介護と仕事を両立するには?押さえるべきポイントを解説します

監修:森田 進
2024年07月22日
介護と仕事を両立するには?押さえるべきポイントを解説します
介護と仕事を両立するのは、多くの人にとって大きな挑戦です。しかし、制度を活用することで、この難題を乗り越えるサポートを受けることが可能です。

この記事では、介護休業制度や介護保険サービス、在宅介護サービスの利用方法など、介護と仕事を両立するための具体的なポイントを解説します。

訪問介護やデイサービス、ショートステイなどの詳しい情報も含まれるので、ぜひ最後までご覧ください。
目 次

介護と仕事を両立するのは難しい

介護と仕事を両立する際、介護が必要な家族がいる場合、日常のケア、緊急時の対応、通院の付き添いなど、予測不能な時間を要求されることが多くあります。これが仕事のスケジュールと衝突することがあり、仕事の柔軟性や理解ある職場環境がないと、特に困難を感じることがあります。

また、介護の負担が重くなると、仕事のパフォーマンスにも影響が出ることがあります。このような状況では、介護休業制度の活用や、リモートワークなどの柔軟な勤務形態を選択することが一つの解決策となりえますが、それでも全ての問題が解決されるわけではありません。

介護と仕事の両立の実態

介護と仕事の両立の実態については、多くのケースで以下のような課題が挙げられます。

時間管理の難しさ

介護が必要な家族のために、通院の付き添い、日々の世話、緊急時の対応など、予測不能な時間を要求されることが多く、仕事とのバランスを取ることが非常に困難になります。

職場の理解不足

介護を必要とする家族がいることを職場に理解してもらえない場合、柔軟な勤務時間の調整や休暇取得が難しくなることがあります。特に、介護休暇や短時間勤務などの制度が整っていても、それを利用することに対する周囲の目や、キャリアへの影響を懸念する声もあります。

精神的負担

介護する家族の健康状態の変化や将来に対する不安、仕事との両立によるストレスなど、精神的にも大きな負担を感じることが多いです。これが原因で、職場での集中力の低下やミスの増加、仕事へのモチベーションの低下につながることもあります。

経済的な問題

介護には様々な費用がかかり、それに伴い家庭の経済状況が悪化することがあります。仕事を減らすことによる収入減と、介護に必要な出費の増加は、大きな経済的なプレッシャーになります。

キャリアへの影響

長期間の介護責任を持つことがキャリアの停滞やスキルの陳腐化を招くことがあり、再びフルタイムで職場に戻る際に不利になることがあります。

これらの実態を踏まえ、多くの企業や組織では、柔軟な勤務制度の導入、メンタルヘルスのサポート、介護に関する情報提供と教育など、従業員が仕事と介護を両立できるような環境整備を進めています。しかし、まだまだ改善が必要な部分も多く、個々の事情に合わせた支援の拡充が求められています。

仕事と介護を両立するための支援

介護が必要な家族を抱えながらも働き続けることは、非常に大変なことです。しかし、日本社会では、働きながら介護をするための支援制度が整っています。これにより、介護と仕事の両立がしやすくなります。

重要なのは、どのような支援があるのかをしっかりと理解し、適切に利用することです。次に、具体的な支援制度について説明します。

介護休業制度

介護休業制度は、介護が必要な家族を持つ労働者が、一定期間休業することを認められる日本の制度です。この制度は、育児・介護休業法に基づいています。

具体的には、以下のポイントが特徴です

対象者:直系血族または配偶者が介護を必要とする労働者。

休業期間:家族一人につき最大93日間の休業が可能です。これは複数の家族が介護を必要とする場合には、それぞれに対して適用されます。

給付金:介護休業給付金として、休業中の経済的支援が行われます。これは雇用保険に基づく給付で、休業期間中の収入の一部を補償します。

就業規則の整備:雇用主は、介護休業が可能な条件を就業規則に明記し、職場での理解と支援体制を整える必要があります。

この制度を利用することで、労働者は介護と仕事の両立を図りやすくなり、介護に専念する期間を持つことができます。また、休業後の職場復帰も保障されているため、キャリアの途切れを防ぐ助けにもなります。

育児・介護休業法

育児・介護休業法は、日本の法律で、労働者が育児または介護のために必要な休業を取得できるように規定しています。この法律は、働く人々が仕事と家庭生活のバランスを取ることを支援することを目的としています。

以下は、この法律の主要な特徴です:

