が現れるのが特徴です。

発症初期は「年のせいかな?」と見過ごされがちですが、症状が進行すると生活に大きな影響を及ぼします。家族や周囲の人が早めに気づき、適切な対応をとることが、本人の自立した生活を少しでも長く維持する鍵となります。

もの忘れとの違い

加齢によるもの忘れとアルツハイマー型認知症の記憶障害には明確な違いがあります。

加齢によるもの忘れは、忘れたことを自覚しており、ヒントをもらえば思い出せるのが特徴です。一方、アルツハイマー型認知症では、出来事そのものを忘れてしまい、周囲が教えても「そんなことはなかった」と否定することが多くなります。

また、単に物の置き場所を忘れるのと、財布を冷蔵庫に入れるような行動の混乱も大きな違いの一つです。
詳しくは認知症と物忘れの違いは?対処法についても解説しますをご覧ください。

MCI(軽度認知障害)

MCI(Mild Cognitive Impairment)は、認知症の前段階とされる状態で、記憶力や認知機能が低下するものの、日常生活には大きな支障がないのが特徴です。加齢による単なる物忘れとは異なり、進行すると認知症に移行する可能性があるため、早期発見と適切な対応が重要です。

MCIの段階で適切な対策を取ることで、認知症への進行を遅らせたり、場合によっては回復することも可能とされています。

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症は、発症してすぐに重症化するわけではなく、段階的に進行していきます。初期の段階では「単なる物忘れ」と思われがちですが、徐々に記憶力や判断力が低下し、日常生活に影響を及ぼすようになります。

進行するにつれて、身の回りのことが難しくなり、最終的には介護が必要な状態へと移行します。

ここでは、初期・中期・後期の段階別に症状を詳しく見ていきましょう。

初期の症状 

アルツハイマー型認知症の初期段階では、記憶障害が目立ち始めますが、日常生活はほぼ自立できる状態です。

この段階では、「ちょっと物忘れが多くなった」「年のせいかな」と本人も周囲も気づかないことが多いのが特徴です。しかし、単なる加齢によるもの忘れと違い、忘れたこと自体を覚えていないことが多いのがアルツハイマー型認知症のポイントです。

中期の症状

中期になると、記憶障害がさらに進行し、日常生活にも支障が出てくるようになります。特に、場所や人が分からなくなる見当識障害が目立つようになり、周囲のサポートが必要になります。

特徴として、「できていたことが徐々にできなくなる」という変化が見られます。本人も混乱や不安を感じやすく、ストレスによる抑うつや興奮、被害妄想が現れることもあります。

この段階では、家族や介護者のサポートが不可欠となるため、介護サービスの利用を検討することが重要です。

後期の症状

後期になると、日常生活のほぼ全てにおいて介助が必要になり、身体機能も衰えていきます。認知機能の低下だけでなく、言葉を発することが難しくなったり、歩行が困難になることもあります。

この段階では、本人の意思を伝えることが難しくなるため、家族や介護者が表情やしぐさを見ながら対応することが大切です。また、食事や排泄の介助が必要になり、介護の負担も大きくなるため、施設への入居を検討することも選択肢の一つとなります。

アルツハイマー型認知症の原因と予防法

アルツハイマー型認知症の原因は完全には解明されていませんが、さまざまな要因が関係していると考えられています。特に、生活習慣や遺伝、食生活、知的活動の有無が、発症リスクに影響を及ぼすことが分かっています。

ここでは、これらの要因について詳しく解説します。

生活習慣と環境

生活習慣や環境の違いは、アルツハイマー型認知症の発症リスクに大きく影響します。

  • 運動不足
    運動をしないと脳の血流が悪くなり、神経細胞が衰えやすくなることが分かっています。適度な運動を習慣化することで、脳への酸素供給がスムーズになり、認知症のリスクを抑えることができます。
  • 睡眠不足
    質の悪い睡眠は、脳内に有害なアミロイドβの蓄積を促進すると考えられています。夜更かしや不規則な生活は避け、十分な睡眠を確保することが大切です。
  • 慢性的なストレス
    ストレスは脳に悪影響を及ぼし、長期間続くと記憶を司る海馬を萎縮させる可能性があります。リラックスできる時間を確保し、趣味や交流を楽しむことが脳の健康維持につながります。
  • 社会的孤立
    一人で過ごす時間が長いと、認知症のリスクが高まると言われています。家族や友人との会話を増やし、社会とのつながりを維持することが、認知症の予防に役立ちます。

