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寝たきりで筋力低下しまう前に!廃用症候群の予防法やリハビリについて解説します。

監修:森田 進
2024年04月08日
寝たきりで筋力低下しまう前に!廃用症候群の予防法やリハビリについて解説します。
寝たきりによるリスクを待たずに、今からできる廃用症候群の予防と対策について、その原因とリハビリ方法を解説します。

健康な毎日を支えるために、運動不足の解消と食生活の見直しがいかに大切か、具体的なリハビリのポイントと共に紐解いていきましょう。
目 次

廃用症候群とは?

廃用症候群とは、長期間の活動不足や寝たきり状態によって引き起こされる状態を指し、筋力の低下や関節の可動域の制限、全身の機能の低下などが見られる事を言います。特に高齢者や病気の方に影響が大きく、日常生活に支障をきたすことがあります。

筋力の低下や関節の制限は、活動不足によって筋肉や組織が弱くなるために起こります。これにより、日常生活動作が難しくなり、生活の質が低下することがあるのです。また、関節の可動域が制限されると、動作の幅が狭まってしまい、身体の柔軟性が低下します。

そして廃用症候群は、身体的な機能の低下だけでなく、精神的な影響もあります。活動不足や寝たきりによって自立心ややる気が低下し、うつ症状や社会的孤立感が生じることもあります。

廃用症候群の原因

寝たきり状態や長期間の安静によって起こる廃用症候群は、筋力の低下だけでなく、骨密度の低下や心肺機能の衰えといった様々な健康問題を引き起こします。怪我や病気の回復期間が予想以上に長引いたり、日常生活における運動不足で徐々に体力が落ちて行く事も、この症候群の進行要因となり得ます。

これら複数の要因が組み合わさることで廃用症候群がさらに進行してしまうのを防ぐには、その原因を正確に理解し、適切な行動を取ることが重要です。 次からは主な原因をご説明して行きます。

運動量の減少

廃用症候群の主な原因の一つとして、運動量の減少があげられます。普段私たちの体は、日常生活の中で無意識にさまざまな運動を行っており、それが筋力を維持するうえで欠かせない要素となっています。しかし、怪我や病気、高齢などの理由で動く機会が奪われると、筋肉は使われることなく、徐々に衰え始めます。 特に、長時間の座位や寝たきり状態が続くことにより、運動不足が慢性化してしまいがちです。その結果、筋力だけでなく、関節の可動域も狭まり、日常動作に必要な筋肉の機能までもが低下するリスクが高まります。

過度な安静状態

病気の治療過程で医者から安静を指示されることがありえますが、過度な安静状態も廃用症候群の原因となりうるのです。例えば、骨折や手術後などで動けない期間が必要な場合、その期間が長期間に及ぶと、筋肉は急速に衰えていくでしょう。これは安静によって筋肉が受ける負荷が著しく減少するため、筋繊維が萎縮してしまうためです。 また、血流の低下も見逃せない問題となり、免疫力の低下や、深部静脈血栓などのリスクも生じてきます。

では、どうすればこれらの原因を解消していくのか、予防法は次をご覧ください。

廃用症候群の症状

廃用症候群では、長期間の不活動によって全身のさまざまな器官に変化が現れます。これらの変化は、筋骨格系、循環器・呼吸器系、精神・神経系などに広がり、互いに影響し合いながら日常生活の自立度を低下させていきます。

筋骨格系

筋骨格系では、筋力低下や筋萎縮が最も顕著に表れます。安静が続くと、1週間で約1〜2割、3〜5週間で約半分の筋力が低下するとされ、特に姿勢保持や歩行に関わる筋肉で進行しやすい傾向があります。

また、動かさない状態が続くことで骨の吸収が進み、骨密度が低下して骨粗しょう症が起こりやすくなります。さらに、関節周囲の筋肉や靭帯が硬くなることで、関節可動域が狭くなる関節拘縮も発生します。

