徘徊とは?原因と対処法について解説します

監修:市姫 久春
2024年10月23日
徘徊とは?原因と対処法について解説します
認知症の症状の一つである「徘徊」は、本人にとっては意味のある行動ですが、家族や介護者にとっては不安や負担を引き起こす大きな問題となり得ます。

徘徊は、特に認知症の方が目的もなく歩き回る行動を指し、事故や行方不明などのリスクも伴います。この記事では、徘徊がどのように起こるのか、その原因を理解し、対処法や予防策について詳しく解説します。

徘徊に対する適切な知識を身に付け、安心した介護生活を送りましょう。
目 次

徘徊とは

徘徊とは、認知症などの影響で本人が意識的・無意識的に特定の目的地もなく歩き回る行動を指します。特に高齢者や認知症患者に多く見られる行動で、本人にとっては自分の意思で出かけたり移動したりしている感覚がある場合が多いですが、実際には目的を忘れたり、行き先がわからなくなったりすることがよくあります。

徘徊は、屋内外問わず発生し、特に夜間や家族の目が届かない時間帯に行われることが多く、その結果、迷子になったり事故に遭ったりする危険性が高まることがあります。

徘徊は、本人だけでなく、介護者や周囲の人々にも大きな負担を与える可能性があり、特に長時間の徘徊や外出による行方不明のリスクが社会問題となっています。近年、警察庁のデータでは、認知症が原因と見られる行方不明者の数が増加しており、特に高齢化が進む日本では、地域全体での対策が必要とされています。

徘徊の行動は、本人にとっては意味のある行動であり、決してただの「歩き回り」ではありません。認知症の症状の一つとして捉え、適切な理解と対応が求められます。

徘徊が起こる原因

徘徊が起こる原因は、さまざまな要因が絡み合っています。主に、身体的な違和感、心理的なストレス、過去の習慣を再現しようとする行動などが原因として考えられます。これらの原因を理解することで、徘徊を予防したり、適切に対応することが可能です。

身体的な違和感

身体的な違和感は、徘徊を引き起こす大きな要因の一つです。例えば、トイレに行きたいという生理的な欲求や、空腹や喉の渇き、体の痛みなどが原因となることがあります。認知症の進行によって短期記憶が失われ、何をしようとしていたのかを忘れてしまうことが多く、トイレに行く途中で目的を忘れ、ただ歩き続けるといったケースがよく見られます。

また、身体的な不快感を抱えている場合も徘徊に繋がることがあります。例えば便秘や頻尿、消化不良などの身体的な問題を抱えたまま、解決策を見つけることができずにうろうろと歩き回ることが徘徊の原因となります。このような場合、定期的な健康管理や医師の指導を受けて、身体的な問題を早めに解消することで徘徊の頻度を減らすことができます。

心理的な原因

心理的な原因も、徘徊を引き起こす大きな要因です。認知症の進行により、記憶力や判断力が低下し、自分の居場所や現在の状況に対する不安や混乱が増すことがあります。その不安感が徘徊という行動に表れることが多いです。特に、自宅や介護施設などの環境に不慣れな場合や、介護者からの対応に対して不満を感じた場合に、安心できる場所を探し求めて徘徊に繋がることがよくあります。

また、これまで当たり前にできていたことができなくなり、その喪失感や不安感が徘徊を引き起こすこともあります。例えば、長年続けていた家事や仕事ができなくなったり、日常生活での役割を失ったと感じることで、無意識のうちに過去の生活の一部を再現しようとする行動が徘徊として現れるのです。

習慣の再現

徘徊の原因の一つには、過去の習慣を再現しようとする行動があります。これは、認知症患者が過去に行っていた日常的な習慣やルーチンを繰り返そうとするもので、例えば仕事に行こうとするために外出したり、夕食の準備をしようとして買い物に出かけたりするケースがこれに当たります。

このような場合、本人は完全に昔の習慣を再現しようとしているため、自分が今の状況や立場を正しく理解していないことが多いです。例えば、退職してから何年も経っているにもかかわらず、「会社に行かないといけない」と考えたり、子供が独立しているのに「子供を迎えに行かないと」と感じることがあります。こうした行動は、本人にとっては自然なことに思えても、周囲から見ると徘徊として見られることが多くあります。

習慣の再現による徘徊は、過去の生活に強く結びついた行動パターンであり、現状との不一致が不安や混乱を引き起こすためです。これに対処するには、本人の行動に対して否定的な対応をせず、できる限りその行動に寄り添い、安心感を与えることが効果的です。

