初回加算とは
初回加算は、新たに訪問介護計画書を作成し、サービスの提供を行った場合に算定できる加算です。厚生労働省では「利用者が過去2月間(暦月)に、当該指定訪問介護事業所から指定訪問介護の提供を受けていない場合に算定されるもの」と定義されています。
この制度は、初回利用時に発生するアセスメントや計画書作成、利用者・家族との面接などの業務負荷を適切に評価することを目的としています。サービス提供責任者が行う初回対応の重要性を制度として位置づけ、質の高いサービス開始を支援する仕組みといえます。
訪問介護の初回加算の単位数
初回加算は月額制で設定されており、基本的な算定の枠組みを理解することが重要です。
単位数の具体例
訪問介護の初回加算は、厚生労働省により「1月につき200単位」と定められています。これは、初回の指定訪問介護を行った日の属する月に、1回限り算定できる単位数です。
介護報酬を1単位10円で計算した場合、初回加算による収入は月額2,000円となります。2024年度の介護報酬改定においても、この単位数に変更はありませんでした。算定は初回訪問を行った月のみに限定され、継続的な算定ではない点に留意が必要です。同一利用者に対しては、当該事業所では月1回の算定となります。
単位数の算出方法
初回加算は、条件を満たした利用者に初回サービスを提供した月に200単位を算定する仕組みです。同じ月に複数の利用者が初回サービスを受けた場合、それぞれの利用者に対して200単位ずつ算定できます。
同一月内であっても、複数の事業所が初回加算を算定することが認められています。利用者が複数の事業所からサービスを受けている場合、各事業所で算定要件を満たしていれば、それぞれの事業所で初回加算を算定できます。
同一事業者が運営している介護予防訪問介護事業所での過去の利用実績は算定条件に含まれておらず、これまでの介護予防サービスの利用歴は初回加算の算定に影響を与えません。
参考:厚生労働省
訪問介護の初回加算の算定要件
初回加算を適正に算定するためには、厚生労働省が定める具体的な要件を満たすことが必要とされています。これらの要件は明確に規定されており、すべてを満たした場合のみ算定が認められています。
初回加算の算定要件は、厚生労働省により以下のように定められています。
新規訪問介護計画の作成
新規に訪問介護計画を作成していることが必須条件となっています
過去2月間の利用実績
利用者が過去2月間(暦月)に、当該指定訪問介護事業所から指定訪問介護の提供を受けていない場合であることが求められます
サービス提供責任者の関与
以下のいずれかを満たすことが必要です
・初回または初回の訪問介護を行った日の属する月に、サービス提供責任者が指定訪問介護を行った場合
・他の訪問介護員等が指定訪問介護を行い、サービス提供責任者が同行した場合
これらの要件はすべて同時に満たすことが求められており、一つでも欠けた場合は算定できないとされています。
新規利用者の定義
初回加算における「新規利用者」の定義は、厚生労働省により明確に示されており、複数のパターンが存在します。新規利用者の定義には、3つの主要なパターンがあります。
第1に「新規サービス提供時」として、初めて当該事業所と契約してサービスを利用する利用者が該当します。
第2に「過去2か月間(暦月)において訪問介護の提供を受けていない場合」として、一定期間サービスが中断していた利用者も対象となります。
第3に「要支援者が要介護認定を受けた場合」または「要介護者が要支援認定を受けた場合」など、要介護度の区分変更が生じた利用者も新規利用者として扱われます。
区分変更については見落とされやすいため、利用者の認定状況を定期的に確認し、算定機会を逃さないよう注意が必要です。
算定に必要な書類と手続き
初回加算の適正な算定のためには、厚生労働省の規定に基づく適切な書類整備と手続きが不可欠とされています。
算定に必要な書類として、まず新規作成した訪問介護計画書の整備が必須となっています。次に初回訪問記録では、訪問日時、対応者、提供したサービス内容、利用者の状況などを詳細に記録することが求められます。サービス提供責任者が同行した場合は同行記録も作成し、対応内容を明確に残すことが必要とされています。また、利用者への説明に関しては重要事項説明書および利用者同意書の整備が求められています。
その都度の同意は不要とされていますが、事前に加算の算定要件および趣旨について重要事項説明書等により利用者に説明し、同意を得ておくことが必要とされています。これらの記録は算定の根拠となる重要な証拠書類となります。
訪問介護の初回加算を取得するためのポイント
初回加算の確実な取得には、制度の理解だけでなく、実務における適切な対応が不可欠です。特に利用者とのコミュニケーションと記録管理の2点が重要な要素となります。
利用者への説明の重要性
