脱水症とは?
脱水症とは、体内の水分や電解質が不足し、生命を維持するための体液のバランスが崩れた状態を指します。体液は、体温調節や栄養分の運搬、老廃物の排出など、重要な役割を担っています。
体液の約60%は水分で構成されており、体内の水分量が適切に保たれることが健康維持の鍵です。しかし、発汗、嘔吐、下痢などにより体液が急激に減少したり、水分補給が不十分な場合に脱水症が引き起こされます。
脱水症の危険性
脱水症は、単に水分不足というだけでなく、体の各機能に重大な影響を及ぼします。血液が濃縮されて流れにくくなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。
特に高齢者は脱水症状に気づきにくく、症状が進行する前に適切な対応が求められます。放置すると、意識障害や痙攣、最悪の場合命に関わる事態に陥る可能性もあるため、早期の予防と対策が重要です。
高齢者の熱中症と脱水症の関係
高齢者にとって、熱中症と脱水症は密接に関連しています。加齢に伴い、体内の水分量が減少し、体温調節機能が低下するため、特に夏場や高温多湿の環境下でこの二つの症状が連鎖的に発生することが多くなります。
以下では、熱中症と脱水症の関係について詳しく解説し、高齢者が抱えるこれらのリスクにどのように対処すべきかをご紹介します。
熱中症が引き金になるリスク
熱中症の発症には、脱水症が大きく関与しています。脱水状態になると、体内の水分や電解質が不足し、体温を調整する能力が低下します。高齢者はもともと体温調節機能が弱まっているため、暑い環境下では特に注意が必要です。
軽度の脱水が進行することで、熱中症を引き起こす可能性が高くなります。熱中症は放置すると、脳や心臓に負担をかけ、重症化する危険性があります。
熱中症による高齢者死亡数の推移
統計によると、熱中症による高齢者の死亡数は年々増加傾向にあります。高齢者の体温調節機能や汗をかく機能の低下が、熱中症による死亡リスクを高めています。
例えば、2020年には1,528人が熱中症で死亡しており、そのうちの86.1%が65歳以上の高齢者でした。2021年も同様に、755人の死亡者のうち641人が65歳以上です。このように、高齢者は特に熱中症のリスクが高いことがデータからも明らかです。
熱中症になりやすい高齢者の特徴
高齢者は年齢を重ねることで、体の機能が次第に衰え、特に体温調整機能や体内の水分保持能力が低下します。これにより、熱中症や脱水症のリスクが若年層に比べて著しく高まります。
また、慢性的な疾患や薬の服用などが影響して、体
体温調整機能の低
年齢を重ねると、体温を調整する機能が低下します。具体的には、外気温の変化に対して体が適応する能力が衰えるため、気温が上がった際に体内の熱をうまく放出できなくなります。
特に高齢者は、暑さを感じにくくなり、エアコンを使用しなかったり、外出中に体温が過度に上昇しても気づかないことが多く、これが熱中症のリスクを高める要因となります。
体内の水分量の減少
高齢になると、体内の水分量が減少します。若いころは体の約60~70%が水分で構成されていますが、高齢者になるとその割合は50%程度にまで低下します。
この結果、少量の水分の喪失でも脱水状態に陥りやすくなり、体の熱を効果的に調節できなくなります。特に夏場の暑さによる発汗や、日常的な尿や呼吸による水分の排出が続くと、熱中症に繋がりやすくなります。
筋肉量の減少
筋肉は体内の水分を貯蔵する役割を果たしていますが、高齢になると筋肉量が減少するため、水分を保持する能力が低下します。筋肉量が少なくなることで、体内での水分バランスが乱れやすく、さらに汗をかいたり尿を排出することで脱水が進行し、熱中症のリスクが高まります。日常的な運動不足や加齢に伴う筋力の衰えが、この問題を助長します。
慢性疾患や薬の影響
多くの高齢者は、糖尿病や心臓疾患、腎臓病といった慢性疾患を抱えており、これらが体の水分バランスに悪影響を及ぼすことがあります。
また、利尿剤や血圧降下薬などの薬を服用している場合、これらの薬の副作用として水分や電解質が体外に排出されやすくなり、脱水症や熱中症の原因となります。特に多種類の薬を服用している場合は、体内の水分量に対する注意が必要です。