これらの症状は、低栄養や薬剤治療の影響が重なると進行しやすくなるため、早期からの運動やリハビリが重要です。

循環器・呼吸器系

循環器系では、活動量の低下によって血液循環が弱まり、心臓や血管の働きが低下します。その結果、起立性低血圧によるめまいや失神、持久力の低下、倦怠感が起こりやすくなります。特に下肢の筋肉を動かさないことで血液の戻りが悪くなり、静脈に血栓ができやすくなることもあります。

呼吸器系では、胸や横隔膜を動かす筋肉が弱まり、肺活量や換気量が減少します。さらに、長期間仰向けで過ごすことで痰が排出されにくくなり、細菌感染のリスクが高まります。

こうした変化は、呼吸機能を低下させるだけでなく、感染症や肺炎を引き起こす原因にもなるため、こまめな体位変換や深呼吸の習慣づけが大切です。

精神・神経系

精神・神経系では、体を動かさない時間が長くなることで脳への刺激が減り、感情や思考の働きが鈍くなります。

活動量の低下は社会的な関わりの減少を招き、意欲や集中力の低下、うつ症状、感情の平坦化などを引き起こします。さらに、時間や場所の感覚が乱れることで見当識障害が起こり、睡眠のリズムが崩れやすくなります。

重度になると幻覚や妄想が現れることもあり、せん妄状態に至る場合もあります。これらの精神的変化は身体機能の低下と密接に関係し、互いに悪循環を生み出します。そのため、身体を動かすだけでなく、会話や趣味などを通じて脳を刺激することが、廃用症候群の予防や改善において欠かせません。

廃用症候群の早期発見とチェックポイント

廃用症候群は、一度進行すると悪循環を起こしやすいため、早期に気づくことがとても重要です。厚生労働省では「生活不活発病チェックリスト」を活用し、体力や気力の低下、疲れやすさといった初期サインを見逃さないことを呼びかけています。
参考:厚生労働省

日常生活でのチェック項目

日常生活の中で活動量の変化に気づくことが、廃用症候群の早期発見につながります。
厚生労働省の「生活不活発病チェックリスト」では、次のような項目が確認ポイントとされています。

主なチェック項目

□ 以前は遠くまで一人で歩けていたのが、近くまでしか行けなくなった
□ 一人で歩けていたのが、家具や壁を伝いながら歩くようになった
□ 着替えや食事、入浴などで不自由を感じるようになった
□ ほぼ毎日外出していたのが、週1回以下に減っている
□ 動いている時間が減り、座っている・横になっている時間が増えた
□ ふらつきや転倒の危険を感じる場面が増えた

これらのうち一つでも以前より低下が見られる場合は、早めに保健師や医療機関へ相談することが大切です。

家族が気づくべきサイン

廃用症候群は本人が自覚しにくいことも多く、家族や周囲の観察が早期発見の鍵になります。

身体面の変化

□ 立ち上がりが遅くなる、手を使うようになる
□ 歩幅が狭くなり、転倒しやすくなる
□ 外出を嫌がるようになる
□ 循環・呼吸・睡眠の変化
□ 息切れや立ちくらみを訴える
□ 昼間にうとうとする時間が増える
□ 夜の眠りが浅く、途中で目が覚めやすい

精神面の変化

□ 興味や意欲が低下している
□ 趣味や会話への関心が薄れる
□ 人との交流を避けるようになる

こうした「体力低下」「気力低下」「易疲労性」のサインを早めに見つけることが、症状の進行を防ぎ、回復を早める第一歩となります。

廃用症候群の予防法

自立した日常生活を困難にしてしまう廃用症候群は、健康寿命を縮める原因にもなります。この症候群を未然に防ぐためには、日常的な予防策を積極的に取り入れることが不可欠です。予防策は、適度な運動やバランスの取れた食事、身体を使う日常生活動作の継続など、生活習慣の見直しから始まります。 早い段階で予防法を実践し、健康な身体を維持することが重要です。詳しくは次から述べていきます。

体を動かす機会を作る

廃用症候群の予防には、体を定期的に動かす習慣をつけることがとても大切です。長時間同じ姿勢でいることは筋肉の衰えを促進しますから、こまめに立ち上がる、伸びをする、短い散歩をするなどの動作を心がけてください。また、趣味を通じて無理なく体を動かすことも効果的です。