食生活

食生活の乱れ、特に脂肪や糖分の過剰摂取は、脳機能の低下を引き起こす可能性があります。

  • 高脂肪・高糖質の食事
    動物性脂肪を多く含む食事は、血管の詰まりを引き起こし、脳への血流を悪化させる原因となります。また、糖分の過剰摂取はインスリン抵抗性を高め、アルツハイマー型認知症の発症リスクを増加させると考えられています。食事のバランスを見直し、脂質や糖分の摂取を控えることが、認知機能の低下を防ぐために重要です。
  • 抗酸化作用のある食品の不足
    酸化ストレスは脳細胞を傷つけ、認知症の進行を早める可能性があります。ビタミンEが豊富なナッツ類やアボカド、オメガ3脂肪酸を多く含む青魚や亜麻仁油、ポリフェノールを含むブルーベリーや緑茶を意識的に摂取することで、脳の健康を維持しやすくなります。
  • 塩分の過剰摂取と高血圧
    高血圧は脳の血管に負担をかけ、認知症のリスクを高める要因となります。塩分の摂りすぎを避け、バランスの取れた食事を心がけることで、血圧を安定させることが大切です。,

遺伝的要因

アルツハイマー型認知症の大部分(約90%)は遺伝と関係がない孤発性アルツハイマー病とされています。

家族性アルツハイマー病

遺伝的な要因によって発症し、40代~50代と比較的若い年齢で発症するのが特徴です。これは「APP」「PSEN1」「PSEN2」といった特定の遺伝子の変異が原因とされています。

知的活動の長さ

知的活動が多い人ほど、認知症のリスクが低いとされています。脳を刺激する習慣を取り入れることで、認知機能の維持が期待できます。

予防におすすめの習慣
・読書や新聞を読む
・計算やクロスワード、パズルを解く
・楽器演奏や絵を描く会話や交流

アルツハイマー型認知症の診断

アルツハイマー型認知症の診断には、国際的な基準が複数存在し、それぞれの機関が発表した診断基準をもとに判断されます。代表的なものとして、WHOのICD-10、NIA-AA(米国国立老化研究所)、DSM-5(米国精神医学会)の基準があります。

診断では、記憶障害や認知機能の低下の有無を確認し、日常生活への影響や進行状況を評価します。

WHOのICD-10

ICD-10(国際疾病分類第10版)は、世界保健機関(WHO)が策定した診断基準です。アルツハイマー型認知症は、進行性の脳疾患により記憶・思考・判断能力が低下し、日常生活に支障をきたす状態と定義されています。

診断基準のポイント
・記憶力の低下(新しい出来事を覚えられない、過去の記憶も障害される)
・認知能力の低下(判断力や情報処理能力の低下)
・意識障害がないこと(せん妄など一時的な混乱ではない)
・情緒や行動の変化(感情の起伏が激しくなる、社会的な行動が変化する)
6か月以上の症状の持続(一時的なものではなく、継続的な症状である)
参考:日本神経学会

NIA-AA(米国国立老化研究所)

NIA-AA(National Institute on Aging-Alzheimer’s Association)は、アルツハイマー型認知症の診断基準として臨床診断と生物学的指標の両方を考慮する点が特徴です。

診断基準のポイント
・仕事や日常生活に支障をきたす認知機能の低下
・せん妄や精神疾患が原因ではないこと
・記憶障害、判断力の低下、言語機能の低下など2つ以上の認知機能に障害がある
・患者本人や家族の報告、および精神心理検査による評価
・画像検査(MRI・PET)や生体マーカーによる補助診断が可能
NIA-AAの診断基準は早期診断を重視しており、MCI(軽度認知障害)の段階でも診断できるように設計されています。
参考:日本神経学会

