認知症と物忘れの違いは?
「物忘れ」と「認知症」は、症状が似ているため混同されやすいですが、根本的に異なるものです。それぞれの特徴を解説します。
認知症
認知症は、脳の病気によって記憶や判断力が低下し、生活に大きな影響を及ぼします。特に体験した出来事そのものを完全に忘れることが特徴です。
認知症は進行性であり、時間とともに症状が悪化します。最初は単なる記憶障害のように見えても、次第に判断力や実行力が低下し、日常生活に支障をきたします。
物忘れ
物忘れは、加齢による自然な現象であり、病的なものではありません。特徴的なのは、体験そのものは覚えているが、その一部を思い出せない点です。
物忘れは進行性ではなく、日常生活に大きな影響を与えることはありません。記憶の「思い出す力」が低下しているだけなので、ヒントを与えられると記憶を呼び起こせることが多いです。対処法として、メモを取る、スケジュールを活用するなど、習慣を取り入れることで十分に対応できます。
認知症の症状
認知症には、大きく分けて「中核症状」と「周辺症状」があります。
- 中核症状
中核症状は、脳の障害によって引き起こされる基本的な症状です。認知症の人には誰にでも見られる症状で、以下の特徴があります。
- 記憶障害
新しいことを覚える力が著しく低下し、体験した出来事そのものを忘れます。例えば、食事をしたことを忘れ、「まだ食べていない」と主張することがあります。 - 判断力や実行力の低下
簡単な家事や買い物、計画的な行動が困難になります。料理の手順を忘れる、電化製品の操作ができなくなるといったことが起こります。 - 見当識障害
時間や場所、人を正しく認識できなくなります。例えば、現在の年月日がわからなくなったり、慣れ親しんだ場所で迷子になったりします。 - 周辺症状
周辺症状は、中核症状に伴って現れる感情や行動の変化を指します。本人の性格や生活環境によって異なりますが、以下のような症状が現れることがあります。 - 感情の変化
怒りっぽくなる、不安感が増す、些細なことでイライラするなどの変化が見られます。 - 無気力・無関心
好きだった趣味に興味を示さなくなり、身支度をする気力さえなくなる場合があります。 - 妄想や幻覚
家族や介護者を疑ったり、見えないものが見えるように感じたりすることがあります。
老化による物忘れの症状
加齢に伴う物忘れは自然な現象であり、記憶力が一時的に低下することがあります。この場合、日常生活に大きな支障はなく、本人も忘れていることを自覚しているのが特徴です。
例えば、「どこに眼鏡を置いたか思い出せない」「昨日の夕食のメニューを思い出せない」といった症状が典型的です。ただし、体験そのものは覚えているため、ヒントを与えられると記憶が蘇ることが多いです。
老化による物忘れは、脳の自然な老化による記憶の「思い出す力」の低下が原因で、日常生活に大きな影響を与えることはありません。
認知症と物忘れの見分け方
認知症と物忘れは似たような症状が見られるため、見分けるのが難しいことがあります。しかし、いくつかの重要なポイントに注目することで判断する手助けとなります。
忘れる内容・範囲
認知症と物忘れを見分ける上で、記憶の範囲は最も重要なポイントです。
認知症
体験そのものを忘れてしまうのが特徴です。例えば、食事をした記憶が完全に抜け落ちてしまい、「まだ食べていない」と繰り返し訴えることがあります。さらに、友人と会ったことや約束した内容をすっかり忘れ、「そんなことはしていない」と否定する場合もあります。このように、体験そのものが記憶から消えてしまうのが認知症の大きな特徴です。
物忘れ
体験そのものは覚えているものの、その一部や細かい内容を思い出せないだけです。例えば、「買い物に行ったことは覚えているが、何を買う予定だったか忘れてしまう」といった状況が典型的です。また、重要な出来事については断片的にでも記憶に残っており、ヒントがあれば思い出せることが多いのが物忘れの特徴です。
自覚・進行の有無
忘れたことへの自覚や、症状の進行具合は、認知症と物忘れを区別する大きな手掛かりとなります。
認知症
忘れていることに対する自覚がありません。そのため、周囲の人から指摘されても「そんなことはしていない」と否定したり、周囲の説明を受け入れることが難しい場合があります。さらに、認知症は進行性で、時間が経つにつれて記憶力だけでなく判断力や実行力も低下し、日常生活に大きな支障をきたします。例えば、料理や買い物といった基本的な行動が難しくなることがあります。
物忘れ
「あれ、忘れてしまった」と自分で気づくことができ、忘れたことへの自覚があります。例えば、眼鏡の置き場所を忘れても「どこかに置き忘れたな」と考え、探そうとする行動が見られます。また、ヒントや助言を受けることで、「ああ、そうだった」と記憶を呼び起こせることが多く、症状が進行することはありません。
