関節拘縮について
関節拘縮というのは、何らかの原因で筋肉や靭帯、関節包が、硬くなったり短縮したりする事で、関節の動きが制限される状態を指します。
普段は問題なく行っている動きが、拘縮により困難となることで、日々の生活に影響が出てきます。関節を動かすことが難しいため、リハビリなどによる改善が重要となります。
拘縮とは
拘縮は、単に物理的な不便を引き起こすだけでなく、動くたびに痛みを感じることがあり、日常生活に影響を及ぼします。特に、長時間同じ姿勢で過ごすことが多い人々にとって、拘縮は正しい姿勢を保つことを難しくさせる原因となります。その結果、体のバランスを崩し、さらなる健康問題を引き起こすこともあります。
特に、関節をあまり動かさない生活を送っていると、筋肉が固まりやすくなり、拘縮が進行するリスクが高まります。このような状態が続くと、生活の質が著しく低下し、日々の活動が一層困難になるだけでなく、心にも大きな影響を及ぼすことになります。自由な動きを拘縮が妨げることにより、不安やフラストレーションが増大するのです。
関節拘縮の問題点
関節拘縮が起きると、関節の可動域が制限されるため、日常生活におけるさまざまな動作が困難になり、結果として生活の質を大幅に低下させることになります。例えば、足の関節が拘縮すると、歩行が困難になります。これは単に移動することの不自由さだけでなく、自立した生活を送ることへの大きな障害となり、個人の自由や外出の楽しみを奪ってしまいます。
また、手指が拘縮すると、日々の簡単なタスクでさえ一苦労になります。物をつかむ動作や書き物など、わたしたちが当たり前のように行っている活動が、一つ一つ困難なものに変わってしまうのです。
拘縮がさらに進行すると、関節の形が変わり、時には生活を支える基本的な動作さえも不可能になることがあります。この段階になると、多くの場合、外科的な治療が必要になることもあり、これは患者にとって大きな精神的負担となります。
関節拘縮の種類
関節拘縮は、病変が起こる部位によってタイプが異なり、代表的なものに皮膚性拘縮・筋性拘縮・関節性拘縮があります。
それぞれ原因や症状が違うため、自分の状態を知ることはリハビリや予防を適切に進める上で大変重要です。
皮膚性拘縮
皮膚性拘縮は、熱傷や外傷などで皮膚が瘢痕化し収縮することで、関節の動きが制限される状態です。
皮膚が硬くなり柔軟性を失うと、関節を動かすたびに皮膚が引っぱられて痛みを感じることがあり、日常動作に支障をきたすことがあります。特に手指・肘・膝など、曲げ伸ばしの多い部位に起こりやすいです。
改善には瘢痕組織の柔軟性を高めるマッサージやストレッチで皮膚を伸ばすことが有効です。重度になれば外科的治療が検討されるため、早い段階でのケアと専門機関による評価が求められます。状態を観察しながら、無理のない範囲でケアを継続することが大切です。
筋性拘縮
筋性拘縮は、長期間の不使用や過度の緊張により筋肉が短縮して柔軟性を失うことで起こる拘縮です。
同じ姿勢を保つ時間が長くなると、筋肉が固まりやすくなり関節の可動域が制限されます。特に脳血管疾患による麻痺や筋肉の萎縮が進んだ状態では、筋性拘縮の発生リスクが高まります。
改善にはストレッチや関節可動域訓練を定期的に取り入れ、筋肉をゆっくり伸ばすことが効果的です。マッサージや温熱療法を併用すると、筋肉の緊張を和らげ血流が改善されやすくなります。進行すると改善が困難になるため、予防的なケアを早期から始めることが重要です。
関節性拘縮
関節性拘縮は、関節包や靭帯などの周囲組織が硬くなり、関節の動きそのものが制限される状態です。
関節炎・関節内の損傷・長期間の固定などをきっかけに関節包が線維化し、柔軟性を失うことが主な原因です。特に肩関節・膝関節など構造が複雑な部位に起こりやすく、いわゆる「四十肩/五十肩」もこのタイプに含まれます。
進行すると、着替えや食事などの日常動作にも支障が出ることがあります。改善には、関節可動域訓練やモビライゼーションといった専門リハビリが有効で、理学療法士などの指導を受けながら適切な運動を継続することが望ましいです。
関節拘縮の原因