DSM-5(米国精神医学会)

DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)は、精神疾患の診断基準として広く使用されており、アルツハイマー型認知症は「神経認知障害」に分類されています。

診断基準のポイント
・認知能力の低下が、本人または周囲の報告、または神経心理学的検査によって確認される
・日常生活に支障をきたすレベルの記憶障害や認知機能障害がある
・せん妄ではなく、他の精神疾患(うつ病や統合失調症など)で説明できない
・学習・記憶、遂行機能、言語、知覚運動能力、社会的認知のうち1つ以上の領域に著しい低下がある
DSM-5は、認知機能障害の重症度を評価し、軽度認知障害(MCI)と重度認知症を区別するための基準を提供しています。
参考:日本神経学会

アルツハイマー型認知症の検査

アルツハイマー型認知症の診断には、神経心理検査・画像検査・血液検査などの方法があります。初期症状があらわれても、加齢によるもの忘れとの区別が難しいため、これらの検査を組み合わせることで、より正確な診断を行います。

神経心理検査

神経心理検査は、記憶・判断力・言語能力などの認知機能の低下を評価するための検査です。紙やコンピューターを使った簡単な質問や課題に答えることで、脳の機能がどの程度影響を受けているかを確認します。

  • ミニメンタルステート検査(MMSE)
    短時間で認知機能を測定できる標準的な検査。日時の認識、計算、記憶、言語、図形認識などの項目を評価します。
  • 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
    日本で広く使用されている認知機能検査。年齢や居住地、数字の逆唱、単語の記憶などを問う形式です。
  • 時計描画テスト(CDT)
    時計の文字盤を描くことで、視空間認知や実行機能の低下を確認します。参考:国立病院機構

神経心理検査は、医師の問診とあわせて初期診断に用いられることが多く、結果によってはさらに詳しい画像検査や血液検査が行われます。

画像検査

画像検査では、脳の萎縮や血流の変化を調べ、アルツハイマー型認知症の進行度や他の疾患との違いを確認します。

  • MRI(磁気共鳴画像診断)
    海馬や側頭葉の萎縮を調べることで、アルツハイマー型認知症の早期発見に役立ちます。脳梗塞や脳腫瘍など、他の病気との鑑別も可能です。
  • CT(断層撮影)
    脳の形状や異常を確認。MRIに比べると詳細な脳萎縮の評価は難しいですが、脳血管性認知症との違いを判断する際に有用です。
  • 脳血流SPECT(単一光子放射断層撮影)
    放射性薬剤を使用し、脳の血流の状態を画像化します。アルツハイマー型認知症では、側頭葉や後部帯状回の血流低下がみられることが多いです。
  • MIBG心筋シンチグラフィ
    主にレビー小体型認知症との鑑別に使われる検査。アルツハイマー型認知症の場合は異常がみられないため、診断の補助になります。参考:国立病院機構

画像検査は、病気の進行度や異常の部位を客観的に評価できるため、診断の確定や治療方針の決定に役立ちます。

血液検査

近年、アルツハイマー型認知症の診断精度を向上させるために、血液検査によるMCI(軽度認知障害)のリスク評価が行われるようになっています。

  • MCIスクリーニング検査
    この検査では、血液中の特定のタンパク質(アミロイドβの排出に関与する成分)を測定し、MCIのリスクを約80%の精度で判別します。

少量の採血で認知症のリスクが分かるため、早期発見や予防の観点から注目されています。

アルツハイマー型認知症の治療

アルツハイマー型認知症には、根本的な治療法はまだ確立されていませんが、進行を遅らせたり、症状を緩和したりするための治療法がいくつかあります。大きく分けると、薬物療法と非薬物療法の2種類あります。