対象者:全ての労働者がこの法律の対象となり、育児や介護が必要な家族のケアのために休業を取得できます。

休業期間:
・育児休業:子どもが1歳になるまでの期間(特定の条件下ではさらに延長可能)。
・介護休業:介護が必要な家族一人につき最大93日間。

給付金:育児休業給付金および介護休業給付金が支給され、休業中の経済的負担を軽減します。これらは雇用保険から支給され、所得の一部を補います。

勤務条件の調整:短時間勤務制度やフレックスタイム制度など、育児や介護に対応するための勤務条件の調整が可能です。

職場復帰の保障:休業からの職場復帰が保障されており、復帰後も同等の扱いを受けることができます。

この法律により、労働者は家族のケアが必要な時期に休業を取ることができ、職場復帰もスムーズに行えるようになっています。また、職場における育児・介護支援の意識が高まり、ワークライフバランスの推進に寄与しています。

介護休業給付

介護休業給付は、日本の雇用保険制度の一環として提供されるもので、介護休業中の労働者に経済的な支援を提供します。

以下は、介護休業給付の主要な特徴です:

目的:介護が必要な家族をケアするために休業する労働者が収入の減少を経験することを緩和するため、一定の給付金が支給されます。

支給条件:介護休業を取得する労働者は、雇用保険に加入している必要があります。また、介護休業を取得する際には、介護が必要な家族の状態が政府の定める一定の要件を満たしている必要があります。

支給額:給付金の額は、労働者の平均日給の約67%が基準とされ、最大で介護休業期間の全日にわたって支給されます。

支給期間:介護休業給付は、同一の被介護者に対して最長で93日間まで支給されることができます。これは、複数の介護者がいる場合には、介護者間で給付日数を分け合うことが可能です。

申請方法:給付を受けるためには、所属する企業を通じて、または直接最寄りのハローワーク(公共職業安定所)に申請する必要があります。

この給付制度は、労働者が家族の介護のために必要な時間を取りやすくすることで、仕事との両立を支援し、経済的な不安を軽減することを目指しています。

人手不足

介護現場でのスピーチロックが人手不足によって起こるのは、介護スタッフが過重労働に陥りがちであるためです。スタッフが限られている中で多くの利用者の世話を行うことは、時間とエネルギーを大量に消費します。このため、スタッフは一人一人の利用者とじっくり話す時間が不足します。

さらに、継続的な過労は疲労とストレスの蓄積を引き起こし、これがコミュニケーションの質を低下させます。介護者が疲れ果てていると、利用者の発言に対して十分な注意を払うことができず、それがスピーチロック、つまり利用者が自由に意見を表現する機会を奪う結果につながるのです。

介護保険サービス

介護保険サービスは、日本で2000年に導入された制度で、高齢者や障がいを持つ人々が必要とする介護サービスへのアクセスを支援することを目的としています。このサービスを通じて、利用者は質の高い介護を受けることができ、生活の質の維持を図ることができます。

以下は、介護保険サービスの主要な特徴です:

対象者:65歳以上の高齢者および40歳以上の特定の疾病を持つ人々が対象です。利用者はケアマネージャーの支援を受けながら、必要なサービスを選択します。

サービスの種類:
・訪問介護:自宅に介護スタッフが訪問し、食事の準備や入浴、排泄などの日常生活の支援を提供します。
・デイサービス:日帰りで介護施設を利用し、リハビリテーションやレクリエーション、食事提供などのサービスを受けます。
・ショートステイ:一時的に施設に宿泊し、介護サービスを受けることができます。これは、家族介護者が休息を取るためのサービスとしても利用されます。
・居宅介護支援:ケアプランの作成やサービスの調整を行う専門家(ケアマネージャー)によるサポートを受けます。

費用:介護保険は利用者と公的資金で費用が分担されます。通常、サービス費用の10%から30%が利用者の自己負担となり、残りは保険から支払われます。

申請プロセス:介護サービスを利用するためには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。地域の市町村が実施する評価に基づき、要支援または要介護の状態が認定されます。

介護保険の運用:介護保険は地方自治体が管理し、政策の実施とサービスの提供を担当します。また、国が全体の方針を決定し、適切なサービスが提供されるよう監督します。

介護保険サービスは、介護が必要な人々が尊厳を保ちながら自宅またはコミュニティ内で生活できるよう支援し、家族介護者の負担を軽減する重要な役割を担っています。

ケアの対応が重なってしまう

介護施設などでは、複数の利用者が同時にケアを必要とする場合があり、このような状況がスタッフの時間と注意を分散させ、個々の利用者への十分な対応を難しくします。

ケアの対応が重なる場合、介護スタッフは一人一人の利用者に対して個別の注意を払うことが困難になります。その結果、利用者が自分のニーズや希望を表明する機会が制限されることがあります。例えば、スタッフが数人の利用者を同時に見なければならない場合、一人の利用者が何かを要求しても、スタッフは他の利用者の急を要するニーズに対応するためにその声を制御せざるを得ない状況が生じることがあります。

