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高齢者の転倒を予防するには?繰り返す原因と対策について解説します

監修:市姫 久春
2024年08月27日
高齢者の転倒を予防するには?繰り返す原因と対策について解説します
高齢者にとって転倒は大きなリスクとなります。この記事では、転倒の危険性とその原因、さらには有効な予防対策について詳しく解説します。

身体機能の低下や注意力の欠如、さらには病気や薬の影響など、多岐にわたる要因が転倒を引き起こします。これらの要因を理解し、適切な対策を講じることで、高齢者の転倒リスクを大幅に減少させることができます。

高齢者の安全と健康を守るための情報を、ぜひご参考にしてください。
目 次

高齢者の転倒の危険性

高齢者が転倒すると、深刻なけがを負う可能性が高まります。特に骨がもろくなっているため、骨折しやすいのです。骨折は身体の機能低下を引き起こし、寝たきりになる危険性が高まるからです。

さらに、自信を失い、再度の転倒を恐れるようになります。その結果、外出を控え、活動量が減ってしまうことも多いのです。転倒を防ぐためには、適度な運動と安全な住環境の整備が必要です。

恐怖心による運動不足が加速する可能性

転倒による恐怖心は、高齢者の生活に大きな影響を与えます。特に一度転倒を経験すると、その怖さから外出を控える傾向が強まります。

この心理状態は運動不足を招き、筋力低下を引き起こすのです。筋力が衰えると、さらに転倒するリスクが上がります。また、家の中でも安全を感じられず、活動を減少させてしまいます。

骨折し寝たきりになる可能性が高い

高齢者は骨密度が低下しており、特に大腿骨近位部のような重要な部位での骨折は、日常生活活動の大幅な制限を引き起こす可能性があります。

骨折後、適切な治療とリハビリテーションが行われない場合、筋力の低下や関節の硬直が進み、結果として移動能力が失われ、寝たきり状態になることがあります。

さらに、骨折は痛みを伴い、痛みのために活動量が減少することも寝たきりのリスクを高めます。活動量の減少は筋肉量のさらなる減少を招き、骨密度の低下を加速させるため、再度の骨折リスクが高まるという悪循環に陥ることがあります。

高齢者に転倒が多くなる原因

高齢者の転倒は日常生活において大きな問題となりますが、その原因は多岐にわたります。高齢者が転倒しやすくなる主な理由と、それに対する理解を深めることで、予防策をどのように取り入れるべきかを考えてみましょう。

身体機能の低下

まず、高齢者は年齢と共に筋力が低下します。特に脚の筋力は著しく減少し、バランスを保つのが難しくなるのです。また、関節の柔軟性も失われやすく、筋肉自体も硬くなります。こうした変化が、歩行や立ち上がり動作を不安定にし、転倒しやすくなる一因となるのです。

次に、骨の脆弱化も大きな問題です。骨密度が低下することで骨折のリスクが高まり、転倒が直接的な大けがに繋がります。高齢者は特に骨粗しょう症になりやすいので、十分な注意が必要です。適度な運動や栄養管理が骨の健康を保つために重要なのです。

最後に、視力の低下も関連しています。視力が悪くなると、障害物を見逃しやすくなります。これが転倒のリスクを増大させます。眼科検診や適切な眼鏡の使用が、視力低下対策になります。

注意力の低下

年齢を重ねると、注意力も低下します。これにより、歩行時や階段の上り下りなど、日常の動作中に事故が起こりやすくなります。特に注意が散漫になりがちな状況では、一瞬の気の緩みが大きな事故を引き起こす原因となります。

さらに、疲労やストレスも影響します。高齢者は、疲労が蓄積しやすく、それが注意力の低下に繋がることが多いです。休養を十分に取り、心と体の負担を減らすことが大切です。この対策は、日常生活を安全に過ごすための基本となります。

加えて、環境の変化にも注意が必要です。新しい場所や急な動作変化は、一層注意力を要します。高齢者が安心して生活するためには、住環境を整え、注意力を助ける手助けが求められるのです。

病気や薬の影響

高齢者の転倒が多くなる原因の一つとして、病気や薬の影響が挙げられます。ここでは、それらが転倒リスクを高める具体的なメカニズムを解説します。

病気による影響

神経系の障害:
神経系の疾患(パーキンソン病、多発性硬化症など)は、バランスや歩行の調整を困難にし、転倒のリスクを高めます。

視力の低下:
加齢黄斑変性や緑内障、白内障など視力を低下させる眼疾患は、障害物の認識や適切な歩行に必要な視覚情報の欠如を引き起こし、転倒につながりやすくなります。

