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高齢者の脱水とせん妄の関係とは?症状や対処法を解説します

監修:市姫 久春
2025年05月01日
高齢者の脱水とせん妄の関係とは?症状や対処法を解説します
高齢者は体内の水分量が減りやすく、気づかないうちに脱水になってしまうことも。

脱水が進むと、せん妄と呼ばれる混乱した状態を引き起こすことがあり、早めの対策が大切です。

この記事では、脱水とせん妄のつながりや、見逃さないためのポイント、家庭でできる予防法について、わかりやすくお伝えします。
目 次

高齢者はなぜ脱水になりやすいのか

高齢者は若い頃に比べて、体の中の水分量が自然と減っていきます。
また、病気や食事の影響でさらに水分が不足しやすくなることもあります。

ここでは、高齢者が脱水になりやすい理由について、わかりやすく整理していきます。

加齢による体内水分の減少

年齢を重ねると、体の中に蓄えられる水分の割合が少しずつ減っていきます。

筋肉量が減少することも一因であり、筋肉は水分を多く含んでいるため、減ると自然と体内の水分量も減ってしまいます。

さらに、腎臓の機能も年齢とともに衰えます。腎臓は体内の水分バランスを保つ役割を持っていますが、その働きが弱くなると、体に必要な水分をうまく保てなくなります。

食事量の減少や疾患による水分不足

加齢に伴い、食欲が落ちたり、食事の量が減ったりすることも珍しくありません。

食事には水分が多く含まれているため、食事量が減ると自然に水分の摂取量も減少します。

また、持病による影響も無視できません。たとえば糖尿病や慢性心不全といった病気では、体の中の水分バランスが崩れやすくなります。さらに、下痢や発熱などが続くと、水分が一気に失われてしまうこともあり、注意が必要です。

基礎疾患や薬の影響

高齢者は、複数の病気を抱えていることが多く、さまざまな薬を常用している場合も多く見られます。

なかには利尿剤や血圧を下げる薬など、水分を体外に排出しやすくする薬もあります。

これらの薬の影響で、知らないうちに体の中の水分が減ってしまうことも少なくありません。

また、薬によって口の渇きを感じにくくなることもあり、脱水に気づきにくくなる要因となっています。

のどの渇きを感じにくくなっている

高齢者は、体内の水分が減っていても、のどの渇きを強く感じにくくなっています。これは、年齢とともに感覚機能が鈍くなることが原因です。

そのため、実際には脱水が進んでいても、「まだ大丈夫」と思い込んでしまい、必要な水分補給が遅れやすくなります。結果として、気づかないうちに脱水症状が悪化してしまうことがあるのです。

高齢者の脱水で起こりやすい「せん妄」とは?

脱水は体にさまざまな影響を与えますが、中でも見逃せないのが「せん妄」と呼ばれる意識の混乱です。

ここでは、脱水とせん妄の関係について、わかりやすく順番に整理していきます。

脱水がせん妄を引き起こす

高齢者は脱水が進むと、体だけでなく脳にも大きな負担がかかります。

体内の水分が不足することで、脳の働きが鈍り、意識の混乱や思考の低下が起こりやすくなります。このような状態が「せん妄」と呼ばれるものです。

せん妄は、突然大声を出したり、現実とは異なることを話したりするなど、普段とは違う行動として現れることもあります。早めに気づき、適切な対応をとることがとても大切です。

電解質のバランスと神経機能の乱れ

脱水によって問題となるのは、水分だけが減るわけではないという点です。

体内の塩分やミネラル、いわゆる「電解質」も一緒に失われてしまいます。

電解質は、神経が正しく働くために欠かせないものです。

バランスが崩れると、脳から体への指令がうまく伝わらず、意識障害や精神的な混乱が起こりやすくなります。

つまり、脱水によるせん妄の背景には、水分不足だけでなく、電解質の乱れによる神経機能の障害も大きく関係しているのです。

脱水とせん妄が招くリスク

脱水によってせん妄が起こると、自分で水分をとる判断ができなくなってしまうことがあります。

その結果、さらに脱水が進み、症状が悪化してしまうという悪循環に陥る危険性があります。

また、せん妄状態になると、転倒や事故などのリスクも高まります。

入院や介護が必要になるケースもあるため、脱水の予防と早期対応は、日常生活を守るうえでもとても重要です。

脱水によるせん妄の症状とは

脱水が進んでせん妄が起こると、さまざまな心と体の変化が現れます。

ここでは、特に注意しておきたい代表的な症状についてご紹介していきます。

睡眠・覚醒リズムの異常

せん妄が現れると、昼と夜の区別がつきにくくなり、睡眠や覚醒のリズムが乱れます。

夜中に興奮して目が覚めたり、昼間にぼんやりと過ごしたりすることが増えていきます。

このリズムの乱れは、脳の機能がうまく働かなくなっているサインでもあり、せん妄が進行している可能性を示しています。

時間や場所がわからなくなる(見当識障害)