さらに、緊急性の高いケアが必要な利用者がいる場合、他の利用者の日常的な要望や感情表現は後回しにされがちです。このように、スタッフが複数のタスクを同時に処理する必要がある場合、利用者の意見が適切に聞かれず、彼らの発言の機会が失われることがあります。

介護と仕事を両立するために在宅介護サービスを利用

介護と仕事を両立するためには、在宅介護サービスを利用することが効果的です。働きながら親の介護を行うことは、多くの人にとって大変な負担です。

しかし、在宅介護サービスを活用すれば、専門家の助けを得られ、家族だけで介護を抱え込む必要がありません。こうしたサービスを利用することで、心理的な負担も軽減されることがあります。

訪問介護

訪問介護は、介護専門のスタッフが自宅に訪問してサポートを行うサービスです。食事の準備や掃除、入浴の手助けなど、日常生活の補助をしてくれます。特に、仕事で忙しい日中はこのサービスが重宝されるでしょう。訪問介護のメリットは、個別の日程に柔軟に対応できる点です。家族のスケジュールに合わせて、必要な時間だけ利用できるからです。また、介護スタッフが定期的に訪れることで、見守りの効果も期待できます。

訪問介護サービスを利用する際は、信頼できる業者を選ぶことが重要です。資格を持った専門家がサービスを提供しているかどうかを確認しましょう。そのために、事前に複数の業者に問い合わせたり、口コミを参考にしたりすることが推奨されます。そして、訪問介護を上手に活用することで、介護をしながらも仕事に専念しやすくなるのです。

デイサービス

デイサービスは、高齢者が日中通所して受ける介護サービスです。このサービスでは、食事やリハビリ、レクリエーションなどを提供してくれる施設が多いです。日中の場を提供することで、仕事をしている家族の負担を軽減します。特に仕事の時間帯に高齢者を安心して預けられるため、働く家族にとって大きな助けとなるでしょう。デイサービスの良い点は、利用者同士の交流があることです。

高齢者は日常の中での楽しみを見つけることで、心理的・身体的な健康を保つことができます。デイサービスはその場を提供するだけでなく、介護予防にもつながります。選ぶ際には、施設の環境や提供されるプログラムを確認すると良いです。また、試しに一度利用してみることで、そのサービスの質やスタッフの対応を実際に体験することが理想的でしょう。

ショートステイ

ショートステイとは、短期間高齢者が施設に宿泊するサービスです。働きながら介護をしていると、連続した休息が取れないことが問題になります。そのため、時々ショートステイを利用することで、高齢者を安心して預けることができます。ショートステイを活用することで家族は休息を確保でき、充実した介護につながるでしょう。

このサービスは、突発的なイベントや旅行、または家庭内での緊急事態にも対応可能です。利用する施設を選ぶ際には、対応してくれるスタッフの質や設備、食事の内容などを確認することが重要です。そして、ショートステイを定期的に利用することで、心身共にリフレッシュできます。訪問介護やデイサービスと組み合わせて使用することで、総合的な介護支援を受けられます。

老人ホーム

老人ホームは、長期にわたって高齢者が生活するための施設です。自宅での介護が難しくなった場合に、選択肢の一つとして考えるべきです。老人ホームでは、24時間体制で介護サービスが提供されるため、家族も安心して仕事に集中できます。特に重度の介護が必要な場合には、専門的なケアを受けられることが重要です。

老人ホームには、一般的な介護施設と医療的なケアを併せ持つ施設があります。選ぶ際には、高齢者の健康状態や生活スタイルを考慮して適切な施設を探しましょう。また、実際に施設を訪れて見学することが推奨されます。入居費用や利用料金も重要な要素ですので、事前に詳細を確認してください。老人ホームを適切に選ぶことで、仕事と介護の両立がよりスムーズになるでしょう。

さくらリバースの紹介

さくらリバースでは、訪問鍼灸リハビリマッサージをご提供し、仕事と介護を両立するご家族をサポートさせていただきます。専門のスタッフが、一人ひとりの健康状態や生活リズムに合わせて、最適な治療を行います。

自宅など、お住まいの場所でリラックスしながら受けられる当院のサービスは、身体的なリハビリだけでなく、心のケアにも配慮しております。お気軽にご相談ください。

まとめ

介護と仕事を両立するためには、社会全体の理解と支援が不可欠です。わたしたち一人ひとりが、介護を必要とする家族を持つ人々への配慮を深め、柔軟な働き方や公的支援制度を活用することが大切です。この挑戦を共に乗り越えるために、それぞれができる行動を考え、実践していくことが求められます。

監修:森田 進
株式会社 さくらリバース 人材開発部 兼 事業開発部 部長
   

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