喉の渇きを感じにくくなっている
高齢者は、若いころに比べて喉の渇きを感じにくくなる傾向があります。これは、口渇中枢と呼ばれる喉の渇きを感じ取る脳の機能が低下しているためです。その結果、体が水分を必要としているにもかかわらず、飲み物を摂ることを忘れてしまったり、摂取する水分量が少なくなることがよくあります。このため、家族や介護者が積極的に水分摂取を促すことが必要です。
脱水症の初期症状
脱水症は、症状が進行する前に対処できるかどうかが、健康への影響に大きな差を生じさせます。初期段階で気づけるポイントや、軽度の症状への適切な対処法を知っておくことが非常に重要です。次に、症状が進行した場合に医療的対応が必要となる状況についても詳しく解説します。
脱水症のチェックシート
脱水症の初期症状を早期に発見するためのチェックシートは、高齢者の健康管理に役立ちます。以下の項目を確認し、いくつか該当する場合は脱水症のリスクが高まっている可能性があるため、すぐに水分補給や適切な対応を行いましょう。
脱水症の兆候チェックリスト
・口の中が乾燥している
唇や舌が乾燥している、または唾液が少ないと感じる。
・トイレの回数が減っている
普段よりもトイレの回数が少なくなっている。
・尿の色が濃くなっている
尿の色が通常よりも濃く、黄褐色や茶色っぽい色をしている。
・便秘気味である
最近、便秘の傾向があり、排便が少ない。
・体がだるい、なんとなく元気がない
だるさや疲労感を感じ、以前ほど活力がない。
・皮膚が乾燥している
肌がかさついている、または触ったときに乾燥していると感じる。
・汗をかきにくくなっている
暑い環境でもあまり汗をかかなくなった。
・めまいや立ちくらみを感じることがある
急に立ち上がった時にふらついたり、めまいを感じることが増えた。
・食欲が低下している
最近、食欲がなくなり、食事の量が減っている。
・体重が急に減少した
特に意識していないのに、体重が急激に減少している。
2つ以上の項目が当てはまる場合: 脱水症の可能性があるため、すぐに水分を補給し、様子を見てください。経口補水液を活用すると効果的です。複数の項目が該当し、症状が改善しない場合: 医療機関に相談し、適切な治療を受けることをおすすめします。
脱水症の適切な対処法
脱水症状の段階別に適した対処法と、注意すべきポイントについて詳しく解説していきます。
軽度な場合
脱水症の対処法は、症状の重さによって異なります。特に高齢者は、軽度の脱水症状を見逃すと、急速に症状が悪化することが多いため、適切な対応が重要です。ここでは、軽度の場合の対処法や注意点、そして医療的対応が必要な場合について詳しく解説します。
軽度の対処法と注意点
- 水分と電解質の補給
軽度の脱水症状が見られる場合、最初に行うべきは、こまめな水分補給です。水やお茶を摂取するのも有効ですが、発汗や下痢・嘔吐があった場合は、単に水分だけでは不十分なことがあります。そのため、電解質を含むスポーツドリンクや経口補水液(ORS)の摂取が理想的です。
経口補水液は、塩分と糖分がバランスよく含まれており、失われた水分や電解質を効率よく補えます。軽度の脱水症の場合、この補給によって症状が改善されることが多いです。これは自家製でつくるのもおすすめです。
自家製経口補水液の作り方
市販のものが手に入らない場合、水500mlに対して砂糖(上白糖では無い、黒糖・きび糖・甜菜糖などがおすすめです)20gと天然塩1.5gを加え、よくかき混ぜて自作することも可能です。 - 定期的な水分摂取
脱水症状が軽度の場合でも、のどの渇きを感じたら即座に水分を摂るよう心掛けます。特に高齢者はのどの渇きに気づきにくいことがあるため、時間を決めて水分補給をすることが大切です(例:起床時、食事前後、入浴前後、就寝前など)。 - 水分補給の量と頻度
一度に大量に飲むのではなく、少量をこまめに摂取することが効果的です。過度な摂取は胃に負担をかけ、逆に体内への吸収が遅れることもあるため、注意が必要です。
医療的な対応が必要な場合