徘徊の危険性

徘徊にはさまざまな危険性が伴います。認知症の患者が目的もなく歩き回ることにより、怪我や事故など、命に関わるリスクが増大します。特に、徘徊は夜間や早朝に発生しやすく、周囲の目が届きにくい時間帯に起こることが多いため、事前に徘徊による危険性を理解し、予防策を講じることが非常に重要です。

怪我

徘徊中に最も懸念される危険の一つは、怪我です。認知症の患者は、自分がどこにいるのか、周囲の状況を正しく把握できないことが多く、障害物に気付かずに転倒することがあります。

特に、段差や階段、道路の段差などは大きなリスク要因となります。また、屋内でも家具にぶつかって転倒したり、床に置かれた小物につまずいたりする可能性もあるため、日常的な生活環境の整備が必要です。

交通事故

徘徊による危険性として次に考えられるのが、交通事故です。徘徊中に無意識に道路に飛び出してしまうケースや、車やバイクの往来が多い道路を歩いてしまうことがあります。

特に、夜間や視界が悪い天候の中では、運転手が気付かずに事故に巻き込まれる危険性が高まります。また、高速道路や線路の近くに住んでいる場合は、そのリスクがさらに高くなり、重大な事故につながる可能性があるため、徘徊防止策が重要です。

熱中症・低体温症

徘徊のもう一つの大きな危険性は、天候や気温に対する適応力の低下に伴う熱中症や低体温症です。特に夏場では、高温多湿の環境下で長時間外にいることで、熱中症を引き起こすリスクが高まります。

一方、冬場では、適切な防寒具を身に付けないまま外出してしまうと、体温が急激に低下し、低体温症や凍傷の危険が増します。季節や天候に応じた適切な服装や外出防止策を講じることが徘徊対策として重要です。

徘徊が起きた時の対処法

徘徊中の認知症患者は、しばしば不安や混乱を感じています。彼らが行動している理由は、本人にとっては非常に重要なものかもしれません。そのため、言動を否定せずに傾聴することが、徘徊を止めるための第一歩となります。「ここは家じゃない」「どこかに行かなきゃいけない」などと言った場合でも、まずはその言葉に耳を傾けましょう。

言動を否定せず傾聴する

徘徊中の認知症患者は、しばしば不安や混乱を感じています。彼らが行動している理由は、本人にとっては非常に重要なものかもしれません。そのため、言動を否定せずに傾聴することが、徘徊を止めるための第一歩となります。「ここは家じゃない」「どこかに行かなきゃいけない」などと言った場合でも、まずはその言葉に耳を傾けましょう。

否定することで、本人はさらに混乱し、不安が増してしまう可能性があります。例えば、「どこに行きたいのですか?」「一緒に探しましょうか?」などと話を合わせ、共感を示すことで、安心感を与えることができる場合もあります。

無理やり引き止めない

徘徊しようとしている患者を無理に引き止めることは、逆効果になることがあります。強引に止められたと感じると、本人は抵抗感を強め、感情的に反発してしまうことがあるため、できるだけ自然な形で行動を落ち着かせることが大切です。

無理に引き止めようとせず、歩くこと自体を許容しながら、安全な範囲で付き添うことが効果的です。徘徊の理由を理解した上で、できるだけ本人にとって安心できる環境を提供し、「少し休んでからにしましょう」などと声をかけることで、落ち着かせることができる場合もあります。

行方不明の場合は警察に届ける

万が一、認知症患者が徘徊によって行方不明になった場合は、速やかに警察に届け出ることが最優先です。徘徊は長時間続くと、交通事故や転倒、体調不良などのリスクが急速に高まります。家族で探すことも大切ですが、警察の力を借りて早期に捜索を始めることが、発見までの時間を短縮する重要なポイントです。

警察に連絡する際には、本人の服装や持ち物、最後に見かけた場所などの具体的な情報を伝えるようにしましょう。また、地域のSOSネットワークや見守りサービスがある場合には、それらのサービスも活用することで、早期発見に繋がる可能性が高まります。

徘徊を予防する方法

認知症患者の徘徊は、事前に対策を講じることで予防できる場合があります。特に、患者が家を出て行方不明になったり、事故に遭遇したりするリスクを最小限に抑えるためには、日頃から適切な環境作りと予防策を徹底することが大切です。ここでは、徘徊を防ぐための具体的な方法について詳しく解説します。