関節拘縮の原因は多岐にわたります。多くの場合、怪我や疾患による長期間の安静(活動不足)が引き金となり、同じ姿勢を長時間続けることで関節を構成する組織が固まり、柔軟性を失った結果起こります。この状態は、身体的な不自由さと、患者のフラストレーションや孤独感を感じさせることがあります。
また、関節に炎症反応が生じることも、拘縮の一因となり得ます。炎症が持続することで関節に過剰な負担がかかり、それが拘縮へと進行するのです。痛みや不快感だけでなく、日常の簡単な動作さえも困難になり、これがさらに患者の心理的な苦痛を増すことになります。
そして、年齢を重ねるごとに関節は摩耗しますが、その結果、関節が変形し、自由な動きを妨げ、拘縮を起こすことがあります。また、適度な運動を行わないことで筋肉が衰え、関節を支える力が弱まるため、不自然な負荷が関節にかかりやすくなる事も原因となります。
リハビリ方法
関節拘縮に対するリハビリ方法は、日常生活での動作や運動能力の向上を目指す重要なプロセスです。 リハビリ方法について紹介します。
簡単な運動を繰り返し継続する
関節拘縮の改善には、簡単ながらも効果的な運動を定期的に行うことが非常に重要です。たとえば、指の関節が拘縮している場合、指を動かしたり、手のひらを開閉するエクササイズを行うことが推奨されます。これは関節の可動域を徐々に回復させるための重要なステップです。
また、足の関節に問題のある場合には、足首を回したり、つま先立ちをするなどが効果的です。単純な動作かもしれませんが、継続することで関節の動きを徐々にスムーズにし、筋肉を強化する効果が期待できます。
これらの運動を日常的に取り入れることは、時に忍耐が必要とされることもありますが、小さな努力が積み重なり、大きな成果へとつながるのです。運動を継続することで、不可能に思えた動きが少しずつ可能になり、それが更なるモチベーションに繋がります。そして大切なのは、運動を無理なく、そして根気強く続けることができるような環境を整えることです。
関節可動域訓練
関節の可動域を広げるための訓練は、関節拘縮のリハビリにおいて非常に重要な役割を果たします。たとえば、膝をゆっくり曲げ伸ばしする運動や、肩を円を描くように回す肩回し運動などが一般的です。
これらの運動は、関節を柔らかく動かしながら徐々にその動きの幅を拡大していくという方法で行われます。この時、無理な力を加えすぎたり、痛みを伴う運動をして、関節や筋肉に余計な負担をかけ、リハビリが逆効果とならないよう注意しなくてはいけません。
リハビリは痛みを伴うべきではなく、安全に、安心感を持って継続できるものでなければなりません。個々の患者の状態に合わせて、適切な負荷の選定が非常に重要となります。患者一人ひとりの体力や現在の健康状態を考慮し、専門家と密に連携しながら、最適なリハビリプログラムを組むことが、成功への鍵を握ります。
そのためには、定期的な評価と適応が欠かせません。物理療法士やリハビリ専門の医師は、リハビリの各ステージで患者の反応を観察し、必要に応じて運動プログラムを調整します。これにより、患者は安全かつ効果的に関節の可動域を広げることができるようになります。
マッサージ
リハビリにおけるマッサージは、関節周りの筋肉や組織の柔軟性を高めることを目的としています。マッサージにより筋肉への血行が改善され、緊張がほぐれていくことで、関節の動きがスムーズになります。それだけでなく、患者の心に深いリラクゼーションも与えてくれます。
マッサージは、技術の精度が非常に重要です。マッサージの圧が過度であると、筋肉や組織にダメージを与え、回復の妨げになることもありますので、専門家による施術が推奨されます。
リハビリプロセスにおいて、マッサージは補助的な役割でなく、治療の中心となることができます。適切に行う事によって、身体の各部が調和し、自然な動きが促進され、全体的な健康が向上します。
温熱療法・物理療法
温熱療法や超音波療法などの物理療法は、関節拘縮の改善において運動療法と併用されることが多い治療法です。
温熱療法ではホットパックや極超短波などを使用し、組織を温めて血流を促します。血行が良くなることで筋肉の緊張が和らぎ、関節を動かしやすくなる効果が期待できます。
一方、超音波療法は音波の振動によって深部の組織まで熱を届け、関節包や腱の癒着をほぐす作用があります。表面的な温めでは改善しにくい深部の拘縮に対して有効とされています。これらの物理療法は、関節可動域訓練の前に行うことで組織を柔らかくし、リハビリの効果を高める働きがあります。
