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寝たきりの高齢者に必要なカロリーはどのくらいか解説します!

監修:森田 進
2024年04月29日
寝たきりの高齢者に必要なカロリーはどのくらいか解説します!
寝たきりの高齢者にとって、適切なカロリー摂取はとても重要です。今回は、その人の健康を支える力となる栄養管理について、「消費カロリーとの関係」と「食事時の注意点」を詳しくお伝えします。

高齢者に必要なカロリーを理解し、より良い健康維持につなげていきましょう。å
目 次

寝たきり状態が身体に与える影響とは

長期間の寝たきり状態は、想像以上に深刻な身体への影響をもたらします。

筋力の急激な低下や関節の動きが制限される拘縮、皮膚の損傷である褥瘡、さらには認知機能の低下まで、様々な合併症が連鎖的に発生する可能性があります。

筋力低下と関節拘縮

寝たきりが続くと筋力は著しく低下し、1週間で約10~15%、1か月で最大50%も減少することが分かっています。

活動量の極端な低下により筋肉が萎縮し、同時に関節周囲の軟部組織が変性することで関節可動域が制限される関節拘縮が進行します。これらの症状は廃用症候群の典型例であり、一度進行すると回復に時間を要するため早期の予防が重要です。

褥瘡

寝たきり状態では体重による圧迫で血流が悪くなり、皮膚や皮下組織が壊死する褥瘡(床ずれ)が発生しやすくなります。特に骨突出部位である仙骨部、踵部、後頭部などに好発し、一度発生すると治癒に長期間を要します。

認知機能の低下

長期間の寝たきり状態は脳への刺激が減少し、認知機能の低下を招きます。社会的交流の機会減少、身体活動量の低下により、記憶力や注意力、判断力が段階的に悪化することが報告されています。

寝たきりの高齢者に必要なカロリーの求め方

寝たきりの高齢者は、活動量が著しく低下しているため、一般的な成人に比べて消費カロリーが少ないことが多いですが、これは基礎代謝も影響しています。基礎代謝とは、生命維持のために最低限必要なエネルギー消費のことです。

寝たきり状態では、運動による消費カロリーがほぼゼロに近いため、カロリーの摂取量も抑える必要があります。しかし、栄養不足にならぬよう、必要十分なカロリーを確保することが肝要となります。

標準体重の求め方

標準体重を知るためには、身長を利用した計算が一般的で、BMI(ボディマス指数)が広く用いられる指標です。BMIは単純な式でありながら、私たちの健康状態を把握するのに非常に有効です。具体的には、体重(kg)を身長(m)の2乗で割ることで算出され、この値から個人の体重が適正範囲内にあるかどうかが推測できます。

日本では、BMIの標準値は22を目安とされています。日本肥満学会によると、18.5未満を「低体重(やせ型)」と分類し、18.5以上25未満を「普通体重」とします。また、BMIが25以上の場合は「肥満」とされ、その程度に応じて「肥満1度」から「肥満4度」までのカテゴリーに細分化されます。この数値は、多くの健康指標を設定する際の基準とされており、個々の健康管理においても非常に重要です。

たとえば、身長が160cmの人の場合、まず160cmを1.6mに換算します。次に、1.6mを2乗して2.56m²を得ます。そして体重をこの数値で割ることで、その人のBMIが算出されるのです。160cm、60kgだった場合、BMIは23.4ほどになり、「普通体重」という事になります。BMIは摂取カロリーを決定する際など、具体的な健康計画を立てる基礎となります。

体重1kgあたりの必要カロリー

体重1kgあたりに必要なカロリーは、個々の活動レベルや年齢、性別によって大きく変わるため、一概に定めることは難しいです。特に一般的な成人男性の場合、基礎代謝だけで約25kcalが必要とされていますが、寝たきりの高齢者の場合はこれよりも少ない、約20kcal程度が適切とされています。

この違いは、高齢者は通常、筋肉量が減少し、体の代謝率が低下するためです。したがって、体重が50kgの高齢者であれば、日々の基礎代謝には約1000kcalのカロリーが必要となります。しかし、この数値はあくまで一つの目安に過ぎず、健康状態や活動性に応じて調整が必要です。

必ず医師に相談する

寝たきりの高齢者の適切なカロリー摂取は、医師と密接に相談しながら栄養計画を立てることが非常に重要です。体重管理が困難な状況では、過剰あるいは不足したカロリー摂取が、肥満や栄養不足といった問題を引き起こす可能性があるため、個々の状況に応じた食生活の見直しは必須となります。

定期的な健康診断を受けることも重要であり、医師の専門的な指導のもとで食事管理を行うことを推奨します。医師は患者の健康状態を正確に把握し、その情報をもとにした栄養摂取の調整が可能です。