薬物療法は脳の神経伝達を助けたり、進行を遅らせたりするための治療、非薬物療法は生活習慣の改善やリハビリなどを通じて、残存機能を維持するための治療です。どちらも組み合わせて行うことで、より効果的なケアが可能になります。

薬物療法

薬物療法は、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせ、認知機能の低下を抑えるために行われます。現在、日本で承認されている治療薬には認知機能改善薬と行動・心理症状(BPSD)を抑える薬の2種類があります。

認知機能改善薬(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬)

アルツハイマー型認知症では、記憶や学習に関わるアセチルコリンという神経伝達物質が減少します。
この減少を抑えることで、記憶力や認知機能の低下を遅らせるのがアセチルコリンエステラーゼ阻害薬です。
・アリセプト(ドネペジル)
 軽度~重度のアルツハイマー型認知症に使用
・レミニール(ガランタミン)
 軽度~中等度の患者向け
・イクセロン・リバスタッチ(リバスチグミン)
 貼付薬タイプで、飲み忘れのリスクを減らせる

NMDA受容体拮抗薬

神経細胞の過剰な刺激を防ぎ、脳の損傷を抑えるための薬です。
・メマリー(メマンチン)
中等度~重度のアルツハイマー型認知症に使用

行動・心理症状(BPSD)に対する薬

認知症が進行すると、不安や興奮、幻覚、抑うつといった 行動・心理症状(BPSD)が現れることがあります。これらの症状に対しては、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬 などが用いられ、症状の緩和を目的とした治療が行われます。

最近では、新しい治療薬「レカネマブ(レケンビ®)」が2023年9月25日、厚生労働省で承認され、アルツハイマー型認知症の新たな治療法として注目されています。

非薬物療法

薬物療法と併用して行われる非薬物療法は、生活習慣の改善や脳への刺激を通じて認知機能の維持を目指します。

認知リハビリテーション
・音読や計算ドリル
 脳を刺激し、認知機能を維持
・パズルやゲーム
 記憶力や注意力を鍛える
・回想法
 昔の出来事について話すことで、脳を活性化

生活習慣の改善
・適度な運動
 ウォーキングや体操で脳の血流を促す
・食生活の見直し
 抗酸化作用のある食品(魚、ナッツ、野菜など)を積極的に摂取
・睡眠の質を高める
 規則正しい生活リズムを作り、十分な睡眠を確保

音楽療法・園芸療法
音楽や自然と触れ合うことで、リラックス効果を得られ、不安やイライラを軽減することができます。

アルツハイマー型認知症の方への対応

アルツハイマー型認知症の方と接する際は、本人の気持ちを尊重し、安心感を与えることが大切です。

・忘れたことを責めず、やさしく伝える
・家事など、できることは部分的に手伝ってもらう
・外出や散歩を促し、気分転換を図る
・視界に入りやすい場所に必要な物を置き、混乱を防ぐ
・味覚の変化に合わせ、時々好みの食事を取り入れる

家族や介護者のサポート次第で、本人が穏やかに過ごせる時間を増やすことができます。焦らず、寄り添う気持ちを大切にしましょう。

さくらリバースの紹介

わたしたち、さくらリバースは、訪問鍼灸リハビリマッサージを通じて、ご本人の身体機能の維持・向上をサポートし、ご家族の負担を軽減するお手伝いをさせていただいております。

ご自宅でのケアに不安を感じている方、リハビリを取り入れたいと考えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。皆さまの安心できる暮らしを、心を込めてサポートいたします。

まとめ

アルツハイマー型認知症は、誰にとっても身近な病気であり、早期の気づきと適切な対応が、その後の生活の質を大きく左右します。 進行を完全に止めることは難しいですが、生活習慣の見直しや適切なケアを続けることで、できることを長く維持することも可能です。

「もしかして?」と不安を感じたら、一人で抱え込まず、 早めの診断とサポートを受けること、周囲の人や専門家に相談することが大切です。

監修:市姫 久春
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師 株式会社さくらリバース 訪問鍼灸リハビリマッサージ事業部
   

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