花粉症の原因と発症メカニズム
花粉症の原因となる植物はさまざまですが、日本では特にスギとヒノキの花粉が大きな影響を及ぼします。
スギ花粉は2月から4月にかけて飛散し、特に3月がピークになります。ヒノキ花粉はスギ花粉の後に飛び始め、4月ごろがピークを迎えます。また、5月から6月にかけてはイネ科、8月から10月にはブタクサやヨモギの花粉が飛ぶため、秋にも花粉症の症状が出る人がいます。飛散時期を知ることで、効果的な対策を取ることができます。
花粉が口や鼻、目などから体内に入ると、免疫システムがこれを異物と認識し、排除しようとします。免疫細胞の一種であるリンパ球が「IgE抗体」を作り、これが花粉と再び接触すると、粘膜にある脂肪細胞が反応し、ヒスタミンなどの化学物質を分泌します。これにより、くしゃみや鼻水、涙といったアレルギー症状が引き起こされるのです。
本来、免疫システムは細菌やウイルスといった有害なものから体を守る働きをします。しかし、花粉症の場合は、体に害のない花粉にも過剰に反応してしまうのが特徴です。この免疫の過剰反応が、花粉症の症状を引き起こす原因となっています。
花粉症は高齢者にも発症する?
「高齢者には花粉症が少ない」と思われがちですが、花粉症は年齢に関係なく発症するとされており、60歳以上や75歳以上で症状が現れるケースも報告されています。
以前は、65歳以上で花粉症のような症状が見られても、血管運動性鼻炎と診断されることが多かったのですが、現在ではアレルギー検査の精度が向上し、花粉が原因と特定できれば花粉症と診断されるようになりました。
そのため、60歳以上での花粉症の発症が増えたように見えますが、実際には昔から高齢になってから発症するケースは一定数あったと考えられます。
高齢者が花粉症に注意すべき理由
花粉症は単なる鼻水やくしゃみだけではなく、健康や生活の質に影響を及ぼす可能性があります。特に高齢者は、免疫機能の変化や体の衰えにより、花粉症の症状が思わぬリスクにつながることがあります。
ここでは、高齢者が特に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
口呼吸による感染症リスクの増加
花粉症の症状がひどくなると、鼻が詰まりやすくなり、無意識のうちに口呼吸になってしまうことがあります。口呼吸は鼻呼吸に比べて感染症のリスクを高める原因となります。
鼻は本来、ウイルスや細菌をブロックするフィルターの役割を持っていますが、口呼吸になるとこれが機能せず、外からの病原菌が直接喉や気管に入りやすくなります。その結果、風邪やインフルエンザだけでなく、肺炎を引き起こすリスクも高まります。特に高齢者は免疫機能が低下しやすいため、一度感染すると症状が重くなりやすく、注意が必要です。
また、口呼吸が続くと口の中が乾燥し、虫歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、舌の汚れ(舌苔)が増えて口臭の原因にもなります。日頃から鼻づまりを改善する対策をとり、口呼吸にならないよう意識することが大切です。
くしゃみ・咳による骨折や転倒の危険性
花粉症によるくしゃみや咳が続くと、思わぬ怪我の原因になることがあります。特に高齢者の場合、骨が弱くなっているため、くしゃみの衝撃で肋骨を骨折してしまうケースもあります。
また、咳やくしゃみの際に体が大きく揺れることで、バランスを崩して転倒するリスクも高まります。特に、筋力が低下している高齢者や、関節が弱くなっている人は注意が必要です。一度転倒して骨折すると、回復に時間がかかり、生活の質が大きく低下する可能性があります。
さらに、夜間のくしゃみや咳によって睡眠が妨げられ、慢性的な寝不足になると、日中の注意力が低下し、転倒や事故のリスクがさらに高まることも考えられます。花粉症の症状を軽減し、体への負担を減らすことが重要です。
風邪と誤認し悪化するケース
花粉症の症状は風邪と似ているため、間違って風邪薬を服用してしまうことがあります。特に高齢者は、自分の症状を正しく判断するのが難しく、適切な治療が遅れてしまうことが少なくありません。
風邪と花粉症の主な違いは、発熱の有無や症状の持続期間です。風邪の場合、発熱や喉の痛みを伴うことが多く、1週間程度で回復します。一方、花粉症は熱が出ることは少なく、くしゃみや鼻水が長期間続くのが特徴です。しかし、高齢者は免疫機能の低下により、花粉症がきっかけで風邪を引きやすくなることもあります。
さらに、花粉症による鼻づまりが悪化すると、口呼吸が増え、結果的に風邪や肺炎にかかるリスクも高まります。また、自己判断で市販の風邪薬を飲むと、症状が悪化したり、持病の薬と相互作用を起こす可能性もあります。少しでも症状に違和感を感じたら、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
高齢者の花粉症対策