感情の変化
認知症と物忘れでは、感情や性格の変化にも大きな違いがあります。
認知症
記憶障害だけでなく感情や性格にも変化が現れることがあります。例えば、怒りっぽくなったり、不安感が増すといった情緒の変化が見られます。また、以前は楽しんでいた趣味や活動への関心が薄れ、何事にも興味を示さなくなることも少なくありません。こうした感情や性格の変化は、周囲の人に「性格が変わった」と感じられることが多く、認知症の兆候として気づかれる場合があります。
物忘れ
感情や性格に大きな変化はほとんど見られません。忘れることはあっても、普段通りの気分や態度で生活を送ることができます。例えば、趣味を楽しんだり、社交的な態度を維持したりすることが可能で、周囲が大きな違和感を抱くことはありません。
物忘れを改善するために
物忘れは加齢とともに自然に起こる現象ですが、日常生活の工夫によって改善することが可能です。
ここでは、物忘れを軽減するための具体的な方法を紹介します。
適度な運動
運動は脳への血流を改善し、神経細胞を活性化させる効果があります。特に有酸素運動やレジスタンス運動は脳の働きをサポートします。ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、無理なく続けられる運動がおすすめです。さらに、スクワットや腕立て伏せなど、筋肉に適度な負荷をかける運動は認知機能の向上にも役立ちます。
特に、日常生活に取り入れやすい「ながら運動」が効果的です。たとえば、散歩をしながら簡単な計算や単語を思い出すといった活動は、脳と体を同時に鍛えることができます。運動を続けることで、物忘れを軽減するだけでなく、全身の健康も向上します。
バランスの良い食事
食事は脳の健康に直結します。DHAやEPAを多く含む青魚(サバ、イワシ、サンマ)は、脳細胞の働きをサポートし、認知機能の低下を予防するとされています。さらに、抗酸化作用のある食品(緑黄色野菜、果物、ナッツ類)を積極的に摂取することも重要です。これらの食品は脳の老化を抑え、記憶力を保つのに役立ちます。
また、緑茶や赤ワインに含まれるカテキンやポリフェノールは、脳の神経細胞を保護する効果があります。一方、糖質や塩分、トランス脂肪酸を多く含む食品は、血流を悪化させ脳に負担をかける可能性があるため、控えめにすることが推奨されます。食事の時間や量にも注意し、規則正しい食生活を心がけましょう。
コミュニケーションをとる
人とのコミュニケーションは、脳の活性化に欠かせません。会話を通じて新しい情報を受け取ったり、意見を共有したりすることで、記憶力や注意力を刺激します。家族や友人との日常的な会話はもちろん、趣味のサークルや地域のイベントに参加するのも効果的です。
新しい人との交流や、普段の生活とは異なる環境でのコミュニケーションは、脳に刺激を与えます。また、笑いが生まれるような会話は、脳内のストレスホルモンを減少させ、ポジティブな影響をもたらします。電話やオンラインでの交流も、忙しい日常に取り入れやすい方法です。
しっかりとした睡眠
良質な睡眠は、記憶の整理と定着に重要な役割を果たします。特に、深いノンレム睡眠中には、脳が一日の情報を整理し、重要な記憶を固定する働きがあります。一般的に、6~8時間程度の睡眠時間が推奨されており、毎日同じ時間に寝起きする規則的な生活リズムを維持することが重要です。
睡眠の質を向上させるためには、就寝前の習慣を見直すことがポイントです。寝る1~2時間前に38~40℃程度の温かいお風呂に入り、体温が徐々に下がるタイミングで布団に入ると、スムーズに眠りにつきやすくなります。また、スマートフォンやテレビのブルーライトを避け、リラックスできる環境を整えることも大切です。
朝は日光を浴びることで体内時計を整え、夜に自然と眠くなるサイクルを作りましょう。日中に軽い昼寝を取り入れるのも、脳の疲労を回復させるのに効果的です。ただし、昼寝は20~30分程度にとどめましょう、長時間の昼寝は夜の睡眠を妨げる可能性があるため注意が必要です。
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まとめ
認知症と物忘れには、記憶の範囲や自覚の有無、日常生活への影響といった明確な違いがあります。認知症は体験そのものを忘れ、自覚がなく進行性であるのに対し、物忘れは体験の一部を思い出せないだけで進行しません。
物忘れを改善するには、適度な運動やバランスの良い食事、コミュニケーション、質の良い睡眠が効果的です。不安があれば早期に医療機関を受診することが重要です。