心血管系の問題:
高血圧や心不全などの心血管系の病気は、めまいや失神を引き起こすことがあり、それが直接的な転倒原因となることがあります。

筋力の低下と関節の問題:
関節炎やその他の筋骨格系の障害は、関節の痛みや可動域の制限を生じさせ、転倒しやすくなります。

薬の影響

鎮静剤や睡眠薬:
鎮静剤や睡眠薬は、意識の混濁や反応時間の遅延を引き起こし、バランスの悪化につながります。

降圧薬:
高血圧治療に用いられる降圧薬は、急激な血圧の低下を引き起こし、立ちくらみや失神を誘発することがあります。

利尿薬:
利尿薬は尿の生成を増加させ、夜間の頻尿を引き起こし、暗闇でのトイレの往復が多くなることで転倒を誘発します。

抗精神病薬:
抗精神病薬は動作の鈍化や筋肉のコントロールの低下を引き起こし、転倒のリスクを増加させる可能性があります。

これらの病気や薬の影響を理解し、適切な予防策や対応を行うことで、高齢者の転倒リスクを軽減することが可能です。医師や薬剤師との相談を通じて、症状や薬の副作用に注意し、必要に応じて治療方針の調整を行うことが重要です。

転倒事項が多い場所とその対策

高齢者が転倒する場所は意外と多く、それによって生じるリスクも大きいものです。ここからは、転倒事故が多発する場所と、それを防ぐための対策についてお話しします。

浴槽・脱衣所

浴槽や脱衣所は高齢者が転倒しやすい場所の一つです。これらの場所は、水や湿気で滑りやすくなることが多いため、転倒のリスクが高まります。

転倒の原因

滑りやすい床面:
水やせっけん水が床に残り、滑りやすい状態になります。

段差の存在:
浴槽の入り口や脱衣所と浴室の間に小さな段差があることが多く、特に目が不自由な高齢者にとっては見落としやすいです。

不安定な支持:
浴室内に適切な手すりが設置されていない場合、バランスを取ることが困難になります。

急な体勢変更:
浴槽からの出入り時に体勢を急激に変える必要があり、それによって転倒することがあります。

対策

滑り止めマットの設置:
浴槽の内部や脱衣所、浴室の床には滑り止めマットを設置します。これにより、床面の滑りを大幅に軽減できます。

手すりの設置:
浴槽の入口や脱衣所、浴室内にしっかりと固定された手すりを設置することで、高齢者が安定して移動できるようにします。

段差の解消または明示:
可能であれば段差を解消し、フラットな床面を確保するか、明るい色のテープで段差を明示して視認性を高めます。

床の常時清掃と乾燥:
水滴やせっけんの残りがないように、使用後は床をしっかりと拭き取り乾燥させます。

浴室用チェアの利用:
立ち座りが困難な高齢者のために、安定した浴室用の椅子やベンチを設置することで、安全に身体を洗うことができます。

適切な照明:
浴室や脱衣所には十分な明るさの照明を設置し、全体を明るく照らすことで視認性を向上させます。

玄関

玄関は高齢者が転倒しやすい場所の一つです。ここは家の出入り口として頻繁に使われるため、特に注意が必要なエリアです。

転倒の原因

段差の存在:
玄関にはしばしば段差があり、これが転倒の原因になることが多いです。

滑りやすい床材:
タイルや磁器質の床材は特に滑りやすく、雨天時などはさらにリスクが高まります。

照明の不足:
夜間や早朝など、照明が不十分な状態で玄関を利用すると転倒しやすくなります。

小物や靴の散乱:
靴や傘、マットなどが不適切に置かれていると、つまずきやすくなります。

対策

段差の解消または明示:
段差を完全に解消するか、明るい色の警告テープを使用して段差をはっきりと示し、視認性を向上させます。

滑り止めマットの使用:
滑りやすい床には滑り止めマットを敷くことで転倒リスクを減らすことができます。

手すりの設置:
玄関に手すりを設置することで、高齢者が安全に出入りできるよう支援します。特に段差がある場所には、手すりが役立ちます。

適切な照明の設置:
玄関口には十分な照明を設置し、夜間でも明るく照らすことが重要です。センサーライトの利用が効果的です。

靴や小物の整理:
靴は靴箱にしっかり収納し、玄関マットは定位置に保持して滑らないようにします。また、玄関を常に整理整頓して通路を確保します。

ベッド・布団

ベッドや布団からの転倒は、特に夜間や早朝に高齢者が最も転倒しやすい状況の一つです。睡眠中や起床時の不安定な動作が主な原因です。

転倒の原因

ベッドの高さ不適当:
ベッドが高すぎるまたは低すぎると、上り下りの際にバランスを崩しやすくなります。

足元の環境:
ベッドや布団の周囲に物が散乱していると、足を引っかけて転倒する可能性があります。