軽度の脱水症状に対応できない場合、症状が悪化すると医療機関での対応が必要になります。以下のような症状が見られた場合は、速やかに医師の診察を受けるべきです。
- 中度~重度の脱水症状のサイン
・頭痛や吐き気
脱水症状が進行すると、頭痛や吐き気、また血圧の低下が見られます。この場合は、経口補水液だけではなく、さらに多くの水分を摂取する必要がありますが、嘔吐がある場合は口からの補給が難しいこともあるため、医療的な処置が求められます。
・意識障害や反応の鈍さ
重度の脱水症状では、意識がもうろうとしたり、反応が遅くなるなどの症状が現れることがあります。これらの症状が見られる場合は、緊急対応が必要です。
- 点滴などの処置が必要なケース
重度の脱水症になると、口からの水分補給が難しくなります。この場合、病院での点滴による水分や電解質の補充が必要です。意識を失ったり、痙攣を起こしたりしている場合は、命に関わる緊急事態であるため、迅速に医療機関を受診することが求められます。
脱水症は、糖尿病や心筋梗塞など他の病気を引き起こす引き金にもなり得るため、早期発見と対処が極めて重要です。
脱水症を防ぐための予防習慣
脱水症は高齢者にとって深刻なリスクをもたらしますが、日々の習慣や予防策を取り入れることで未然に防ぐことが可能です。ここでは、毎日の水分補給の重要性や、温度・湿度管理、そして運動時に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
水分補給の習慣
高齢者はのどの渇きを感じにくくなるため、意識的に水分補給を行うことが必要です。通常、1日に必要な水分量は体重1kgあたり40mlが目安とされており、例えば体重60kgの方であれば約2.4リットルの水分が必要です。水分をこまめに摂取する習慣をつけることで、脱水症のリスクを大幅に軽減できます。
起床時、食事の前後、入浴前後、就寝前など、決まったタイミングで水を飲む習慣をつけましょう。水だけでなく、スープ、フルーツ、ゼリーなど水分を含む食べ物も有効です。特に高齢者の場合、食欲の低下が見られることも多いため、飲み物以外からも水分を摂取できる工夫が大切です。
カフェインの入っているもの(コーヒー、紅茶、緑茶など)は、利用作用により、逆に水分不足を引き起こす可能性があるので、注意してください。
軽い運動や散歩の際にも水分補給を忘れず行いましょう。特に高齢者は、のどが渇いていなくても汗をかきやすく、体内の水分が失われていることがあります。運動前後はもちろん、途中でもこまめに水分を摂取することが重要です。
温度・湿度管理
室内の温度と湿度を適切に保つことも、脱水症の予防に欠かせません。特に夏場や寒い冬は、空調や加湿器を利用して快適な環境を維持することが大切です。
温度管理: 夏場は28度以下、湿度は50~60%が理想的です。また、冬でも乾燥による脱水症のリスクがあるため、加湿器や濡れタオルを利用して湿度を保つよう心がけましょう。
さくらリバースの紹介
さくらリバースでは、ご自宅やお住まいの場所にて快適にケアを受けられるサービスをご提供しております。お体の不調や慢性的な痛み、運動機能の改善など、お一人お一人の状態に合わせた施術を行い、皆さまの健康的な生活をサポートさせて戴きたいと思っております。何かありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
高齢者は体内の水分量が若年者に比べて少なく、喉の渇きを感じにくいことや、生活習慣、服用している薬などの影響で脱水症になりやすい傾向があります。脱水症は放置すると脳梗塞や心筋梗塞といった深刻な健康問題を引き起こすことがあります。
予防には、こまめな水分補給が重要です。特に高齢者においては、定期的な水分補給を心がけ、エアコンや加湿器を適切に活用して快適な室内環境を保つことも必要です。また、経口補水液(自作も可)を活用することで、水分だけでなく塩分や電解質も効率的に補給することが可能です。
脱水症のチェックリストを活用し、早期発見と対策を行うことで、脱水症のリスクを大幅に低減させることができます。家族や介護者も積極的に水分補給を促し、高齢者の健康をサポートすることが大切です。