ただし、物理療法だけで拘縮が完全に改善するわけではありません。運動療法やマッサージなどと組み合わせて取り入れることで、より安定した回復が期待できます。
拘縮が起こりやすい部位
関節拘縮は全身の関節で起こり得ますが、特に手指・肩・肘・膝・足首・股関節など、日常生活でよく動かす部位に発生しやすい傾向があります。これらの関節は、動かす機会が減ったり、長時間同じ姿勢が続いたりすることで拘縮のリスクが高まります。
発生する部位によって生活への影響が異なるため、それぞれの特徴を理解し、早期に対応することが大切です。
手指・肘・肩
手指の拘縮は、第2・第3関節に生じやすく、物をつかむ・ボタンを留める・箸を使うといった細かな動作が難しくなります。
手のひらを清潔に保ちにくくなることで、皮膚トラブルが起きることもあります。肘関節の拘縮では、着替えや洗顔などの日常動作に時間がかかり、動作の負担が増します。
肩関節は構造が複雑なため拘縮が起こりやすく、「四十肩」や「五十肩」と呼ばれる症状もこれに含まれます。拘縮が進むと、腕を上げる・後ろに回すといった動作が制限され、着替えや整髪、背中を洗うことが難しくなります。
これらの上肢の拘縮は、自立した生活を送る上で大きな障害となるため、早い段階からの予防とリハビリが欠かせません。
膝・足首・股関節
膝関節の拘縮は、立つ・座る・歩くといった基本動作に直接影響します。
寝たきりの状態が続くと膝が曲がったままになりやすく、拘縮の進行につながります。股関節では、特に屈曲拘縮が起こりやすく、立ち上がりや歩行が困難になります。
また、足首の拘縮は、長時間仰向けで過ごすと足先が下向きに固まりやすく、歩行時につまずきやすくなる要因となります。これら下肢の拘縮は、移動や立位保持など生活全体に影響を及ぼすため、生活の質を大きく左右します。車いすでの生活が長い場合も発生しやすいため、定期的な関節可動域訓練で動きを保つことが重要です。
首・背中
首や背中などの体幹部の拘縮は、姿勢の維持や動作全般に影響します。
頸部の拘縮が起こると首の可動範囲が狭くなり、上を向く・横を向くといった動作が制限されるため、視野が狭まりやすくなります。頸部や腰部が固まると、食事姿勢がとりにくくなり、誤嚥のリスクが高まることもあります。
さらに、背中の筋肉や関節が硬くなると、寝返りや起き上がりが難しくなり、姿勢の変形につながることがあります。円背や側弯が進行すると、呼吸にも影響を及ぼす場合があります。体幹の柔軟性を保つことは、全身のスムーズな動作を維持するために欠かせません。
関節拘縮リハビリの注意点とポイント
関節拘縮のリハビリにおいては、患部への配慮と、患者さんの精神状態を考慮することが非常に重要です。痛みを伴わない範囲での適度な運動やストレッチが基本となりますが、無理な運動は逆効果になることがあります。 ここでは関節拘縮リハビリの注意点とポイントについて解説します。
ゆっくり動かし痛みがないようにする
関節拘縮のリハビリにおいて心掛けるべき重要なポイントの一つは、ゆっくりとした動作で関節を動かし、患者が痛みや不快感を感じないように細心の注意を払うことです。
急激な動きは、関節や周囲の組織に余計な負担をかけ、治療の進行に悪影響を及ぼすことがあります。リハビリは、患者の体調や拘縮の具合に合わせてカスタマイズされるべきものであり、患者のペースに応じて慎重に進められる必要があります。
リハビリは、段階的に関節の可動域を拡大していくことが大切で、焦らず穏やかなペースで目標へ向かう必要があります。そのためには、リハビリを行うスタッフが患者の痛みや不快感に対して注意深くあることが重要です。そしてそれに応じて、リハビリの強度や方法を調整することがとても大切です。
適切なポジショニングで行う
関節のリハビリを行う際には、適切なポジショニングが非常に大切です。関節や筋肉に無理な負荷がかからないように、患者の姿勢を正確に整える必要があります。