初回加算の取得において、利用者への適切な説明は法的に義務づけられた必須の手続きとされています。
緊急時訪問介護加算及び初回加算はいずれも、それぞれの要件に合致する指定訪問介護を行った場合に、当然に算定されるものとされています。このため、サービス提供の都度、利用者からの同意を必要とするものではありません。
しかし居宅サービス基準第8条に基づき、事前にそれぞれの加算の算定要件及び趣旨について、重要事項説明書等により利用者に説明し、同意を得ておくことが必要とされています。つまり、契約時に重要事項説明書を用いて加算の内容を説明し、利用者の理解と同意を得ることが求められます。説明が不十分な場合、要件を満たしていても加算を取得できない可能性があるため、丁寧な説明が重要といえるでしょう。
訪問記録の管理とその重要性
初回加算の算定においては、適切な記録の作成と管理が制度上の根拠として不可欠な要素となっています。記録不備は算定要件を満たしていても加算取得を困難にする要因とされています。
初回加算の記録管理では、複数の重要な要素があります。まず初回訪問記録として、訪問日時、対応者、提供したサービス内容、利用者の状況などを詳細に記録することが必要とされています。サービス提供責任者が同行した場合は同行訪問した旨を記録することが求められています。
なお、サービス提供責任者はサービス提供時間を通じて滞在する必要はなく、利用者の状況等を確認した上で、途中で現場を離れたとしても加算の算定要件を満たすとされています。ただし、対応内容を正確に記録し、算定要件を満たしていることを証明できる状態にしておくことが重要となります。記録がない状態では、加算が取得できない場合もあるため、継続的な記録管理が求められます。
訪問介護の初回加算に関するよくある質問
初回加算の運用において、事業所が直面する疑問や課題には共通するものが多く見られます。ここでは、特に問い合わせの多い2つの重要な論点について解説いたします。
初回加算に利用者の同意は必要か?
初回加算の算定における利用者同意については、明確な見解が示されており、実務上の重要なポイントとなっています。
緊急時訪問介護加算及び初回加算はいずれも、それぞれの要件に合致する指定訪問介護を行った場合に、当然に算定されるものとされています。このため、その都度、利用者からの同意を必要とするものではないと明記されています。つまり、サービス提供のたびに改めて同意を取得する必要はありません。
しかし居宅サービス基準第8条に基づき、事前にそれぞれの加算の算定要件及び趣旨について、重要事項説明書等により利用者に説明し、同意を得ておくことが必要とされています。契約時に重要事項説明書を通じて加算の内容を説明し、包括的な同意を得ることが求められるといえるでしょう。
複数事業所利用時はどうなる?
複数の訪問介護事業所を利用している場合の初回加算については、特別な取り扱いが認められています。
初回加算は同一月内で複数の事業所が算定することも可能であることが示されています。これは、初回加算があくまでも「当該指定訪問介護事業所」が利用者に対して初めてサービスを提供する場合の評価であることに基づいています。したがって、利用者が同じ月に複数の訪問介護事業所から初回サービスを受けた場合、各事業所において算定要件を満たせば、それぞれで初回加算の算定が可能とされています。
例えば、A事業所から4月10日に、B事業所から4月25日に初回サービスを受けた場合、両事業所とも過去2か月間に当該利用者への提供実績がなければ、どちらも4月分の初回加算を算定できることになります。
さくらリバースの紹介

さくらリバースでは、専門知識を持つスタッフがご自宅やご滞在先へ伺い、利用者の体調や生活状況に応じながら、マッサージ・整体・鍼灸などを融合した“総合治療”をご提供しています。身体機能の維持はもちろん、心の安定にも目を向けながら、自立した生活を続けていただけるようご支援させていただきたいと願っております。
また、ご家族の負担を少しでも軽減できるよう、きめ細かな配慮を大切にしております。「自宅でのケアに不安がある」「どのようなサポートが受けられるのか知りたい」とお感じの方は、どうぞお気軽にご相談いただければと思います。
まとめ
訪問介護の初回加算は、新規利用者や一定期間サービスを受けていない利用者への初回対応を評価する制度として、月額200単位が設定されています。算定要件には、新規の訪問介護計画作成、過去2か月間のサービス提供実績の確認、サービス提供責任者による対応または同行といった具体的な条件が定められています。
利用者への事前説明と同意取得、適切な記録管理、複数事業所利用時の取り扱いなど、実務上の留意点も明確に示されています。これらの要件を正確に理解し、適切な手続きを行うことで、制度本来の目的である質の高い初回対応の実現につながると考えられます。