脱水によるせん妄では、「今が何時なのか」「自分がどこにいるのか」がわからなくなる見当識障害も起こりやすくなります。

たとえば、夜中なのに朝だと思い込んで行動してしまったり、慣れた自宅内でも迷子になったりすることがあります。

時間や場所の感覚がずれてしまうため、行動にも危険が伴いやすく、周囲の注意とサポートが必要です。

幻覚や妄想

せん妄が進行すると、現実には無いものが見えたり、事実とは異なる思い込みをすることもあります。

たとえば「壁に虫がいる」「誰かに物を盗まれた」などと訴えることが典型例です。

幻覚や妄想が起きると、本人の不安が強くなり、周囲とのコミュニケーションにも支障をきたすことがあります。

急な性格変化や感情の不安定

これまで穏やかだった人が突然怒りっぽくなったり、逆に無気力になったりするなど、性格や感情が大きく揺れることもせん妄の特徴です。

理由もなくイライラしたり、涙もろくなったりする場合もあります。

こうした感情の不安定さは、脳の情報処理がうまくいかなくなっていることを示しており、早めの対応が求められます。

手の震えや歩行障害

せん妄が起きると、心だけでなく体にも影響が現れることがあります。

手が細かく震えたり、ふらついてまっすぐ歩けなくなったりすることがその例です。

特に高齢者の場合、転倒につながるリスクが高いため、動作の変化にも注意して見守ることが大切です。

高齢者の脱水とせん妄の予防法

脱水やせん妄は、正しい予防策を日常生活に取り入れることで、大きくリスクを減らすことができます。

ここでは、家庭でも無理なく取り組める予防のポイントをわかりやすくご紹介します。

水分と塩分のバランスを意識する

脱水を防ぐためには、単に水だけを飲むのではなく、体に必要な塩分(ナトリウム)も一緒に補うことが大切です。

汗をかいた後や、下痢・発熱があったときは特に注意が必要です。

経口補水液を活用すると、水分と電解質をバランスよく摂取できます。

市販のスポーツ飲料は糖分が多い場合があるため、体調や持病に応じた選び方が求められます。

カントン水(水500mlに天然塩4.5gを溶かしたもの)や、昆布茶や梅干し入りのお茶など、家庭でも手軽に塩分を補える工夫を取り入れると、無理なく続けられます。

こまめな水分補給を心がける

高齢者はのどの渇きを自覚しにくいため、渇きを感じる前から意識して水分をとることが大切です。

一度にたくさん飲むのではなく、少しずつ回数を分けてこまめに飲む習慣をつけましょう。

たとえば、食事の前後や外出前後、起床時や就寝前など、生活の節目に合わせて水分をとると無理なく続きます。

また、飲みやすい温度や好みの飲み物を選ぶと、自然に水分摂取量が増えていきます。

寝起きに枕元に用意しておく、ストロー付きの容器を使うなど、環境づくりも大切な工夫のひとつです。

食事からの水分摂取も大切にする

水分は飲み物だけでなく、食事からも摂ることができます。

特に、汁物や果物、野菜には多くの水分が含まれており、自然に補給できる貴重な源となります。

お味噌汁やスープ、煮物などは食欲がないときでも取り入れやすく、体を温めながら水分を摂取できるメリットもあります。

また、みずみずしい果物をおやつ代わりにするのもおすすめです。

普段の食事に、無理なく水分をプラスできる工夫を心がけることで、脱水予防につながります。

脱水によるせん妄の対処法

もし高齢者に脱水によるせん妄が起こった場合、早めに適切な対応を取ることがとても大切です。

ここでは、実際にどのように対処すればよいか、わかりやすくポイントを整理してご紹介します。

まずは症状のタイプを見極める

脱水と一口にいっても、水分だけが不足している場合と、塩分も同時に失われている場合とがあります。

まずは、症状の出方をよく観察し、どちらのタイプなのかを見極めることが重要です。

のどの渇きや体温上昇が目立つ場合は水分不足が中心ですが、頭痛や意識がもうろうとしている場合は塩分不足も疑われます。

自己判断が難しい場合は、無理をせず医師に相談することが安心です。

経口補水液や点滴など適切な水分補給を行う

脱水症状が軽い場合は、経口補水液で水分と塩分をバランスよく補給します。

経口補水液が苦手な方には、予防法と同じくカントン水(水500mlに天然塩4.5gを溶かしたもの)や梅干し入りのお茶など、塩分を適度に含んだ飲み物を活用する方法もあります。

もし、すでにせん妄が現れている場合や、本人が水分をうまく摂れない場合には、早めに医療機関を受診し、点滴による補水を受けることが必要です。

無理に水分を飲ませようとせず、本人の様子を見ながら対応しましょう。

病院受診のタイミングと注意点

せん妄の兆候が見られたら、迷わず医師の診察を受けることが大切です。

意識がぼんやりしている、会話が成り立たない、手足が震えるなどの症状が出ている場合は、早急な対応が求められます。

また、本人が水分補給を拒否している場合や、ぐったりしているときは、自己判断せずに速やかに受診しましょう。

病院では、脱水の程度に応じた適切な治療を受けることができます。

さくらリバースの紹介

わたしたち「さくらリバース」では、専門知識を持つスタッフがご自宅や滞在先へ伺い、お一人おひとりに寄り添ったリハビリやケアを心がけております。

身体機能の維持だけでなく、心の安定にも目を向けながら、穏やかな生活を少しでもサポートできればと願っております。

「どのようなサポートを受けられるのか知りたい」「自宅でのケアに不安がある」と感じている方は、どうぞお気軽にご相談ください。

まとめ

高齢者にとって脱水は、気づかないうちに進行し、せん妄といった心身の不調につながることもあります。

ですが、日常の小さな工夫や心配りによって、リスクを大きく減らすことができます。

こまめな水分補給や体調の変化への気づきは、ご本人だけでなく、ご家族や周囲の支えがあってこそ続けられるものです。

無理のない範囲でできることから、少しずつ取り入れていくことが大切です。

監修:市姫 久春
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師 株式会社さくらリバース 訪問鍼灸リハビリマッサージ事業部
   

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