玄関・ドアに工夫をする

徘徊の防止策として、最も重要なのは家の出入口に対する工夫です。認知症患者は、意図せず家を出て行こうとすることが多いため、玄関やドアの施錠方法に工夫を施すことが有効です。具体的には、玄関の鍵を高い位置に設置したり、複雑なロックシステムを導入したりすることで、本人が簡単に外へ出られないようにすることが考えられます。

また、ドアにセンサーを設置して、ドアが開かれるとアラームが鳴るようにすることで、家族や介護者が徘徊の兆候にすぐに気づくことができ、迅速に対処できます。これにより、徘徊が始まる前に対応できる可能性が高まります。

さらに、玄関やドア周辺には、本人が興味を持ちそうな物を置くことで、外出の気を逸らすという手法も効果的です。例えば、花や絵画、鏡などを玄関付近に設置することで、本人の注意を引きつけ、家の外に出ることを忘れさせる工夫ができます。

GPSの活用

徘徊を完全に防ぐことが難しい場合、GPSの活用は非常に効果的な対策となります。認知症患者の位置をリアルタイムで把握できるGPSデバイスを活用することで、本人が徘徊して家の外に出た場合でも、すぐに居場所を特定し、早期に発見することが可能です。GPSデバイスは、靴や衣服に装着できるタイプもあり、本人が嫌がらずに常に身につけていることができます。

また、スマートフォンや携帯電話に搭載されたGPS機能を利用して、家族や介護者が常に位置情報を確認できるように設定することも一つの方法です。これにより、徘徊が発生した際にもすぐに対応でき、事故や行方不明のリスクを大幅に低減させることが可能です。

GPSの活用は、特に一人で外出する機会が多い認知症患者にとっては非常に有効な対策となります。日頃から位置情報を確認できる状態にしておくことで、家族や介護者も安心して生活を送ることができるでしょう。

適度な運動習慣をつける

徘徊を予防するためには、適度な運動習慣をつけることも重要です。認知症患者が日中に適度な運動を行うことで、身体の疲労感が増し、夜間に安定した睡眠を取れるようになります。これにより、夜間の徘徊の頻度を減らす効果が期待できます。

適度な運動には、散歩やラジオ体操、室内でできる軽い運動などが含まれます。運動によって体力を適度に消耗させることで、徘徊するエネルギーや衝動が抑えられるだけでなく、認知機能の維持にもつながることが多いです。さらに、運動はストレスの軽減や気分転換にも寄与し、心理的な徘徊の原因を減少させる効果も期待できます。

また、運動は日常生活のリズムを整える上でも重要です。規則正しい生活習慣を維持することで、昼夜の区別がつきやすくなり、夜間の活動を抑制することができます。日中の運動を習慣化することで、徘徊が発生しにくい環境を作り出すことができるでしょう。

近隣地域と連携する

徘徊を予防し、発生時に迅速に対応するためには、地域との連携も欠かせません。徘徊は家族や介護者だけで対処するには限界があるため、周囲の住民や地域社会と協力することで、より安全な環境を作り出すことができます。

例えば、近所の住民に認知症の家族がいることを伝えておくことで、徘徊中に見かけた場合にすぐに知らせてもらうことが可能です。また、地域の見守りネットワークや自治体の徘徊防止サービスを活用することで、万が一、徘徊が発生しても迅速に対応できる体制を整えることができます。

さらに、地域のSOSネットワークに登録しておくことで、警察や地域の協力者が迅速に捜索に協力してくれるため、徘徊が発生しても早期に発見できる可能性が高まります。地域全体で協力し、見守りの仕組みを整えることが、徘徊予防の大きな支えとなるでしょう。

さくらリバースの紹介

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まとめ

徘徊は、特に認知症患者に見られる行動で、本人にとっては理由のある行動であっても、周囲にとっては危険や負担となる場合が多くあります。徘徊を予防するためには、家の出入口に工夫を加えたり、GPSを活用して常に位置情報を把握することが有効です。

また、日中に適度な運動を行い、生活リズムを整えることで、徘徊の発生を減らすことが期待できます。さらに、地域との連携も重要で、近隣住民や地域の見守りサービスを活用することで、徘徊が発生した際に迅速に対応できる体制を整えることが可能です。徘徊のリスクを理解し、適切な予防策を実践することで、本人と周囲の安心を守ることができます。

監修:市姫 久春
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師 株式会社さくらリバース 訪問鍼灸リハビリマッサージ事業部
   

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