食事の際に気をつけること

寝たきりの高齢者の食事は、一般の人とは異なる注意点が多くあります。まず、食べる行為そのものが困難である場合が多いため、食事の準備や提供の方法も考慮する必要があるのです。

また、消化吸収の能力の低下や、特定の疾患を持つ方には、特別な措置が必要となります。これらの点を踏まえ、安全でかつ栄養バランスのとれた食事を提供することが重要です。以下に、具体的な注意点について詳しくお話していきます。

カロリーだけでなく栄養バランスも考える 

寝たきりの高齢者にとって、カロリーを摂取することは生命を維持する基本である一方で、それだけで十分ではありません。真に健康的な生活を送るためには、栄養バランスを考慮した食事の提供が極めて重要です。

毎日の食事で、たんぱく質、ビタミン、ミネラルといった必要な栄養素をバランスよく摂取することは、身体機能を維持し、生活の質を高めるために不可欠です。

たんぱく質は、筋肉や内臓を健康に保つのに欠かせず、特に寝たきりの方の筋肉量の減少を防ぎ、体力維持に役立ちます。また、ビタミンやミネラルは、免疫機能を支え、骨の健康を保つことに直接的に関わっており、これらの栄養素が不足すると、体は病気や感染症に対する抵抗力を失い、回復力も低下します。

食事の選び方一つで、高齢者の生活の質が大きく左右されるのです。抗酸化物質を多く含む新鮮な果物や野菜を積極的に取り入れることは、慢性病のリスクを減らし、全体の健康を促進する効果が期待できます。また、十分なカルシウムを含む食品を選ぶことは、骨粗しょう症の予防にも繋がります。

水分量にも気を付ける

年齢を重ねるにつれて、人は喉の渇きを感じにくくなるものです。高齢者の場合は、意識的に水分を摂取しないと、脱水のリスクが非常に高まり健康上の重大な問題を引き起こす原因となるため、注意が必要です。

寝たきりの高齢者に適切な水分補給を提供する時は、ミネラル栄養素が含まれる麦茶やビタミンが含まれる果汁、栄養たっぷりのスープなどを上手く取り入れることが大切です。

これらの飲料は、水分だけでなく、必要な栄養も同時に供給することができ、一石二鳥の効果を期待できます。ただし、カフェインの含まれる紅茶や珈琲、緑茶、ほうじ茶は、逆に水分を輩出する作用があるので避けましょう。

介護者や家族は、一日の水分摂取量の目安を設け、寝たきりの高齢者が適宜必要な水分を摂取できるよう積極的に支援することが大切です。例えば、朝起きた後や食事のたび、そして就寝前に水分を提供する習慣をつけることで、体内の水分バランスを保つ助けとなります。

誤嚥に気をつける

食事時に特に注意が必要なのが、高齢者にとって深刻なリスクである誤嚥(ごえん)です。年齢と共に弱まる嚥下(えんげ)能力は、食べ物や飲み物が誤って気道に入る危険を高め、時には命に関わる大問題へと発展することがあります。誤嚥は肺炎を引き起こす原因となり得るため、高齢者の健康管理においてはこれを最も警戒すべき点の一つと考えるべきです。

食事を提供する際には、食材の硬さや大きさ、そして食べやすさに細心の注意を払う必要があります。高齢者の飲み込む力に合わせて、適切に食材を調理することが極めて重要です。例えば、柔らかく煮たり、細かく刻んだり、すりつぶしたりして、飲み込みやすい形状にするなどの工夫が求められます。また、食事のペースも高齢者の能力に合わせ、焦らず、快適に食事を楽しめるようにすることが大切です。

さらに、食事の際に適切な体位をとることや、効果的な介助方法を学ぶことも、安全な飲食を支援する上で重要です。介護者は正しい体位支援技術を習得し、高齢者が最も安全に食べやすい姿勢を保つ手助けをしなければなりません。

家族が知っておきたい食事介助のポイント

寝たきりの高齢者にとって安全で安心できる食事時間を提供するには、適切な知識と技術が欠かせません。誤嚥や窒息のリスクを避けながら、ご本人が尊厳を保って食事を楽しめるよう、姿勢・時間・食欲への配慮が重要です。

安全な食事姿勢

寝たきりの高齢者への食事介助では、誤嚥を防ぐ適切な姿勢作りが最も重要です。ベッド上では上半身を30-60度程度起こし、頭部をやや前傾させます。

車椅子や椅子を使用する場合は「90度ルール」を意識し、腰・膝・足首がそれぞれ90度になるよう調整しましょう。足裏全体が床に着くことで安定した座位が保てます。クッションやタオルを使って体の傾きを補正し、食事中も姿勢が崩れないよう注意深く見守ることが大切です。