照明の不足:
暗がりでの移動は、特に視力が低下している高齢者にとってリスクが高いです。

体力・バランスの低下:
睡眠直後は体が完全に目覚めていない状態で、体力やバランスが不安定になりがちです。

対策

ベッドの選定と配置:
ベッドは高齢者が安全に使用できる高さに調整し、起床しやすいタイプのものを選ぶことが重要です。布団を使用する場合は、滑りにくいマットの上に敷くことが推奨されます。

ベッドサイドの手すり:
ベッドの両側または片側に手すりを設置して、起床時の支持を提供します。

足元の照明:
ベッドサイドに足元灯を設置し、夜間でも視認性を高めることが重要です。センサー付きの照明が特に有効です。

床の整理整頓:
ベッド周りは常に清潔で物がない状態を保ち、通路を確保します。カーペットや敷物は滑りにくい材質のものを選び、しっかりと固定します。

床からの高さを考慮したベッド選び:
脚の長さを調節できるベッドや、床からの高さが低めのベッドを選ぶことで、上り下りの際の負担を軽減します。

階段

階段は家庭内で高齢者が転倒するリスクが非常に高い場所です。階段の転倒は大怪我につながることが多いため、特に注意が必要です。

転倒の原因

手すりの不在または不適切な手すり:
手すりがない、または高さ・太さが適切でないと、支持が得られずに転倒しやすくなります。

照明の不足:
階段が暗いと、特に視力が低下している高齢者にとっては、足元が見えにくくなります。

階段の状態:
磨耗したり、壊れたりしたステップや、滑りやすい材質の階段は転倒のリスクを高めます。

視覚的な障害:
階段の段差がはっきりしない、またはパターンが目を惑わせる場合、足元の見分けがつきにくくなります。

対策

適切な手すりの設置:
両側にしっかりと固定された手すりを設置し、使いやすい高さと太さであることを確認します。手すりは滑らかで握りやすい材質を選びます。

十分な照明:
階段の各段がはっきりと見えるように、適切な照明を設置します。特に夜間にはセンサーライトが有効です。

階段の修繕とメンテナンス:
階段のステップが均一であり、壊れたり欠けたりしていないことを確認し、必要に応じて修理します。また、滑り止めテープやカーペットを施して滑りを防ぎます。

視覚的な工夫:
階段の段差をはっきりと示すために、色の対照的な非滑りテープを各段のエッジに貼ります。これにより、段差がより明確に識別できるようになります。

階段の使用を避ける設計:
可能であれば、家のリモデル時に階段の使用を避けるための設計を検討し、リビングなど日常生活の主要な部分を一階に配置することを考えるのも一つの方法です。

転倒を防ぐためにできる生活習慣

筋力・バランス訓練

転倒予防には筋力とバランス能力の維持・向上が不可欠です。厚生労働省では週2~3日の筋力トレーニングを推奨しており、下肢筋力の強化により転倒リスクを大幅に軽減できることが明らかになっています。

椅子からの立ち上がり運動やかかと上げ、片足立ちなどの簡単な運動でも継続することで効果が期待できます。特に太ももの筋肉(大腿四頭筋)とふくらはぎの筋肉強化は、歩行時の安定性向上に直結します。運動は無理のない範囲で始め、徐々に回数や時間を増やしていくことが大切です。

日常でできる簡単な運動

転倒予防に効果的な運動は、特別な器具がなくても日常生活の中で取り入れることができます。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」では、掃除機がけやモップがけ、階段の昇降、やや速めの歩行など、家事や生活動作も立派な身体活動として推奨されています。

椅子からの立ち上がり動作を繰り返すスクワットや、壁を使った腕立て伏せ、タオルを使った肩回し運動なども効果的です。これらの運動は1日40分以上(約6,000歩相当)を目安に、週3日以上継続することで転倒予防効果が期待できます。運動前には体調チェックを行い、無理のない強度から始めることが大切です。

太極拳・ウォーキング

太極拳は転倒予防に特に効果的な運動として注目されており、研究によると転倒率を37~50%軽減する効果があることが報告されています。ゆっくりとした動作で全身のバランスを整え、筋力と柔軟性を同時に向上させることができます。

ウォーキングは最も手軽で安全な有酸素運動です。1日20~30分程度の歩行を習慣にすることで、下肢筋力の維持と心肺機能の向上が期待できます。歩行時は正しい姿勢を意識し、安全な場所や時間帯を選んで行いましょう。どちらの運動も継続することが何より重要です。