例えばガーデニングやダンス、水泳など楽しみながら行える運動は続けられる可能性が高くなります。 週に何回かは筋トレなどで筋肉を鍛えるようにすると、筋力の維持・向上につながります。自宅でできる簡単な運動から始めて、徐々に運動習慣を身につけていきましょう。どうしても運動が苦手な方は、マッサージや整体なども「体を動かす」事になりますので、そのような方法を取ることも得策です。

食事を改善する

廃用症候群を予防するためには、運動だけでなく食事の見直しも欠かせません。特に、筋肉の元となるたんぱく質やビタミン、ミネラルを十分に摂取することが重要です。たんぱく質は卵や豆製品から、ビタミンは肉料理や野菜料理、青汁などから、ミネラルは、麦茶やルイボスティーなどのお茶が比較的簡単に摂取ができ、おすすめです。

また、食事のタイミングも重要ですので、一日に何回食事をするかは、自分の心と体が心地よいと感じる食べ方をするようにしましょう。 食事は身体を作る基盤となるため、健康を維持するためにも栄養バランスには十分な注意が必要です。運動と食事の両面から予防策を取り入れることで、廃用症候群のリスクを低減し、健康な身体を維持することができます。

良肢位を保持する

良肢位とは、関節や筋肉への負担を最小限に抑えた姿勢のことで、関節拘縮の予防に欠かせません。

ベッドで過ごす時間が長くなる場合でも、クッションや枕を使って体を支え、適切な姿勢(ポジショニング)を保つことで、関節への圧力を和らげることができます。肩は軽く外に開き、体幹は脇を少し開けた姿勢が理想的です。

こうした良肢位を意識することで、床ずれやむくみ、呼吸のしづらさを防ぎ、筋肉の緊張を和らげる効果も期待できます。

また、定期的に体の向きを変えたり、関節をゆっくり動かしたりすることも重要です。姿勢を整える工夫とストレッチを組み合わせることで、より快適で健康的な状態を保てるでしょう。

早期離床

早期離床とは、手術後や病気の回復期に、できるだけ早く起き上がったり座ったりすることで、体の回復を促すリハビリの一環です。

長く横になったままの状態が続くと、筋力や呼吸機能が低下し、廃用症候群のリスクが高まります。早い段階での離床は、血流の改善、褥瘡や関節拘縮の予防、嚥下機能の維持などに効果があり、回復を早めることが知られています。

座位や立位になることで呼吸もしやすくなり、痰の排出を助ける効果もあります。体調を見ながら少しずつ活動範囲を広げていくことが、身体機能の回復につながるでしょう。

リハビリのポイント

リハビリテーションは、寝たきりや廃用症候群などの予防において重要な役割を果たします。特に、筋力低下などの問題を抱えている場合、適切なアプローチが求められます。不適切なリハビリは逆効果になることもありますので、正しい知識とアプローチが必要です。 続いて述べるポイントを押さえることで、効果的なリハビリテーションを実施し、身体機能の維持や向上を図ることができます。

本人が前向きになるようにサポートする

リハビリを行う上で、本人のモチベーションを保つことは非常に重要です。廃用症候群から回復するには、長期間にわたる努力が不可欠です。そのため、本人がリハビリに前向きな気持ちを持てるように、サポートすることが欠かせません。小さな進歩に対して積極的にほめたり、目標を具体的に定めることで、本人のやる気を高めることができます。

また、リハビリの成果を視覚的に示すことも効果的です。家族や友人が積極的に関わり、応援することで、本人の回復に大きく貢献します。リハビリは体力的、精神的に負担が大きいため、より良いサポートが本人の回復につながるのです。そのため、専門家や支援者が本人を励まし、支えることがとても重要なのです。これらの取り組みにより、本人のモチベーションが維持され、効果的なリハビリが実現されます。