食事時間

食事時間は30-45分以内を目安とし、ご本人のペースに合わせてゆっくりと進めます。長時間の食事は疲労や集中力低下を招き、誤嚥のリスクを高めるため注意が必要です。

一口ずつ確実に飲み込んだことを確認してから次の食べ物を口に運び、途中で休憩を挟みながら進めましょう。咀嚼や嚥下に時間がかかる場合は無理をせず、食事を数回に分けることも大切です。食事中は会話を楽しみながらリラックスした雰囲気作りを心がけます。

食欲不振時

食欲不振が見られる場合は、まず食べやすい食材や調理法を工夫します。消化の良いお粥やスープ、栄養価の高い卵料理などから始め、少量でも栄養バランスを保つよう心がけましょう。

市販の栄養補助食品やゼリー状の栄養剤も活用できます。食事環境を整え、好みの音楽をかけたり、一緒に食事を楽しむことで食欲を刺激する方法も効果的です。継続的な食欲不振や体重減少が見られる場合は、早めに医療機関やケアマネジャーに相談し、専門的なアドバイスを受けることが重要です。

寝たきり高齢者の食事形態の選択

個々の身体機能に合わせた適切な食事形態を選択することは、安全で楽しい食事時間を提供する上で欠かせません。咀嚼・嚥下能力の評価に基づいて、常食から介護食まで段階的に調整し、必要に応じて栄養補助食品を活用することで、十分な栄養摂取と食べる喜びの両立を図ります。

咀嚼・嚥下機能に応じた食事

食事形態の選択では、まず咀嚼・嚥下機能の正確な評価が重要です。反復唾液嚥下テストや水飲みテストなどの簡易検査により、噛む力と飲み込む力を段階的に判定します。機能レベルに応じて常食から刻み食、ソフト食、ミキサー食まで調整し、個人の能力を最大限活用できる形態を選択しましょう。

加齢や疾患により機能が低下した場合も、適切な評価により安全性を確保しながら、できるだけ食べる楽しみを維持することが大切です。定期的な再評価により、機能変化に応じた柔軟な対応を心がけます。

介護食・流動食

介護食には日本介護食品協議会が定めるユニバーサルデザインフード(UDF)の4段階区分があります。区分1は「容易にかめる」、区分2は「歯ぐきでつぶせる」、区分3は「舌でつぶせる」、区分4は「かまなくてよい」形態です。

流動食は咀嚼・嚥下機能が著しく低下した方に適用され、必要な栄養素を液体で摂取できるよう調整されています。選択時はUDFマークを確認し、適切な区分の商品をお選びください。

栄養補助食品

通常の食事だけでは必要な栄養素が不足する場合、栄養補助食品の活用が有効です。特に高齢者では食事量の減少により、たんぱく質、ビタミン、ミネラルが不足しがちです。

ゼリータイプ、液体タイプ、粉末タイプなど様々な形状があり、嚥下機能に応じて選択できます。低栄養の改善や体重減少の予防、免疫機能の維持に効果的とされています。ただし、あくまで補助的な役割であり、可能な限り通常の食事から栄養摂取することが理想です。使用前には医師や管理栄養士にご相談いただくことをお勧めします。

さくらリバースについて

さくらリバースでは、寝たきりの方の介護のご負担を軽減し、介護が必要な方と介護をなさる方が安心して過ごせる生活を支援することに尽力しております。当院の熟練した専門スタッフは、個々のニーズに応じパーソナライズされたプランを作成し、安全かつ効果的なサービスをお客様のご自宅やお住まいの場所でご提供します。

プロフェッショナルなケアと献身的なサポートにより、みなさまが安心して日々を送れるよう努めております。ニーズに応じて、細やかなケアをご提供し、心身の健康を全力でサポート致します。どうぞ、お気兼ねなくご相談ください。

まとめ

寝たきりの高齢者には、特に栄養のバランスやカロリー摂取が重要です。消費カロリーが減少しているため、必要なカロリー量を見極めることが大切になります。この記事では、消費カロリーと体重の関係、栄養バランスを考えた食事内容、さらに水分摂取の重要性などを経て、どのように計画的な栄養管理を行っていくべきかについてお話ししました。

適切なカロリー摂取は、ただ単に太ることや痩せることを避けるだけではなく、筋肉維持、免疫力維持、皮膚の健康状態を良好にするためにも非常に重要です。医師や専門家と相談しながら、一人一人の高齢者に合った食事の提供を心がける必要があるのです。また、コミュニケーションを取りながら楽しい食事の時間を作っていくことも、心身の健康を維持するためには大切なポイントです。

監修:森田 進
株式会社 さくらリバース 人材開発部 兼 事業開発部 部長
   

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