高齢者の花粉症は、症状が軽くなることもあれば、風邪や持病の影響で悪化しやすいこともあります。そのため、日頃から免疫力を整え、花粉の影響を最小限に抑えることが大切です。特に、腸内環境を整える食事や適度な運動は、花粉症の症状緩和に役立つとされています。
ここでは、高齢者が取り入れやすい対策について紹介します。
マスク・ゴーグルの着用
花粉症対策の基本は、花粉を体内に入れないことです。マスクやゴーグルを適切に使用することで、鼻や目の粘膜への花粉の付着を防ぐことができます。
マスクの選び方と使用のポイント
・花粉を通しにくい高密度フィルターのマスクを選ぶ
・顔にしっかりフィットするサイズを使用し、隙間を作らない
・マスクはこまめに交換し、花粉が付着したまま長時間使用しない
ゴーグルの選び方と使用のポイント
・花粉対策用のメガネやゴーグルを使用する
・普通のメガネよりも密閉性の高いものを選ぶと効果的
・レンズについた花粉をこまめに水洗いする
マスクやゴーグルを正しく着用することで、花粉の影響を最小限に抑えられます。外出時にはセットで使用し、帰宅後はしっかりと清潔に保つことが大切です。
服装の工夫
花粉の季節は、服装選びも重要です。
花粉がつきにくい服装のポイント
・ウールやフリースなど、花粉が付きやすい素材は避ける
・ツルツルしたポリエステルやナイロン素材の服を選ぶ
・帽子やスカーフを活用し、髪や首元への花粉付着を防ぐ
帰宅時の花粉除去
外出時に花粉が付きにくい服装を心がけ、帰宅後にはしっかりと花粉を取り除くことで、室内の花粉量を減らすことができます。
帰宅時の花粉除去のポイント
・玄関に入る前に衣服の花粉を払い落とす
・外で上着を脱ぎ、できるだけ花粉を家の中に持ち込まない
・手洗い・うがいを徹底し、顔も洗って花粉を落とす
・洗濯物は部屋干しにするか、花粉が少ない時間帯に外干しする
花粉症の症状を悪化させないためには、家の中に花粉を持ち込まない工夫が必要です。特に、玄関での花粉除去やこまめな掃除を心がけることで、室内の快適さを維持できます。
腸内環境を整える食事
腸は体の免疫機能の約7割を担っているといわれ、腸内環境が整うことで免疫のバランスが良くなり、アレルギー反応を抑える効果が期待できます。特に花粉症の症状を和らげるためには、腸内の善玉菌を増やす食事を意識することが重要です。
腸内環境を整えるためにおすすめの食品には、以下のようなものがあります。
・ヨーグルトや納豆などの発酵食品(乳酸菌・ビフィズス菌が含まれる)
・味噌や漬物などの伝統的な発酵食品
・ゴボウや海藻類などの食物繊維を多く含む食品(腸内の善玉菌のエサになる)
・サバやイワシなどの青魚(DHA・EPAがアレルギー症状を抑える働きがある)
ただし、腸内環境を整えるには、特定の食品だけに偏るのではなく、バランスの良い食事を心がけることが大切です。主食・主菜・副菜をしっかり組み合わせ、野菜や発酵食品を積極的に摂るようにしましょう。また、腸内環境を整えるには継続が重要なので、毎日の食事に取り入れることがポイントです。
適度な運動
適度な運動は、免疫バランスを整え、花粉症の症状を軽減する効果が期待できます。特に、有酸素運動は自律神経の働きを整えるため、花粉症対策としても効果的です。
高齢者におすすめの運動には、以下のようなものがあります。
・ウォーキング(30分程度の軽い散歩でもOK)
・ヨガやストレッチ(呼吸を整え、リラックス効果もある)
・軽い筋トレ(無理のない範囲で体を鍛えることで免疫力を高める)
免疫力を高める睡眠
十分な睡眠は免疫力を高めるため、花粉症の症状を抑える上で重要なポイントです。睡眠不足が続くと、免疫機能が低下し、花粉に対する過敏な反応が強まることがあります。
良質な睡眠をとるためのポイント
・毎日同じ時間に寝起きし、生活リズムを整える
・寝室の湿度を40~60%に保ち、喉や鼻の乾燥を防ぐ
・就寝前にスマートフォンやテレビの使用を控え、リラックスできる環境を作る
・枕や布団は花粉がつきにくい素材を選び、こまめに洗濯する
特に高齢者は、睡眠の質が低下しやすいため、寝室環境を整えることが大切です。寝る前に軽いストレッチをする、温かいお茶を飲むなど、リラックスできる習慣を取り入れるのも効果的です。
さくらリバースの紹介

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まとめ
花粉症は若い世代だけでなく、高齢者にも発症する可能性があります。加齢による免疫の変化や診断の進歩により、今まで花粉症とは無縁だった方でも症状が現れることがあります。
日常生活の工夫や体のケアを大切にすることで、花粉症の影響を和らげることができます。食事や運動、十分な睡眠を意識しながら、マスクやゴーグルの活用、帰宅時の花粉除去など、できることから対策を始めてみましょう。
「高齢だから大丈夫」と思わず、正しい知識を持ち、無理なく続けられる対策を取り入れることが大切です。花粉の季節も快適に過ごせるよう、心と体をいたわりながら、穏やかな毎日を送りましょう。