適切な道具を揃える

効率的で安全なリハビリを実施するためには、適切な道具の準備が欠かせません。廃用症候群で衰えた機能を取り戻すには、筋力を強化したり、関節の可動域を広げたりするための道具があると、より効果を実感しやすくなります。リハビリ用のマット、軽量で握りやすいダンベル、安定したウォーキング用の杖などがその一例です。また、座位や立位の練習に使う安全な補助椅子やバランスボールも役立ちます。これらの道具は、リハビリをより効果的なものにしてくれますし、安全性を確保するのに役立ちます。 専門家と相談しながら、本人のニーズに合った道具を選ぶことも重要です。

身体状況やリハビリの目標に応じて、適切な道具を選定することで、リハビリの効果を最大限に引き出すことができます。適切な道具を用いることで、本人が安心してリハビリに取り組むことができ、モチベーションの維持にもつながります。

リハビリができる環境を整える

リハビリに取り組む環境を整えることは、スムーズにリハビリを進めるためにも重要なポイントです。適度な広さのスペースが必要であり、広すぎず狭すぎない環境が理想的です。また、リハビリに集中できる静かな場所や、十分な明るさ、快適な室温の確保も重要です。

さらに、床が滑りにくい素材を使用したり、安全性を高めるための手すりやバーの設置など、安全面の配慮も欠かせません。家庭でのリハビリの場合は、専門家との協力が不可欠です。 リハビリに最適な環境を作り出すために、専門家からのアドバイスや指示に従い、必要な設備や機材を整えることが求められます。

快適で安全な環境が整っていれば、リハビリに対する抵抗感が減少し、本人のモチベーションを維持することができます。これにより、リハビリの成果を最大限に引き出し、効果的な回復を目指すことができます。

関節可動域訓練

関節の動く範囲を広げるための訓練は、関節拘縮のリハビリに欠かせない重要な取り組みです。たとえば、膝をゆっくりと曲げ伸ばししたり、肩を円を描くように回したりする運動が代表的です。

これらの動作は、関節を無理なく動かしながら少しずつ可動域を広げていくことを目的としています。ただし、力を入れすぎると筋肉や関節に負担がかかり、痛みや炎症を引き起こすおそれがあるため、慎重に行うことが大切です。

一人ひとりの状態に応じて負荷を調整し、理学療法士など専門職による評価を受けながら進めることで、安全かつ効果的に関節の柔軟性を高めることができます。

さくらリバースの説明

さくらリバースでは寝たきりとなられての筋力低下を防ぐため、廃用症候群の予防法やリハビリについてお力になれればと思っております。寝たきり状態に陥ってしまうことで筋力が低下し、関節拘縮や循環不良などの問題が生じるリスクが高まります。

このような状況を避けるために、日常生活において適切な予防策を取ることは不可欠であると考えます。 当院では、患者様の個々の状況に合わせた適切なリハビリプランを提供し、寝たきりや廃用症候群の予防に取り組んでおります。患者様の健康と生活の質の向上を目指し、丁寧にサポートしたいと願っております。ぜひ、お気軽にご相談ください。

まとめ

寝たきりの状態が続くと、筋力の低下により廃用症候群を発症する恐れがあります。この記事では、廃用症候群の基本的な説明からその原因、予防法、そしてリハビリテーションの大切な考え方までをお伝えしてきました。

日常的に運動量を増やしたり、食生活を見直すことはもちろん、本人が前向きにリハビリに取り組めるよう励ますことが欠かせません。また、リハビリを効果的に進めるためには、適正な道具の選定とリハビリがしやすい環境を整えることもポイントです。 私たちはご自宅での予防から介護施設でのリハビリまで、状況に応じたアプローチが必要だと考えます。

限られた情報を基に、実際の生活に役立つ知識や提案を交えながら、廃用症候群に立ち向かうための一助となれば幸いです。これからも「寝たきりで筋力低下しまう前に!」という意識を持ち続け、体の不調に早目に対処し、健康で充実した毎日を送るために出来る範囲で努力し続けていきましょう。

監修:森田 進
株式会社 さくらリバース 人材開発部 兼 事業開発部 部長
   

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