床やベッドに対しての正しい横たわり方、または座る姿勢の取り方など、ポジショニングを適切に行うことで、リハビリの効果を高めると同時に、関節に余計なストレスをかけることなく治療を進めることができます。またポジショニングの際には、患者がリラックスした状態でいられるよう、心地よいクッションや支えの使用も考慮すると良いでしょう。
姿勢を長時間一定にしない
長時間同じ姿勢を保つことは、関節拘縮のリスクを高めてしまう要因となります。日常生活において、定期的に姿勢を変えることで関節拘縮のリスクを減らすことができます。
リハビリの際にも同様に、定期的なポジションの変更を心掛けることが重要です。特に、拘束や麻痺によって自由に体を動かすことが困難な患者さんの場合には、スタッフが意識的にポジションの変更を行う必要があるでしょう。
拘縮の予防方法
関節拘縮は一度進行すると改善が難しいため、日常の中で予防を意識することが最も重要です。関節を適度に動かし、正しい姿勢を保ち、早期から体を動かすことが基本となります。
特に高齢者や寝たきりの方、または手術後で安静期間が長い方は拘縮のリスクが高まるため、日常生活の中で小さな動作を意識的に取り入れることが大切です。
日常生活での予防ポイント
拘縮を防ぐには、日常生活の中で自然に関節を動かすことが効果的です。起き上がり、食事、着替え、排せつ、入浴、整容など、日々の動作そのものがリハビリの一環になります。動かす際は無理をせず、痛みのない範囲でゆっくりと行うことが大切です。
また、2〜3時間ごとに姿勢を変えることで、同じ関節に負担が集中するのを防げます。血行を促す部分浴や温かいタオルでの温熱ケアも、筋肉の緊張をやわらげる助けになります。
寝たきりや車いすで過ごす時間が長い場合は、関節周囲の筋や腱が短縮しやすいため、介護者による定期的な関節可動域訓練を取り入れるとよいでしょう。少しでも体を動かす習慣が、拘縮予防の基本となります。
良肢位の保持
良肢位とは、関節や筋肉に過度な負担をかけず、拘縮を防ぐための安定した姿勢を指します。寝ているときや座っているときに、クッションや枕を使って姿勢を整えることが効果的です。
仰向けの場合は膝の下にクッションを入れて軽く曲げ、足首の下にも支えを置くことで足先が下向きに固まるのを防げます。側臥位では、頭・体幹・足の位置を整え、枕の高さを調節して首が前後に傾かないようにします。座位では、股・膝・足関節の角度をおおよそ90度に保ち、足底が床にしっかりつくように整えることがポイントです。
良肢位を保つことで、拘縮の予防だけでなく、褥瘡の発生防止や痛みの軽減にもつながります。
早期離床と適度な運動
安静が必要な時期でも、できる範囲で早めに体を起こし、軽い運動を取り入れることが拘縮予防につながります。
早期離床には、意識の改善、褥瘡の予防、起立性低血圧や嚥下障害の防止など多くの効果があります。特に高齢者では、長期間の寝たきりが認知機能や筋力の低下を招くため、少しでも体を動かす機会を増やすことが大切です。
1日の中で4〜6時間ほど離床できると、筋肉量の維持や摂食嚥下機能の改善が期待されます。慢性期においても、週数回の継続的なリハビリが再発防止に役立ちます。
運動やストレッチを行う際は、正しい姿勢と呼吸を意識し、痛みを感じたらすぐに中止します。定期的に水分を補い、体調を確認しながら行うことが安全なリハビリの基本です。
さくらリバースについて

さくらリバースでは、患者様のご自宅やお住まいの場所にお伺いし、その方の身体の状態に合わせた最適な施術をご提供しております。
関節拘縮のリハビリ方法にも精通しており、患者様の日々の生活の質の向上をお手伝いしたいと考えています。病院に行くことが難しい方や、急な体調変化にも迅速に対応し、安心して治療を受けていただけるよう心がけております。どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
関節拘縮におけるリハビリ方法は、個々の状態を把握したうえで行うことが極めて大切です。本記事では、拘縮の基本的な知識から、リハビリでの適切な運動やポジショニング、それに加えてマッサージといった実践的な方法をご紹介し、関節拘縮に対する理解を深めるとともに、その回復へ向けたポイントと注意点を解説しました。
これからのリハビリにおいて、痛みを避けつつ、効果的な取り組みを進められるよう、この情報が役立つことを願っております。