転倒予防のための生活用品

転倒予防には適切な生活用品の選択と使用が重要な要素となります。厚生労働省では、歩行補助具や靴などの安全性基準を定め、高齢者の転倒リスク軽減に向けた指針を示しています。身体機能に合わせた適切な用具を選択することで、日常生活における安全性と自立性の向上が期待できます。

歩行補助具

歩行補助具は身体機能に応じて適切に選択することで、転倒リスクを大幅に軽減できます。厚生労働省の福祉用具選定基準では、利用者の心身状況と用具の特性が適合した選定が重要とされています。

一本杖は体重の約15%を支え、四点杖はより安定した支持が可能です。歩行器はさらに安定性が高く、特に固定式歩行器は介護保険の対象となっています。選択時は専門職への相談と定期的な使用状況の確認が必要です。適切な歩行補助具により、安全で自立した歩行が実現できます。

転倒予防において靴選びは極めて重要です。厚生労働省では転倒防止に有効な安全靴の基準を定めており、滑り止め機能と適切なフィット感が転倒リスク軽減の鍵とされています。

靴底は耐滑性を示すJISマーク「F1」「F2」表示やピクト表示があるものを選び、つま先に1~1.5cm余裕があるサイズが適切です。かかとは4cm以内の低めで、つま先が適度に反り上がった形状が理想的です。スリッパやサンダルは脱げやすく転倒リスクが高いため避けましょう。定期的な靴底の点検と交換も重要です。

杖・歩行器

杖と歩行器は転倒予防の重要な歩行支援具です。厚生労働省の選定基準では、利用者の身体状況に適合した選択が転倒リスク軽減に不可欠とされています。

杖の長さは手首の高さに合わせ、高さ調節機能付きがおすすめです。一本杖、四点杖、カナディアン・クラッチなど種類により支持力が異なります。歩行器は杖より安定性が高く、固定式と交互式があります。選択時は福祉用具専門相談員等への相談と、医師やリハビリ専門職の意見確認が重要です。

転倒リスクのセルフチェック

転倒リスクを早期に把握し適切な予防対策を講じるため、チェック項目で現在の状況を確認しましょう。以下の項目に当てはまるものにチェックを入れてください。

【基本的な身体機能】
□ この1年間に転倒したことがある
□ 横断歩道を青信号の間に渡りきれない
□ 1kmを続けて歩くことができない
□ 片足で立ったまま靴下をはけない
□ 濡れたタオルをきつく絞れない

【健康状態・服薬】
□ この1年間に入院したことがある
□ 立ちくらみがすることがある
□ 脳卒中や糖尿病の既往歴がある
□ 睡眠薬・降圧剤・精神安定剤を服用中

【生活環境・感覚機能】
□ サンダルやスリッパをよく使用する
□ 家の中でつまずいたり滑ったりする
□ 目や耳があまりよく見えない・聞こえない
□ 転倒への不安で外出を控えることがある

【チェック結果の評価】
・0~2項目:転倒リスクは低めですが、定期的な確認を継続しましょう
・3~5項目:転倒リスクがやや高い状態です。運動や環境改善を検討してください
・6項目以上:転倒リスクが高い状態です。医療機関や専門職への相談をおすすめします

該当項目が多い場合も、適切な対策により転倒リスクは大幅に軽減できます。チェック結果を参考に、無理のない範囲で予防対策に取り組んでいきましょう。

さくらリバースについて

高齢者の方々の転倒予防には、日常生活の注意点だけでなく、体力維持やバランス能力向上も重要です。さくらリバースでは、ご自宅でのリハビリを通じて、高齢者の皆様が日々の生活を安全に送れるようサポートさせて戴いております。

専門の鍼灸師やマッサージ師が、お一人おひとりのご体調やご状態に合わせた施術を行い、筋力強化やバランス調整をサポートさせていただきます。転倒予防はもちろん、健康維持のためにも、ぜひ当院の訪問サービスをご利用ください。

まとめ

高齢者の転倒はただの事故ではなく、その影響は生活の質全体に及びます。この記事を通じて、転倒の原因と予防策を理解し、実生活に取り入れることが重要です。

適切な環境整備と日々の身体活動が、負の連鎖を断ち切り、より健康で自立した生活を支える鍵となります。対策に取り組むことで、安全と健康を守るための最善の方法を見つけ出して戴ければと思います。

監修:市姫 久春
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師 株式会社さくらリバース 訪問鍼灸リハビリマッサージ事業部
   

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